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羽田再拡張後の羽田・成田空港棲み分け論について(2001年5月)

はじめに

 首都圏には我が国国内総生産の約4割が集中し、羽田空港は国内旅客の約6割、国内貨物の約7割、成田空港は国際旅客の約6割、国際貨物の約7割に利用されている。この両空港の容量は、羽田は慢性的に、成田は1991年以降不足の状態となり、地方を含めた我が国国民生活の向上と経済発展のボトルネックとなっているのみならず、近隣アジア諸国の巨大空港の出現により、国際社会における日本の地位の低下が懸念され、その容量不足の早期・抜本的な解消は今や国家的な緊急課題となっている。
 1960年代の成田空港建設決定当初より、羽田空港が成田空港より東京都心に近く便利なことは万人が認めていたところであるが、最近、この便利さを前面に出した「先ず羽田国際化ありき」論が盛んである。本来、1970年代頃までに羽田空港が再拡張されて、首都圏の国内・国際航空需要を満たす空港容量を持ち得たならば、羽田・成田棲み分けと今日の「羽田再国際化」論ということ自体起こり得なかったわけである。
 国土交通省は、この程、これまで二度にわたり断念された羽田再拡張案に対し、東京湾の港湾機能や多摩川の河川機能との調整、航空騒音等の困難な問題が待ち受けているにもかかわらず、21世紀を見通した国家・国民的見地から、その実現に向け、具体的な検討に着手した。羽田再拡張の実現は、ANA、JAS、JAL等の本邦航空会社で構成する定期航空協会や東京都も国に強く要望している(資料―(1)「羽田空港の再拡張案」)。羽田再拡張は、冒頭に述べた首都圏空港容量不足の解消という緊急な国家的課題を、航空利用者が利用しやすく、しかも早期に、安く、抜本的に解決する唯一の方策である。我が国の政治も、まさに国家・国民的見地から、21世紀の日本の発展に不可欠なこの国家プロジェクト実現に向け、全面的、且つ早急に取り組まれることを切に期待したい。
 羽田再拡張が現実的な問題となるに従い、今後は羽田再拡張を前提にした羽田・成田棲み分け見直しの必要性についての国民的検討が必要になる。羽田空港は「国民の空港」である(黒野元国土交通省国土交通省事務次官、首都圏新空港研究会NEWS LETTER NO29)。その検討は「先ず羽田の国際化ありき」ではなく、東京都のみならず、航空騒音に関わる飛行経路面で羽田空港機能を全面的に支えている千葉県や羽田国内路線ネットワーク拡充を切望している地方を含めた全国民の生活、国際社会におけるわが国の経済的地位、そして、航空利用者利便の向上を図る、との観点からなされなければならない。
 かつて東京都自らが「国内線専用空港」と規定した羽田空港を再国際化するには、国内線需要を満たした上で、国際線需要を成田と棲み分けて対応するに必要な空港容量を作り出すことが必要不可欠である。後述するように、現在着工中の成田の暫定滑走路が本格化され、羽田が再拡張されても、21世紀半ば頃から羽田・成田だけで首都圏の国内・国際全ての需要に対応することは難しいと見通されている。国家財政逼迫の中で効率的な公共事業費運営がますます必要となることを勘案すれば、羽田再拡張によって拡充された国内線ネットワークをフル活用することにより、首都圏国際線需要の一部(将来の実用化が期待されている騒音量の大きな超音速機利用国際線需要も含む)を海上空港である関空や中部新空港で対応するという考えも、羽田・成田棲み分け見直しの中での検討に値すると思われる。何故なら、この考えは、公共事業費の効率的運営上好ましいのみならず、再拡張後の羽田で確保されるべき国内線用空港容量、首都圏国際線需要の成田・羽田・関空・中部分担の在り方、再拡張後の羽田に必要とされる地上施設規模、等々に影響を及ぼすと思われるからである。
 羽田再拡張を前提とした羽田・成田空港の棲み分けに関する検討作業は、21世紀の我が日本の国民生活と国際社会における地位に重大な影響を及ぼす。以上述べてきた諸点と空港使用に関する国際的取扱いを踏まえて、東京都民、千葉県民、その他の地方自治体住民を含む全国民的な議論が行われ、国民的な合意が形成されなければならない。本稿では、かかる議論の際に勘案すべきと思われる以下の諸点について説明し、最後に、羽田・成田の新しい棲み分けに関する一つの絵姿を提示したい。 


(1) 航空騒音問題を踏まえた飛行経路との関係で、成田空港は無論のこと、羽田空港自体も千葉県民の理解と協力なしには現在の空港機能の維持すらも困難であること、
(2) 羽田空港の慢性的容量不足のため、2000年2月の改正航空法施行により国内航空の自由化が実現したにもかかわらず、国内線市場での航空会社間競争は国際線に比べて遅れており、国内線利用者利便の向上が十分行われていないこと、
(3) 羽田空港の慢性的容量不足のため、羽田国内路線の拡充に対する地方の方々の要望は未だ十分に応えられておらず、地方を含む日本全体の均衡ある経済発展が阻害されていること、
(4) 成田空港は2本目の滑走路が供用開始されても2015年頃には容量限界に達し、再拡張後の羽田空港も2035年頃には国内旅客便だけで容量限界に達すると見通されており、首都圏の国内・国際の航空需要に対応するには羽田・成田の共生が不可欠であること、併せて、首都圏国際線需要の一部を関空・中部新空港で対応することも検討する価値があること、
(5) 空港使用に関する国際的取扱い上、羽田に国際定期便が一旦就航すると、国内線用容量不足を理由として外国社の国際定期便を部分的に減便・撤退させることは、極めて困難であること、
(6) 1地域複数空港の棲み分け基準は国際的合理性を持つものでなくてはならず、近距離路線を需要中心地に近い空港に使用させる参考例が日本と航空最先進国である米国にあること。



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