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日本の航空界の現況と国の航空・財政政策への期待(2003年4月)
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日本の航空界の現況と国の航空・財政政策への期待(2003年4月)
第二章 日本の航空界の現況
(1)
競争促進政策による利用者利便の著しい向上と日本の航空会社の役割増大
日本の航空利便性は1986年以降の競争促進政策の下で、航空運賃、ネットワークの両面で著しく向上した。有償旅客キロ当たりの2001年度航空運賃水準は、1990年を100とすると国内線で3割、国際線では4割弱も安くなっている。この結果、2002年7月発表の国土交通省調査によれば、2002年1月末時点で国内線の普通運賃は米国の35〜40%、割引運賃についても米国の80〜90%にまで廉価になっている。普通運賃は本年7月の値上げ後に、2002年9月時点の水準に戻るが、往復、回数券などの割引運賃の部分的な値上げ後も日本の国内線運賃水準は欧米に比べ未だ低い状態にあると言えよう。(
資料2「国内航空運賃の国際比較(2001年)」
参照)
一方、ネットワーク面でも、2002年の国内線路線・便数は、213路線で1990年対比1.2倍、826便(往復ベース)で1.4倍、2002年の国際線路線・便数は、215路線で1990年対比1.9倍、1978便(週間片道ベース)で1.5倍と飛躍的に拡充した。
運賃、ネットワーク両面での航空利便性の著しい向上に伴い、日本における2001年度の航空利用旅客は国内線9460万人で90年の1.5倍、国際線4690万人で1.5倍(9.11テロの影響のない2000年度は5260万人で1.7倍)と急増し、今や日本の航空市場規模は米国についで世界第2位の地位を占めている。その内、日本の航空会社は2000年度で国際線の日本人旅客の44%、外国人の25%、全国際線旅客5260万人の38.1%を運送し、国内線旅客を含めれば1億1200万人のお客さまを運送した。
近年、低迷する日本経済の再活性化と日本の地域・町・国造りという観点から、「観光」の重要性が再認識されている。とりわけ、2001年の日本の外国人旅行者受入数は480万人で、国際ランキングでブラジルに次いで35位、アジア12カ国中、韓国に次いで9位という悲惨な状況にある。このため、2002年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する方針2002」で、「平成14年度から外国人旅行者の訪日を促進するグローバル観光戦略を構築」することが決まり、同年12月に同戦略が発表された。当戦略は訪日外国人旅行者を2007年に年間800万人台まで増やすことを目標としているが、小泉首相は2003年1月の国会での施政方針演説で、2010年に1000万人まで増やすと述べられており、かかる国家戦略目標との関係においても、日本の航空会社の担うべき役割はますます大きくなってきている。
航空貨物について見ても、2001年度の国内貨物は84万トンで90年の1.2倍(2000年度は93万トンで1.3倍)、国際貨物は250万トンで1.6倍(2000年度は290万トンで1.9倍)と急増している。とりわけ、貿易総額に占める国際航空貨物の比率は30年前は輸出入ともわずか1割以下であったものが、2001年には3割を占め、輸入については燃料・原材料(約8兆円)を除けば約4割にも達している。コンピューターや通信機器、半導体などのIT関連品目に至っては、輸出の8割、輸入の9割となっている。これらの日本出入航空貨物総量(2000年度)の内、日本の航空会社は出国貨物で37.5%、入国貨物で40.2%、全体で38.9%を運送しており、今や日本の経済活動にとっても日本の航空会社は重要な役割を果たしていると言えよう。
(2)
日本の航空会社の厳しい経営状況
1991年の湾岸戦争当時、収入の7割を国際線旅客が占める日本航空は、この湾岸戦争によって国際線収入が激減し、92年に無配に転落。その後、国内他社に先行してリストラを実施してきた。
日本の航空運賃水準は先に見たように、1991年以降の長引く経済不況と航空会社間の激しい競争の中で急激に低下した。日本航空の収入は1990年度を100とすると、2001年度の有効座席キロ(Available Seat Kilometer=ASK)当たりの国内線旅客収入は71.6、国際線旅客収入に至っては61.1、全営業収入では64.5(国内他社は71.4)まで激減した。このような国内線で3割、国際線で4割、全体で3割5分という大幅な収入の減少に対し、日本航空は人件費を含む様々なリストラにより、2001年度の単位当たり営業費用は90年度の67.0で3割3分減(国内他社は2割9分減)、人件費に至っては51.4で5割減まで削減した。(
資料3「JAL、国内他社のASK当たり営業収入・費用の推移」
参照)
各航空会社における単位当たり費用の削減状況を国際比較するために有効トンキロ(Available Ton Kilometer=ATK)を用いると、日本航空はシンガポール航空とほぼ同じ深度で費用削減を行ってきており、ユナイテッド航空、ノースウェスト航空、英国航空よりも費用削減率が大きい。(
資料4「自国通貨建てATK当たり費用削減推移」
参照)
この結果、日本航空のASK当たり営業費用は、90年の14.2円から2001年9.5円にまで削減された。航空会社間の単位当たり費用の国際比較を正確に行うためには、各社の平均運航距離を加味する必要があるが、国際競争力上のコスト削減目安として、ATKを用いてドル建てで各航空会社の費用を見ると、2001年度の日本航空の単位当たり営業費用48.8セントは、ほぼ米欧並み(UA52.3,AA48.8,LH50.1,BA47.7)にまで低下している。
日本航空は98年にようやく復配を達成したが、2001年度に9.11テロの影響で95年以来初めて営業損益ベースでも163億円の赤字に転落し、無配となった。2002年10月、JAL、JAS両社は会社統合により両社の国内・国際事業基盤構造の抜本的改革のみならず、2005年度までに600億円の費用削減など、560億円の収支改善を可能とするリストラに着手した。2003年2月、97年以降無配となった国内他社も、2002年度には営業損益ベースで105億円の赤字に転じるとの業績見通し修正を発表すると共に、2005年度までに費用を300億円削減する経営計画を発表した。今や日本の航空業界は長引く日本の経済不況と9.11テロ後の航空保安費用の増加に加え、イラク戦争勃発による航空需要減と航空燃料の高騰も加わり、全社が営業損益ベースまで赤字となる厳しい経営状況に陥っている。そして、これに追い討ちをかけるように、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行も加わって国際線需要は大幅に落ち込み、航空会社経営は一層厳しくなっている。
競争社会にあっては、リストラは企業の永遠の課題である。イラク戦争により日本のみならず世界の経済がますます不透明性を増す今日(しかも、今やこれにSARSの流行も加わった)、「世界のトップエアライングループ」を目指すJALグループは、統合効果を着実・早期に実現することに加え、アジアの航空会社の動向をも見据え、更なるリストラを行わなければならないと認識している。
〈参考〉JAL/JAS、ANA計の2002年度業績見通し(試算、単位:億円):
営業収入…25070、営業利益…▲210、経常利益…▲320
(3)
利用者負担と航空会社経営との関係
わが国の競争促進政策は2−(1)で述べたように、運賃水準の著しい低下やネットワークの著しい拡充という航空利用者に大きなメリットをもたらした。同時に、航空会社は2−(2)で見たように、リストラを通じコスト効率による国際コスト競争力を強化すると共に、航空需要の増加により事業規模を拡大することも出来た。しかしながら、長引く経済低迷下での航空会社間の厳しい競争により、運賃水準はコスト効率化のスピード以上に低下した。日本政策投資銀行の資料に基づき、航空運輸産業(JAL、JAS、ANAの3社計)の収益性を経常利益率ベースで他の産業と比較してみると、1991年度から2001年度までの間、一貫して他産業よりも著しく低い状態で推移している。この間の航空運輸産業の平均経常利益率はわずか0.2%で、全産業2.8%、航空を含む全運輸業3.3%(内鉄道は5.5%)、電気5.3%、ガス5.0%など、他産業と比較にならないほどの低さである。(<
資料5-(1)「わが国の産業別経常利益率推移」
、
資料5-(2)「わが国の産業別平均経常利益率比較」
参照)
航空会社が国や空港管理者に直接支払っている着陸料、航空機燃料税などの利用者負担は、航空会社経営上にとっては一種の固定費で、99年度以降の着陸料の軽減措置(2003年度は230億円相当)などが実施されてきてはいるものの、その水準は未だに国際的に高い状況にある。(
資料6「航空会社の利用者負担国際比較」
参照)
2000年度の国内線旅客運賃収入に占める利用者負担の比率は21%、東京=札幌路線の平均運賃に占める比率は23%で、この路線とほぼ同じ運航距離のワシントンDC=アトランタ路線の13%より10ポイントも高い。日本の利用者負担がこのように国際的に高い結果、国内線と国際線を含めた日本の航空会社の2001年度全営業費用に占める利用者負担(着陸料、航行援助施設利用料、航空機燃料税)の比率は12%で、世界平均の2倍、米国の5倍となっている。(
資料7「国内線運賃に占める利用者負担比率」
、
資料8「営業費用に占める利用者負担比率の国際比較」
参照)
日本の航空輸送産業の収益性が鉄道並みに高い水準であれば、運賃の自由化によってコストと価格との相関関係が希薄になっている中でも、世界的に高い水準の利用者負担も収支的に耐えられるであろう。しかしながら、先に見たように、
日本の長引く経済低迷下での競争促進により、
国内線の運賃水準が米欧並み以下という高度の利用者利便が実現されている状況下で、
単位コストも、ここ十数年間、米欧の航空会社を上回るスピードで削減してほぼ米欧並みになり、
その結果もあり、今や収入に占める人件費の比率が米国メガキャリアの半分になっているにもかかわらず、
経常利益率が極めて低い限界的経営を余儀なくされ、2002年度には全社が営業損益ベース見通しでも赤字に陥っている日本の航空輸送産業にとっては、
国費の過少投入によってもたらされている高水準の利用者負担は過大な負担となっている。
後述するように、2003年度に空港整備事業に投入される国の純粋一般財源は、国の公共事業費8兆971億円のわずか0.83%、金額にして672億円に過ぎない。
米国では1993年、「航空産業競争力強化委員会」の勧告に基づいて航空燃料税が2年間免除された。今回の航空会社経営危機に際しても、米国議会では航空会社に対する政府支援策の1つとして、同じ措置が検討されている。
今、仮に2001年度の日本においても、米国の18倍も高い航空機燃料税が、免除ではなく米国の水準まで減免されたとすれば、2001年度のJAL、JAS、ANA3社計の費用は858億円削減され、営業黒字124億円は982億円に、経常赤字393億円は経常黒字465億円に、経常利益率マイナス1.6%はプラス1.9%に改善され、やっと全産業平均レベル2.9%に近づくことになるが、それでも鉄道の経常利益率6.6%の3分の1にもならない状態である。
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