本日はお忙しい中、お集まりいただき、本当にありがとうございます。
明日9月19日で、当社が東京証券取引所第一部に再上場してから丸1年を迎えます。この1年を振り返る前に、まずは2010年1月19日の会社更生法の適用申請に始まり、お客さま、旧株主の皆さま、社会の多くの皆さまに大変なご迷惑をおかけしましたことを、あらためまして深くお詫び申し上げます。
破綻後に、企業再生支援機構様より3500億円のご出資をいただき、支援期限内の2012年9月19日に再び上場することができました。売出価格3790円、結果的に時価総額6873億円での上場となり、企業再生支援機構様からの出資額を毀損することなく、国庫にお返しすることができたわけですが、これについては何よりもこの期間中に従前にも増してご利用いただいたお客さま、お取引先様をはじめ、多くの皆さまのご理解、ご支援の賜物であり、心から御礼を申し上げます。
本日は4点、1点目は『1年の振り返り』について、2点目は『成長戦略の方向性』について、3点目は『社会の進歩発展への貢献に関するご報告』について、最後の4点目は『国内航空ネットワークについて』ご報告させていただきます。
1点目は、『1年の振り返り』についてです。
再上場からの1年を振り返ってみますと、安全面については、特にボーイング787のバッテリー不具合についてご利用者の皆さまにご不安を与えてしまいましたが、万全の措置を施した上で運航を再開し、バッテリーの不具合だけでなく全体の不具合についても徹底した管理を図っております。今後も787に限らず安全運航に気を引き締めて努めてまいる所存です。
路線・商品・サービス面では、ボストン、サンディエゴ、ヘルシンキという国際線の新規地点開設や、本年1月の成田-ロンドン線より新座席を順次展開、国内線ではダイヤ改善を行うなど、お客さまに最高のサービスをご提供できる商品を導入しました。また、定時性向上に関しましても継続的に取り組み、定時到着率世界一の座を獲得することができました。
また、6月には再上場後初めての株主総会を開催いたしましたが、株主の皆さまの期待をひしひしと感じました。私がお話しする立場にはございませんが、株価につきましても売出時の価格に比べて順調に上昇しており、あらためて身の引き締まる思いであります。経営環境としては将来的なリスクイベントや、世界の景気、為替の動向など、当社を巡る不安定要因がなくなったわけではありません。しかしながら、再上場にあたって、私どもは「我々は言ったことは守る会社に生まれ変わる」とご説明し、「どんなことが起こっても計画は達成する」という強い決意を表明いたしました。
上場して1年を迎えますが、安全運航の堅持、外的環境変化に対応できる費用構造を中心とした財務基盤の確立、顧客満足No.1の実現という大きな課題について、昨年に引き続き取り組み、企業価値を高めてまいります。
2点目は「成長戦略の方向性」について、お話しさせていただきます。
これからは企業価値を高めると同時に、社会の進歩発展に貢献することに、より力点を置いてまいります。今後、いたずらに事業領域を広げることなく、航空運送事業にフォーカスし、日本と世界、世界と世界のヒト・モノをつないでまいります。そして、その成長余力を顕在化させ、社会への貢献を果たしていく所存です。
間近に迫った羽田空港国際線発着枠の拡大という大きな環境変化につきましては、多くの外国の方々に日本を訪れていただき、日本への理解を深めていただくよい機会と私どもは考えています。そのため、成田と羽田の戦略的位置づけを明確にします。
まず、成田につきましては、今後の拡張余地を考えて、海外と海外をつなぐ扇のかなめとして活用したいと考えています。特に「世界最大の人口を抱える中国・インド」、「経済成長著しい東南アジア」、そして「世界最大の経済大国アメリカ」の中心に位置するという日本の地理的優位性を活かしていきたいと思っています。また、羽田につきましては、国内各都市と海外を結ぶ「ゲートウェイ」として地位が向上してきており、最大限活用したいと思います。
今回の増枠は、「地方都市から海外への流れの拡大」や「首都圏と海外の距離の縮小」だけではなく、「海外から地方都市への流れの拡大」という効果が期待できると思います。また、ソウルなどの経由地に奪われている日本発海外行きの需要を羽田経由に取り戻すことにより経済効果の底上げにもつながります。その経済効果を競合他社と切磋琢磨することで最大化し、シートやラウンジ、機内食といった目に見えるものだけでなく、適正な運賃や運航品質についても高めていきたいと考えています。例えば定時性は、お互いが競争することで毎年世界最高レベルにまで高められています。
2020年のオリンピック開催が経済に与える波及効果は3兆円と言われておりますが、我々の試算では、羽田空港のさらなる国際化も、それに勝るとも劣らないものだと考えており、2014年の羽田空港国際線発着枠の拡大を契機に2020年のオリンピック開催まで日本経済をさらに飛躍させる好機が続きます。その効果が2020年まで持続・延伸するよう、私どもとしましても、発着枠増をより効率的に輸送力強化につなげていくことを念頭に、お客さまのために利便性の向上に努めてまいります。
当社は、まだ再上場して1年しか過ぎておりませんが、日本の内外へのヒト・モノの動きを円滑にすることで、日本のアジアゲートウェイとしての位置づけを確立し、国際競争力の向上や経済の活性化に貢献をしたいと考えております。
3点目として、『社会の進歩発展への貢献』という点にクローズアップして、私どもの取り組みをご紹介させていただきます。
再生が徐々に進むにつれて何らかの形で恩返しをさせていただきたいと考え、航空会社にできる取り組みを少しずつではありますが進めてまいりました。至近では、6月1日よりスタートしました東北応援プロジェクトの一環としまして、
東北発着の国際線チャーター便の運航や、訪日旅行者に対する東北周遊パス運賃の設定を行います。今後もこのような取り組みを継続してまいります。
最後に、『日本国内の航空ネットワーク』についてです。
現在の当社のコスト水準や各種補助に関する制度などをふまえ、あらためて各路線の採算性を検証し、経営破綻時に運休せざるを得なかった路線のうち、『代替手段がない路線』など皆さまにご不便をおかけしている路線の運航を再開する方針であります。社会インフラを担うという航空会社の社会的責務と、収益性という民間企業の責務を両立すべく、地方自治体ともご相談し、2014年度以降、準備が整った路線から順次運航を再開していければと思います。
また、当社の経営破綻を受け現在JALグループ連結外となっている北海道エアシステム(HAC)の経営改善に向けた支援につきましては、筆頭株主の北海道と、早期の安定的黒字化、および財務健全化への方策を中心に実務レベルの協議を重ねてまいりました。その結果、HACにつきましては、当社とのコードシェア拡大による営業収入の極大化や、当社が経営再建にあたって蓄積した企業再生・構造改革についてのノウハウを活用し、当社のコスト競争力を活かした費用逓減化等、経営力を最大化すべく最大限の支援を実施させていただくことにいたしました。私どもとしましては、一刻も早く、HACの経営改善を実現できるよう、筆頭株主の北海道と協議を継続し、道内航空ネットワークの担い手として、道民の皆さまの信頼を回復できるよう取り組んでまいります。
私からは以上です。ありがとうございました。