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航空輸送産業に与える燃油価格高騰の構造的な影響について(2005年11月)

4.原油精製製品における航空燃油の独歩高傾向と高止まり見通し
 

 過去10年間の航空燃油・ドバイ原油、並びに乗用車の一般的燃料である日本国内のレギュラーガソリン(税抜き)の価格動向を見ると、ガソリンはほぼ横ばいで推移してきている。

  一方、航空燃油と原油は97年のアジア通貨危機、2000年後半のITバブル崩壊、2001年の米国同時多発テロ、2003年のイラク戦争という大きな国際的政治・経済事象の発生を受けて激しく変動している。今回の航空燃油・原油価格の高騰は、イラク戦争勃発直後の2003年4月を底に、その後ほぼ一直線に高騰を続け今日に至っている。
資料4−1「航空燃油・原油・レギュラーガソリンの価格推移('95-'05)」

  航空燃油と原油の価格乖離(いわゆる「スプレッド」)は、2004年6月ごろを端緒に大きく拡大し始めた。2004年6月の航空燃油、原油の価格はそれぞれ1バレル43.1、33.4米ドルであったが、2005年9月では79.9、56.5米ドルまで上昇している。この間の航空燃油の価格上昇率は185%であり、原油価格上昇率169%を大きく上回っている。
資料4−2「航空燃油・原油・レギュラーガソリンの価格推移('03-'05)」

  米連邦準備制度理事会の2005年10月17日付(ワシントン時間)発表文書によれば、同理事会のグリーンスパン議長は本年10月18日(日本時間)、東京で開催された日本経団連など経済3団体主催の講演会で、「最近のエネルギー価格の高騰は今後、(世界経済成長の)足かせになることは疑問の余地がない」と述べた。以下、氏の講演で本論と関係する部分のみ要旨を紹介する。

  「この10年間、原油は原油精製能力拡大以上の速さで増産されてきた」ため、すでに「原油生産と世界的に増大している(航空燃油、軽油、ガソリンなどの)軽質の石油製品に対する需要とのミスマッチも大きくなっている」。このため、「ますます厳しくなる地球環境要件に適合しなければならない輸送手段用の燃料が軽質な石油製品の大部分を占めているが、この需要」に応えるためには、原油精製能力を増強することが特に必要である。しかしながら、「例えば、米国では1976年以降、原油精製施設が新たに建設されていない」など、世界の原油精製能力の拡大・近代化は遅れており、軽質の石油製品を生産しやすい軽質原油と重質原油との価格差が大幅に拡大している。そして、「新しいエネルギー源、とりわけ在来のものでない油源の開発・利用はすでに進行中であるが、それでもやはりエネルギーの転換には時間がかかるであろう」。

  このように述べ、グリーンスパン議長は現在のエネルギー価格が今後も相当な期間にわたって高止まりになることを示唆した。同日のニューヨーク為替市場は同議長の発言に敏感に反応し、ドル買いが先行する流れ(=円安)が続いている、と報道された。
 
  原油および石油製品の国際価格を速報するPlatts Oilgram Price ReportのJeff Mower編集者も「中国とインドの需要増大と米国の原油精製能力不足で石油製品価格の値上げは続く。『需要はいまだ(世界的に)強く、供給は逼迫(ひっぱく)している。ここ当分、石油価格が劇的に下がるような兆しは見当たらない』」と述べている(2005年10月10日、Aviation Week & Space Technology)。

  「技術革新によりエネルギー源の転換がすでに行われつつある自動車」(グリーンスパン議長講演)の場合と異なり、燃油に代わる航空機の新たな燃料が開発されつつあるとの情報も流れていない今日、以上のような状況を踏まえれば、現在の航空燃油価格が大幅に下がるとの期待を持たないことの方が合理的であるように思われる。





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