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CSR報告書2007

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西松遙社長・白石真澄氏対談
社会から期待される企業であるために 代表取締役社長 西松 遙 × 関西大学 政策創造学部 教授 白石真澄
仕事に誇りをもつことが安全運航につながる
白石 ここ数年の厳しい経営環境のなかで、西松社長をはじめ社員の皆さんが努力をされて、最近ではトラブルやイレギュラー運航が減少してきたそうですね。

西松 トラブルの件数が減っているのは確かです。しかしその数字に安心してはいけないと思っています。トラブルはゼロにすることが理想ですが、世界中で毎日1200便運航している航空機のすべての機械にパーフェクトはあり得ません。これを限りなくゼロに近づけるための努力は惜しまずに継続していきます。また、ヒューマンエラーに対する対策をしっかりやっていかなければならないと考えています。エラーを少なくする努力は当然必要ですが、完全になくすことはできません。重要なのは、エラーを起こしても大事に至らないようにする仕組みを整えておくことです。そのためには、ヒューマンエラーやヒヤリハットの経験を積極的に報告してもらうための風土づくりが欠かせません。運航部門、整備部門をはじめとする現業部門には、いい意味での緊張感が高まり、風土づくりが着実に進んできていると感じています。

白石 ヒューマンエラーをなくすためには、一人ひとりの安全に対する心構えや自社への誇りがカギになると思います。

西松 仕事に対する誇りや充実感があるかどうかで、結果は大きく違ってきます。JALグループが社会から期待されているものは大きいと思います。2007年5月に安倍首相が中東を歴訪された際、同行する日本経団連率いる財界ミッションのためのチャーター便を、私たちが運航しました。私もその一員として参加させていただいたのですが、このミッションは大成功し、日本と中東諸国との関係がさらに深まっていくことを感じさせられました。このようなお手伝いをさせていただいたことは、私たちにとって大変喜ばしいことです。現在、定期便を運航していない国々に、安全に円滑にお運びすることができたことは、社員の自信となっています。これは一例に過ぎませんが、社会からの大きな期待を体感すると、仕事に対する誇りが生まれ、安全に対する意識もますます高まっていきます。

白石 社会性や公共性の高い航空輸送を営む企業として、社会からの期待を「安心」という形に具現化していただけるよう期待しています。

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「安全」を「安心」につなげる
白石 経営ビジョンとして、「安心とこだわりの品質で、世界を結ぶ『日本の翼』になる」ということを謳っていらっしゃいますが、お客さま満足度の向上のために、具体的にはどういうことをされる予定ですか。

西松 安全運航はJALグループの存立基盤であり、社会的責務ですが、私たちは「安全」をさらに進めて「安心」につなげていかなくてはなりません。直接運航に携わる部門だけではなく、空港スタッフや客室乗務員も、お客さまに安心を感じていただけるようなサービスをご提供する、そういう思いから「安心」を最初に掲げました。
また今年度から、安全推進本部と対をなすCS推進本部を発足させました。これは「こだわりの品質」でCS(お客さま満足)を徹底的に追求する部門です。
次に大きな課題となるのは定時性です。公共交通機関にとって定時運航は非常に重要なテーマです。定時運航を確保したうえで追求していかなければならないのが快適性と利便性です。予約、空港、機内などそれぞれの場面で、お客さまに快適、便利と感じていただける商品・サービスを提供します。私たちは、安全・安心に加え、定時性・快適性・利便性を高めていくことがお客さまのご満足につながると考えています。

白石 この春から、サービス改善のための女性プロジェクトチームをお作りになったと伺いました。ギリシャ神話に出てくる女神の名前をとって「アルテミスプロジェクト」という名前だそうですね。

西松 最も頻繁にご利用いただくお客さまは、いわゆるビジネスマンです。特に男性が圧倒的に多い。そのような背景もあり、商品・サービスの考え方が男性中心になっているのではないか、というお客さまからのご指摘がありました。そこで、女性の視点であらためて商品・サービスをさまざまな角度から見直すために、女性スタッフを中心に立ち上げたのが「アルテミスプロジェクト」です。社外の女性コミュニティーにもご協力いただきながら進めていく予定です。女性の繊細で鋭敏な感性で見直した商品・サービスが、男性のお客さまにも喜んでいただけるものになると期待しているところです。

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女性がますます活躍する社会に向けて
白石 女性によるプロジェクトチーム、大いに期待したいですね。JALグループではたくさんの女性スタッフが活躍されているようですが、機内でも落ち着いた年齢の客室乗務員の方が、きめ細かいサービスをしてくださいますよね。育児などが一段落された方に客室乗務員としての再雇用支援もされているとお聞きしました。

西松 一度職を離れても、子育てが一段落したら仕事に戻れる環境を整えれば、ライフスタイルの選択の幅が広がります。社員のワーク・ライフ・バランスを考えることと同時に、豊富な接客経験をもつ社員が現場で活躍すれば、お客さまのサービスにもつながるはずです。

白石 お子さま連れのお客さまの要望を先回りしてサービスしたり、泣き出したお子さまに声をかけたりするのは、子育ての経験がある方のほうが得意のような気がします。

西松 おっしゃるように、さまざまなお客さまのご要望にこたえていくためには、スタッフも多様化していたほうがいいのでしょう。ダイバーシティ(多様性)は、CSRの一つのテーマですが、CS向上にもつながることとしてとらえています。

白石 海外の事例にもありますが、女性の社会での活躍は、少子化問題の解消にも寄与すると思います。社会全体で子育て世代を支えることが大切である今日、企業が積極的に女性を登用し、女性の活躍を支援することは、大変重要であると思います。
代表取締役社長
西松 遙

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航空会社としての社会的責任
白石 環境問題にも力を入れていらっしゃるということをお聞きしました。飛行機の軽量化を図るために機内食の食器も軽量化されたそうですね。

西松 飛行機の重さは直接的に燃料の消費量、すなわち二酸化炭素(CO2)の排出量に跳ね返ってくるので、いろいろな工夫で軽量化を図っています。ファースト、ビジネスクラスでは食器に磁器を使っていますが、3年ほど前から軽量磁器を導入しました。スプーンやフォークの厚さも薄くしています。搭載物を含めた飛行機全体の重量を軽量化することでCO2の排出量を少なくできますから、環境に対する負荷を少しでも減らすべく、今後も継続して取り組んでいきます。

白石 「法令遵守」ということがよく言われますけれども、決められたルールをきちんと守ったうえで、本業で株主やお客さまに貢献して企業価値を高めていく。CSRというのはその先にある取り組みだと理解しているのですが、営利的価値を超えて本業以外の部分でも社会の役に立てるかどうかが問われてくるのだと思います。

西松 CO2を排出する航空機を運航する企業として、CO2削減の努力をすることは当然のことですが、航空会社ならではの環境活動もしています。1993年から高度1万メートル付近の大気を採取して持ち帰り分析する「大気観測」プロジェクトに協力してきました。2005年からは新しい分析装置を積んだ航空機が世界中を運航しています。ここで得られるデータが地球温暖化の研究に大きく貢献していると聞いています。こういった航空会社ならではの取り組みについては、今後も積極的に推進していきます。

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世界のお客さまから共感されるCSR活動を
白石 4月からグローバルアライアンス「ワンワールド」に加盟されました。150カ国、700都市が結ばれているそうですね。

西松 ワンワールドは、地理的にとてもバランスのとれたアライアンスです。南北アメリカ、東西ヨーロッパ、中東地区、アジア、オセアニアを拠点とする、品質重視のエアラインの集まりといえます。JALグループが就航していない地点に行かれるお客さまもスムーズに乗り継ぎできるよう、ワンワールドに加盟する航空会社スタッフがサポートしたり、加盟航空会社のマイレージが相互積算できるなど、数多くの特典をご利用いただけるようになりました。また、世界一周旅行も格段に行きやすくなっています。ぜひ、白石さんにも「ワンワールド・エクスプローラー(世界一周運賃)」で快適な世界一周旅行をお楽しみいただきたいですね。

白石 グローバルアライアンスに加盟すると、世界中のお客さまが利用されるようになりますから、日本のなかでどうするかだけでなく、いろいろな国の方々に対するサービスを考えていくことも必要になりますね。

西松 JALグループの機内には、日本人以外にもヨーロッパ・アジア・南アメリカなどを拠点とする乗務員もおりますが、皆、日本の文化や慣習を学んでおり、私たち日本人が得意とする細やかな心づかいやおもてなしの心でサービスしています。そういった私たちの日本的なサービスは、JALグループをご利用になる世界中のお客さまにも、必ず喜んでいただけることでしょう。そして、サービスのみならず、われわれの企業姿勢、CSR活動にも共感いただけるよう、今後もますます努力していかなくてはなりません。

白石 厳しい環境のなかですが、今おっしゃったようなことを着実に実行して、信頼ある日本の誇りとしての翼であり続けていただきたいと思います。

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白石真澄
1958年大阪府生まれ。関西大学大学院修士課程修了。西武百貨店、ニッセイ基礎研究所主任研究員を経て、2002年東洋大学社会経済システム学科助教授に就任し、2006年に教授。2007年より現職。専門テーマは「バリアフリー」「少子高齢化と地域システム」で、『バリアフリーのまちづくり』(日本経済新聞社)、『福祉の仕事』(共著、日経事業出版)、『新時代の都市計画』(共著、ぎょうせい)など著書多数。2006年より「JALアドバイザリー・メンバー」を務め、JALグループの商品・サービスについて幅広い観点から提言している。
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