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民間輸送機の設計製作は,運航会社と製造会社が行う将来に対する的確な需要予測に基づく新機種の必要性が認識されてスタートする。
- (1)仕様書(specification)
- 設計の基本となるもので,有償荷重(payload),航続距離(range),巡航速度(cruise speed),巡航高度(cruise altitude),離着陸距離(take-off
and landing distances),進入速度(approach speed)および運航費(operating cost)などの要求項目が示され,さらに装備やエンジンについて運航会社自身の経験に基づく選択が指示される。このような仕様書の内容を製造会社が検討し概念的な三面図が生まれるが,この段階ではまだ設計開始の指示は出されていない。しかし製造側としては市場動向の予測を保持しながら,蓄積された技術・データを活用して新機種の設計に伴う全体計画をある程度進行させるのが通例である。その後,運航各社に対する製造会社の販売説明の時期を経て,ある運航会社(複数の場合が多い)から,まとまった機数の発注が得られると新機種の設計製作が開始される。
- (2)翼の設計(wing design)
- 最初に行うのが主翼の設計であり,翼面荷重とのかね合いから翼面積を決定し,巡航速度における空力特性を考慮しながら縦横比(7前後),後退角(35°前後),翼厚(10〜12%),上反角などの要件を決める。主翼では翼幅方向に同じ翼型を用いることはなく,使用すべき翼型の設計と,それらを翼幅方向にどのように分布させ優れた空力特性の翼にまとめ上げるかは,設計の最大のポイントで,風洞試験を繰り返しながら検討される。ちなみに,DC-10/MD-11では翼付け根から翼端の間で5種の翼型が用いられている。主翼の設計では,フラップ,補助翼,スポイラーなどの操縦翼面の形式や配置も同時に決められる。
図1-3-1 主翼に用いる翼型の分布
図1-3-2 主翼設計には捩り下げと翼厚の分布も検討される
- (3)エンジンの配置(engine arrangement)
- 多発機のエンジン配置は,主翼下に吊るすポッド形式と胴体尾部に取り付けるリア・エンジン形式の2種があり,前者は翼構造の曲げモーメントを軽減するとともに翼のフラッターを打ち消す有効な質量を与え,後者では主翼がクリーンとなるので空力効率が増す利得がある。このほか3発機のように中央エンジンを胴体尾部に取り付ける場合は,エンジン前方の空気取り入れ口をDC-10/MD-11のようにストレートにする形式と,L-1011のようにS形ダクトにする形式がある。
図1-3-3 中央エンジンの取り付け形式
- (4)胴体の設計(fuselage design)
- 有償荷重を搭載する胴体の設計は運航会社にとっても関心が高い。機首の形状はパイロットの良好な視界を確保するように決められ,風防ガラスの傾斜度,曲面ガラスまたは平面ガラスの使用が検討され,雨中飛行でも十分な視界が得られるように考慮される。胴体の主要部は客室と床下部となるが,客室には座席,ギャレー,化粧室を適正に配置し,床下は貨物室,着陸装置の格納室,電子機器,空調装置などの装備に当てられる。客室の座席配置は,エンジン騒音が低い前方からファースト,ビジネス,エコノミーの3クラス(長距離路線)およびビジネス,エコノミーの2クラス(中・短距離路線)等で,ギャレーと化粧室は客室の前方と後方の2カ所に配置されるが,大型機では中間にも適正に配置される。なお座席間の通路(aisle)は,広胴機(200名以上)で2通路,狭胴機(200名以下)で1通路である。
- (5)尾部の設計(empennage design)
- 胴体尾部内には水平安定板の取り付け角を調節するスクリュー・ジャッキとAPUが装備され,水平尾翼の後退角と厚さは急降下時のマッハ数を考慮して決められ,尾翼に当たる空気流が前方にある主翼の影響を受けないよう,かつエンジン排気を避けるような位置に取り付けられる。また,機体重心が最前方にあるときのトリムと操縦性および重心が最後方にあるときの安定性を考慮して,水平尾翼面積が決定される。垂直尾翼の後退角と厚さも,同様に急降下時のマッハ数で良好な特性を確保するように決められ,方向の静安定性,ダッチロール特性および方向の操縦性を考慮して,垂直尾翼面積が決定される。
図1-3-4 水平尾翼面積をきめる要目
- (6)設計基準(design criteria)
- その他,民間輸送機の設計製作は航空当局が設定した設計基準(いわゆる耐空性審査要領)に指示された要件を満足するように進められ,製作の過程における機体の構造・強度に対する検査と試験,および完成した機体の性能や飛行性に対する飛行試験が行われる。これらの検査・試験により発見された不満足な部分については設計変更や修正の処理がとられ,最終的に新機種の型式証明が発行され,耐空性が確認されることになる。
一方,設計製作の過程において,仕様書による要求事項を具体的に検討したり,機体外形と装備上の要件の整合を図るなどの目的で,モックアップ(実大模型:mock-up)が製作される。以前は木製であったが,近年ではクラスIIまたはIIIと呼ばれる金属製の精巧なモックアップがつくられるようになった。
また、最近では3次元CAD(Computer Aided Design)により、接近性、近接度その他の設計要件を検証できるようになり、たとえば,777ではモックアップの製作が省略されている。
製作中の777
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フラッター(flutter):
高速飛行中に翼面または舵面の圧力中心が後方に移動し、翼や舵面の構造に曲げあるいは捩り(両者の合成もあり得る)を生じて発生する高い周波数の振動現象で,激しい場合は構造の破壊に至ることもある。舵面の場合は,ヒンジラインより前方にマス・バランス(釣り合いおもり)を取り付け,舵面自体の重心とヒンジラインが一致するようにしてフラッターを防止する。一方,ジェット輸送機の後退翼は縦横比が大きく薄いのでたわみやすいが,ポッド装備のエンジンが大きなマス・バランス(mass
balance)となって高速飛行時の翼のフラッター防止に有効に働いている。(→バフェット) |
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