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日本の航空界の現況と国の航空・財政政策への期待(2003年4月)

第三章 最近の国内論議から

(1) 空港整備事業への過少な国費投入=利用者負担への過大な依存

 交通政策審議会航空分科会は2002年12月の答申で、「空港整備財源は、これまで利用者負担中心に賄われてきたが、空港、特に大都市圏拠点空港はわが国が世界の国々や諸都市と競争するためのライフラインとなるものであり、その整備はわが国の国際競争力の向上や経済発展に大きく寄与することとなる必須の公共事業である。当該公共事業は早急な実施により効果を出来るだけ早く現実化することが必要であるため、飛躍的に重要性を増してきている空港に対して一般財源の大幅な重点的配分を行う必要がある」との認識を示した。

 2003年度の公共事業費(8兆971億円)が前年対比3.9%削減された中で、上記認識が2003年度の空港整備特別会計(空整特会)における歳入予算4563億円にも反映され、国の負担である純粋一般財源は前年度対比128億円増(+23.5%)の672億円、歳入に占める比率は前年度対比3ポイント増の15%と改善された。しかしながら、公共事業費全体に占める空港整備への純粋一般財源投入比率は0.83%で、航空分科会答申にも書かれている大都市圏拠点空港整備事業における今日の社会的重要性を勘案すれば、農業農村整備事業費8789億円(投入比率10.85%)、港湾整備事業費2944億円(同3.64%)に比し、あまりに少ない投入額と言わざるを得ない。(資料9「公共事業関係費(国費)の分野別シェア」参照)

 この結果、2003年度の空整特会においても、空港整備財源の85%も航空会社が国または空港管理者に直接支払う着陸料、航空機燃料税、航行援助施設利用料などの利用者負担に依存せざるを得ない状況となっている。わが国の着陸料が世界一高く、また米国以外には存せず、かつその18倍も高い日本の航空機燃料税が存在する根本原因は、国の重要な社会資本である空港整備への国費の過少投入である。(資料6「航空会社の利用者負担国際比較」参照)

 ちなみに、「数字で見る港湾2001」によれば、2001年度の港湾整備などの事業費総額は8686億円で、その約8割を国と地方自治体(港湾管理者)が負担し、民間負担はわずか1割に過ぎない。
 
(2) 羽田再拡張事業財源をめぐる国内論議

 以上のような空港整備財源における過度な利用者負担依存状況の中で、総事業費9000億円の大国家プロジェクトである羽田再拡張事業が行われようとしている。既出航空分科会答申は、当事業は「(1)多様な路線網の形成・多頻度化による利用者利便の向上」、「(2)航空市場における真の競争を行わせるための環境整備」、「(3)都市の国際競争力強化(都市再生)」、「(4)地域交流の促進、地域経済活性化」という、首都圏のみならずわが国全体に大きな便益を及ぼす事業であるとの認識を示している。その経済波及効果は地元に1兆2500億円(国土交通省試算、新聞報道)、全国的には8兆4000億円(定期航空協会試算)あるものと期待されている。

 2002年2月、日本政府は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を閣議決定し、その中の「社会資本整備のあり方について」の項で、「トップダウンの意思決定(分野間の優先順位…)」によって「公共投資の実効ある重点化、効率化」を図るとした。そして、扇国土交通大臣は2002年11月29日の記者会見で、国土交通省所轄の公共事業費予算に「めりはりをつける」と述べられると共に、12月20日の記者会見で、国の基本である空港、道路、鉄道などの社会資本は、本来的には国民の税金で整備されるべきとの認識を示された。

 経済同友会(2001年11月提言)、東京商工会議所(2002年9月提言、2003年2月提言)、日本経団連(2002年11月提言)は異口同音に、わが国にとって極めて重要な国家プロジェクトである羽田再拡張事業には、国の財政窮迫状況下でも国費である公共関係事業費の大胆な組み替えにより、一般財源を重点的に拡大・投入すべし、と提言している。かかる提言は今や日本の国民的総意になっていると言っても過言ではない。更に2003年2月の東京商工会議所提言は、羽田再拡張事業財源については今でも世界的に高い利用者負担の現状を踏まえるならば、「今以上の利用者負担増を行うべきではない」と述べている。

 一方、先の航空分科会答申は「羽田空港の再拡張事業について地方負担を導入する方向で検討する必要がある」との認識を示した。羽田再拡張は既述のように、地元にも大きな経済的利益をもたらすものと期待されている。現在、国と関係地方自治体との間で、羽田空港と同じ1種空港である関西空港と中部空港建設時に採用されている地元事業費負担の考えを、羽田再拡張事業にも適用するか否かにつき協議が行われている。扇大臣も述べられたように、国の社会資本は国費によって整備されるべきとの考えは国民的総意を得ているものと思われる。国家財政が窮迫している現在、「受益と負担の一致」原則も国民経済的に合理性があると考えられるところ、当該事業の受益者でもある地元地方自治体の負担のあり方という問題についても、以上の観点から論じられることを期待したい。
 
(3) 成田空港の民営化と空港整備財源、着陸料軽減との関係

1. 空港整備財源との関係について

 2002年12月の航空分科会は「国際拠点空港の民営化により、将来的には国がこれまで出資した分の株式売却益は国の収入となるが、この株式売却収入はわが国の大都市圏拠点空港整備のための財源として投入すべきである」と答申している。

 成田空港公団の資本金は2962億円で全額政府出資であるが、この出資は空整特会から出されている。空整特会の80%以上が利用者負担で、国の純粋一般財源は20%未満であることを考え合わせれば、かかる政府出資金の大部分は利用者によって賄われていると言えよう。

 現在、国会では、成田空港公団の完全民営化に向け、当公団を2004年4月に全額国出資の特殊法人に移行させる「成田空港株式会社法案」が審議されている。同法案の第1条「会社の目的」には、「(会社は)成田国際空港の設置及び管理を効率的に行うこと等により、航空輸送の利用者の利便の向上を図り、もって航空の総合的な発達に資するとともに、わが国の産業、観光等の国際競争力の強化に寄与することを目的とする」と書かれている。

 当該特殊法人の完全民営化は数年先になると思われるが、わが国全体に大きな効果をもたらすとの国民的共通認識が形成されている羽田再拡張事業は、まさに今世紀最大の国家プロジェクトであり、成田空港完全民営化による株式売却益を、政府出資部分も含めて全額投入するにふさわしい国家的事業と思われる。

2. 着陸料軽減との関係について

 1999年12月17日付の港湾審議会答申「経済・社会の変化に対応した港湾の整備・管理のあり方について」では、「全国的な見地から必要となる国際・国内の海上輸送網の拠点として」の「重要港湾」は、「国際的な海運ネットワークのなかで、国内外の船会社が相互に利用する国際社会資本として整備が求められる施設であることから、国が相当の財政負担を行なう必要がある」として、今現在でも空港整備より数段大きい国の財政負担を更に強化すべきとの考えが示されている。外国の船会社も利用する「重要港湾」整備には特に国の財政負担を強化すべしとの考えは、海港の厳しい国際競争状況をも視野に入れた地球化時代にふさわしい国際主義の表明である。航空の国内・国際ネットワークを支える国際基幹空港は、時間価値の極めて高い国の基本インフラとして今や日本の国民・国家活動に必要不可欠なものとなっており、空港整備に対する国のかかわり方の現状を考えるならば、この答申の考えは海運と同様、航空にも強く適用されるべきであろう。

 成田空港の着陸料問題を論じる際には、港湾整備事業におけると同様に「成田空港は国際社会資本である」との視点が必要と思われる。

 航空会社が支払っている成田の着陸料が世界一高く、日本に乗り入れている世界の航空会社がその着陸料値下げを強く要望していることは世間周知の事実となっている。

 2002年10月に出された米国通商代表部「2002年対日規制緩和要望書」の中でも、「成田及び関西空港の着陸料は世界で一番高い…実際のコストと国際標準に即した透明な料金水準にすべし」との米国政府見解が述べられている。
 黒野新東京国際空港公団総裁は、同公団が2003年発行したNAA Green Port No.93の「総裁が語る民営化の課題と展望」欄で、「近隣アジア各国で整備が進む国際拠点空港との競争力を一層強化する」との国家的観点から、「経営努力で着陸料値下げを実現したい」との抱負を述べられているが、かかる姿勢は高く評価されよう。

 一方、世界のほとんどすべての航空会社を会員としている国際航空運送協会(International Air Transport Association=IATA)は、これまでも黒字基調にあった成田空港公団の経営状況は、2002年4月の2本目滑走路供用開始により、2002年度着陸回数は対前年プラス35%、着陸料計算の基礎となる着陸総重量は対前年プラス20%も増大したことにより、経常黒字は大幅に増大しているとして、空港の民営化を待つことなく、出来るだけ早く着陸料の値下げを実施するよう公団に強く要望し、現在、両者間の協議が行われている。

 成田空港を母港とし、その最大の利用航空会社である日本の航空会社は、成田空港公団の良好な経営状況とは対照的に、これまで見てきた著しい低収益性に今やイラク戦争、SARSという外部要因も加わり、深刻な経営難に陥っている。空港と航空会社とは本来的には運命共同体であり、一刻も早い成田の着陸料軽減を強く望むものである。

 成田空港の民営化スキームについては、今後、その具体化に向けた検討が行われていくことになろうが、上記法案の第1条でうたわれている効率的な空港の設置・管理により航空利用者の利便性を向上し、もって航空の総合的な発達とわが国の国際競争力強化に寄与する、という新会社の目的は、完全民営化の目的でもあろうと思われるところ、これを達成するには空港の高い公共性と独占性に鑑み、そのスキームに以下の点を組み込むことが必要不可欠と考える。即ち;

1. 空港経営に関する情報公開を徹底すること。

2. そのスキームに諸外国にあるような着陸料などの空港使用料引き下げメカニズムや公的規制を組み込むこと。




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