HOME>企業情報>オピニオン>航空輸送産業に与える燃油価格高騰の構造的な影響について(2005年11月)
以上、縷々(るる)見てきたように、一般的に高止まりと見られている今回の航空燃油価格の高騰は、航空会社の航空燃油費を長期にわたって高レベルで固定、ないしは更に増加させる可能性が高い。 (1)航空燃油価格高騰による航空燃油費用の急激な増大状況 航空燃油価格の高騰は2003年4月ごろから始まったが、2005年9月時点での価格は1バレル当たり79.6米ドルで、2003年平均価格33.4米ドルの約2.4倍にも高騰している。 1バレル当たり1米ドル上昇すると、航空燃油費は日本の定期航空協会加盟航空会社全体で年間75億円程度増加する(注)。日本航空の場合、国際・国内合わせたトータルの事業規模、並びに国際線の事業規模が日本で最大であるため、年間約50億円の費用増となる。世界の主要航空会社が加盟しているIATA(国際航空運送協会)によれば、1バレル1米ドル上がると世界の航空界全体では10億米ドル(1,100億円)の費用増となる。 今回の急激な航空燃油価格高騰により、定航協加盟社全体の航空燃油費は2003年度対比で、2004年度は約600億円増、2005年度に至っては約2,000億円もの増加が見込まれている。もし、2006年度以降も燃油価格が現在の70米ドル後半で推移すれば、その費用増額は約3,600億円にも達すると推定されている(注)。 (注)定期航空協会加盟社はJALグループ航空会社、ANAグループ航空会社、北海道国際航空、スカイネットアジア航空で、ここでの費用増額数値は当協会資料による。 (2)航空燃油費用の急増による会社収支への影響状況 カレンツの本欄でもたびたび紹介してきたが、日本の航空会社は1991年の湾岸戦争以降、航空運賃の急激な落ち込みに対し様々なコスト削減策を実施し、生産単位当たり営業費用で約3割、そのうちの人件費では約5割を削減してきた。しかしながら、資料5の「わが国の産業別経常利益率推移」からも明らかなように、航空輸送産業の経常利益率は、この10年、一貫して他産業よりも著しく低い状態で、しかも0%を上下する形で推移してきている。2003年度の経常利益率は、航空運輸はマイナス2.2%であるが、全産業平均4.3%、全運輸6.4%、鉄道9.4%、電気7.4%となっている。 このように、わが国の航空輸送産業は低利益率の産業と言わざるを得ないが、定航協の主要メンバーであるJALグループとANAグループの2005年度営業利益見通しは、本年10月末時点ではJALグループ600億円(前提:航空燃油54米ドル、為替1米ドル=110円)、ANAグループ740億円(同:航空燃油57米ドル、為替1米ドル=110円)、2社グループ合わせて1,340億円となっている。先に紹介した2004年度対比2005年度の定航協会員航空会社の航空燃油費増約1,400億円という費用増規模は、この2社グループ合わせた営業利益見通し1340億円を一挙に飲み込んでしまうものである。 今回の航空燃油価格の急激な高騰が航空会社経営を直撃しているのは、日本だけの特殊現象ではない。例えば、米国のデルタ航空、ノースウェスト航空も本年9月、急激な燃油価格高騰で、ついに破産法の適用を受けるに至った。米国航空運送協会(ATA)会長のJames C. May氏は、本年9月14日の上院議会の委員会で、米国航空業界に与えた「ハリケーン・カトリーナの最も大きな影響はジェット燃料の劇的な高騰である」と述べて、米政府に対し、 1.航空機燃料税の1年間免除 2.備蓄原油放出を含む燃料の増産 3.石油精製能力の拡大 4.議会、並びに政府機関による石油市場における投機的行為の監視 を要望した。 ちなみに、米国航空運送協会発行の2005年10月11日付「航空会社と航空燃油」レポートには、米国航空会社の航空燃油調達ヘッジ率推測が紹介されている。このレポートから日本でもよく知られている航空会社をピックアップしてみると、2005年はメガキャリアのアメリカン航空とノースウェスト航空が6%、デルタ航空、コンチネンタル航空は0%、ローコストキャリアのサウスウェスト航空は85%、ジェットブルーは25%と推測されている。 2006年のヘッジ状況は、サウスウェスト航空のみが65%で、その他の航空会社は2006年以降すべて0%となっている。なお、ユナイテッド航空はこのリストに載っていないが、これは2002年末から破産法適用下にある同社はヘッジを行い得ない状況にあるためと推測される。本年7月現在の日本航空のヘッジ率は、2005年度が約7割、2006年度は約5割である。