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日本の航空界の現況と国の航空・財政政策への期待(2003年4月)

空港整備への過少な国費投入状況の是正を!

日本航空システム執行役員 総合経営企画室副室長 金成秀幸

はじめに

  世界のグローバルアライアンスの中核たる米国のメガキャリアは、1999年以降の景気減速下での大幅賃上げに2001年9月11日の米国での自爆型同時ハイジャック・テロ(9.11テロ)の影響も加わって、人件費が収入の半分を占めるに至り、ユナイテッド航空が米国連邦破産法11章の適用を受けるなど、倒産の危機を含む深刻な経営難に陥っている。この4月1日、カナダ国内線市場の7割を独占しているエアカナダ航空も、会社更生法手続き(米国連邦破産法11章に相当)を申請した。

 長引く不況下にある日本においては、ここ10年、競争促進政策の下で単位当たり運賃水準が国内線で3割、国際線では4割弱も低下し、今や米欧以下の運賃水準となっているなど、運賃、ネットワークの両面で航空の利便性は格段に向上した。この結果、航空旅客数は国内・国際とも1.5倍も増加し、日本の航空旅客市場は米国に次ぐ世界第2位の規模(2000年度・1億5000万人)にまで成長した。国際航空貨物も日本の貿易総額の3割、IT関連品目に至っては輸出の8割、輸入の9割を占めている。日本の航空会社が運送した国内・国際旅客数は1億1200万人、国際航空貨物は物量ベースで全体の4割で、航空は今や日本国民の生活に必要不可欠の交通インフラとなっているのみならず、日本の航空会社はかかる交通インフラを担う重要な社会的役割を果たしている。そして、この航空を支える空港、とりわけ大都市拠点空港は日本の必要欠くべからざる基本的な社会資本、成田、関空に至っては「国際社会資本」としての重要な役割を果たしている。

 一方、日本の航空会社はこの間、米欧の航空会社を上回る深度でコスト削減を行い、単位当たりコストは3割、人件費に至っては5割も削減され、円高傾向の中でも米欧航空会社並みの水準まで低下している。しかしながら、1991年度から2001年度の間の航空運輸産業(JAL、JAS、ANA3社計)の年平均経常利益率は0.2%で、全産業平均の2.8%、航空を含む全運輸産業の3.3%を大きく下回り、鉄道の5.5%に遠く及ばない状況である(資料5‐(1)資料5‐(2)参照)。2002年度業績見通しで、JAL/JAS、ANAはついに営業損益ベースでも赤字に転落した。

 日本の重要な社会資本である空港の整備費用の大半が、航空会社が国や空港管理者に直接支払っている着陸料、航空機燃料税などの利用者負担で賄われている現状(2003年度の国の純粋一般財源投入はわずか672億円で、空港整備特別会計歳入の15%、国の公共事業費のわずか0.83%)は問題であり、各公共事業の社会における今日的重要度・貢献度に応じた公共事業費配分の組み替えにより、国の純粋一般財源を、とりわけ大都市拠点空港建設・整備に重点的に配分すべき、との考えは今や国民的総意となっている。

 長引く日本経済不況で需給関係が緩和し、運賃の自由化によりコストと運賃との相関関係が一層希薄になっている現在、空港整備事業への国費の過少投入で国際的に高い水準にある日本の利用者負担は、日本の航空会社の収支を大きく圧迫している。例えば、日本と米国にしか存しない航空機燃料税が米国並みになるだけで、2001年度の日本の航空3社の経常赤字393億円は465億円の経常黒字に転じ、その利益率はマイナス1.6%からプラス1.9%に改善され、やっと全産業平均2.9%に近づく。

 競争社会にあっては、リストラは民間企業にとって永遠の課題である。今後とも日本の航空会社は一層の自助努力で、交通インフラ利用コストの低減を通じて日本産業の高コスト構造是正に貢献し、かつ国際コスト競争力の強化によって、国際社会における日本の経済・政治・文化活動を支える低廉で広範な国際線ネットワークの維持・拡充に努めていかなければならない、と認識している。しかしながら、航空会社が国や空港管理者に直接支払う利用者負担は航空会社にとっては管理不可能費であり、しかも、空港整備への国費の過少投入で利用者負担の水準が国際的に高い状態で推移してきたため、日本の空港を母港とする日本の航空会社が外国社との国際コスト競争上不利な立場に立たされていることも事実である。

 かかる日本の航空界の現況から、2004年度の国家予算編成において;

政府における公共事業関係費(国費)配分調整が、
「公共投資の実効ある重点化、効率化」を「トップダウン」で行うと宣言している閣議決定「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」に基づいて、国家的・国民的見地から行われ、
国の純粋一般財源が、大都市拠点空港が果たしている社会的役割に相応した規模で空港整備事業に投入されることにより、
これまでの空港整備事業への過小な国費投入状況が是正され、
少なくとも現在の着陸料などの軽減措置継続などにより、利用者負担が今まで以上に増大しないこと、

を期待して、以上述べてきた論点を以下詳述していきたい。
 なお、最後に「国際社会資本」である成田空港の民営化と羽田再拡張整備財源、成田着陸料との関係についても触れてみたい。



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