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グローバル競争時代にふさわしい航空利用者負担水準を目指して(2000年10月)
1.世界の航空界におけるAmericanizationの動き(表 1-1/ 1-2参照) |
1989年11月のベルリンの壁崩壊、1991年12月のソ連邦崩壊を契機として、世界経済の「Americanization」(いわゆる「グローバル化」)が行われる中で、世界の航空界も米国のメガキャリアを中核とするグローバルアライアンス化(=世界航空市場の囲い込み戦略)が推し進められている。一方、国内線、国際線合わせた世界航空旅客市場の約4割を占める米国の巨大国内線市場においては、1980年代後半以降、アメリカン航空、ユナイテッド航空等の上位5社による70%強の市場占有状態が続いていた。2000年に入り、ユナイテッド航空によるUSエア買収交渉の表面化を契機に、アメリカン航空がノースウエスト航空買収交渉を始める等、資本集中による市場寡占化への激しい動きが顕在化しつつある。このような動きを背景に、アメリカ国内で巨大化したメガキャリアは、国費負担の人・物の航空輸送に米国航空会社利用を法的に義務付ける「Fly American」政策に見る如く、自国の強い産業分野における政府・航空業界一体となった国家戦略の下で、日本は無論のこと、世界に対する攻勢を今後ますます強めるものと思われる。 自由主義経済圏では、日本の航空市場規模は米国に次いで大きく、しかも、国内線、国際線共に、航空利用旅客・貨物の約8割が首都圏と関西圏の2地点に集中している。従って、米国メガキャリアが実質的に日本市場全てをカヴァーしようとすれば、この2地点さえ押さえればよい。一方、保有ジェット機数が米国航空会社約5300機の14分の1しかない日本の航空会社が、日本の国土の26倍の広さを有し、米国メガキャリアーの拠点空港が全米に幾つも分散している米国市場全体をカヴァーすることは、残念ながら、極めて困難と言わざるを得ない。 後述するように、日本の世界一高い着陸料等の利用者負担は日本の航空会社の国際競争力と密接な関係にあり、本問題が世界の航空界の動きとの関連において論議されることを期待したい。 |
| 2.世界一高い利用者負担の国際競争力・航空機更新計画への影響 |
日本の航空会社が、このグローバル競争時代を生き抜き、日本の国益増進を図る第一義的責任を負っていることは当然のことである。しかしながら、世界経済のAmericanizationの流れの中で、我が国航空界における規制緩和政策が、規制時代の残滓である世界的に突出して高い利用者負担(=着陸料、航空機燃料税、航行援助施設利用料等)水準を見直さずに推し進められてきたため、2000年7月12日付けの産経新聞主張でも述べられているように、日本の航空会社は国際競争上著しく不利な立場に置かれて今日に至っている。( 表2参照)
<2000年7月12日付け産経新聞主張>
「英国の空港で圧倒的に離着陸が多いのはBA(英国航空)である。(外国の何倍も高い着陸料の)日本の空港は日航、全日空、日本エアシステムが多いのは当然だが、日本三社は、離着陸が多いほどコストに占める空港使用料の比率が各国と比べて幾何級数的に膨らむ。それだけ企業としての国際競争力が落ちていくのはいうまでもない」
前掲産経新聞主張のように、日本の「世界一」高い着陸料が日本と外国社の国際競争力に及ぼす影響を見るために、個別企業間でその影響度合いを、例えば、1998年度の収支実績に基づいて比較検討してみると、本邦企業による国際線旅客輸送の約8割を担う日本航空の場合、営業費用に占める日本の国内線・国際線着陸料の構成比は4.4%で、外国社(ユナイテッド航空)の0.3%よりも約15倍も大きい。このため、日本における国内線と国際線の着陸料が国際水準化(即ち現行の3分の1に軽減)されれば、他のコストと収入は一定とした場合、ユナイテッド航空の営業利益率は1.02倍改善されるのに対し、日本航空は2.3倍改善されるという効果がある。国際線着陸料だけ軽減される場合でも、日本航空は1.6倍も改善する。国内線、国際線の両着陸料が国際水準化される場合、日本航空はこの改善割合におけるユナイテッド航空との差を原資に(約270億円)、ユナイテッド航空以上に価格競争力・商品競争力の強化や航空機の更新・導入を行なうことが出来、企業総体としての国際競争力を強化することが可能となる。( 表3参照)1992年以来の低コスト化への改善努力の結果、日本の航空会社のコスト競争力は、空港使用料等の利用者負担を除けば、円高の中でも今や世界平均にまで回復してきた。( 表4参照)しかしながら、世界の航空会社が1990年代の航空不況から脱している中で、日本の航空会社は、競争激化による運賃収入の激減と高い利用者負担のために、未だ実質的には経常赤字状態のただ中にあり、総売上額2兆4千億円のANA・JAS・JAL3社が抱えている有利子負債は実に約2兆円にも達している。最新鋭航空機は、旧型機に比べ、機内の快適性と運航コスト効率の面で優れているのみならず、低騒音で二酸化炭素排出量が少なく、且つ又陸上飛行ルート短縮化による空港周辺騒音の軽減化で羽田空港容量拡大にも大きく貢献すると思われるFMS(Flight Management System)を装備している。日本の航空会社は、定期的な新型機導入による航空機の更新が、機内快適性・コスト面での国際競争力強化と環境問題・空港容量問題解決に貢献すると十分認識しているにも拘わらず、巨額な有利子負債圧縮による財務体質の改善が急務であるため、航空機の更新を遅らさざるを得ない状況に追い込まれている。 |
| 3.世界一高い利用者負担の国際競争力・航空機更新計画への影響 |
1999年度に、1986年の規制緩和政策導入以来初めて本格的な利用者負担の軽減措置が実施された。羽田・成田・関空・伊丹空港という、いわゆる第1種空港を除く地方空港の着陸料等が引き下げられ、その軽減規模230億円は日本の超高利用者負担の国際水準化からは十分とは言えないものの、「グローバル競争時代にふさわしい航空利用者負担水準」への第一歩と言えよう。「(本邦)航空産業の高コスト構造を是正する」(1999年度航空局関係概算要求説明書)ことを着陸料引き下げ目的の一つとして掲げるこの軽減措置は、今や航空会社の固定費と化している利用者負担部分の費用を削減し、日本の航空会社の国際コスト競争力回復に一定程度貢献した。更に、この230億円の国や地方自治体の歳入減は、運賃の低下や航空ネットワークの維持・拡充等の利用者利便向上によって航空需要が拡大した結果、「観光産業や航空への依存度の高い北海道・沖縄の経済活性化など、5000億円規模の経済波及効果をもたらした」(2000年7月定期航空協会パンフレット)。国の公共事業費の有効的・効率的活用が論議されている今日、かかる観点からも、航空事業は国の公共事業費の投入先として適しているものと言えよう。 |
4.いまだ世界に突出して高い日本の利用者負担( 表2参照) |
日本の航空利用者負担の現状は、99年度の軽減措置をもってしても、「国際線着陸料の水準は未だ世界の3倍、航空機燃料税は米国の20倍となっているなど、依然として我が国航空会社の国際競争力にも影響を与えている」(前掲定期航空協会パンフレット)。 |
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