CSR シベリア森林火災の発見−運航乗務員の協力

森林は本来、二酸化炭素(CO2)を吸収する働きがあり、地球温暖化を抑えると考えられています。特に、広大なロシアのシベリアタイガ(針葉樹林帯)は、世界最大のCO2の吸収源と言われてきました。しかし、最近はここで大規模な森林火災が頻繁に起こり、逆にCO2を排出する原因となっています。さらにシベリアで火災が起こると、永久凍土が溶け出し、CO2よりも地球温暖化の深刻な原因となるメタンガスが大量に放出されます。
シベリアの森林火災を防ぐために、北海道大学を中心にアラスカ大学やロシア科学アカデミーなどが協力し合い、火災の発見と抑制に努めています。2003年、私たちはシベリア上空を飛ぶ飛行機の上から森林火災の発見・通報協力を始めました。航空会社だから、パイロットだからこそできる活動を通して、社会に貢献しています。

人工衛星と航空機の両方で火災発見の精度を上げる

シベリアでは、多い年で2,000万ヘクタール、つまり日本の面積の約半分の森林が火災で燃え、大量のCO2が大気に放出されています。たとえば1ヘクタールのシベリアタイガが燃えると、放出される炭素量に換算すると約40トンにもなります。ところが、周囲の森林が1年かけて吸収できる量は1ヘクタールあたりわずか0.4トン。したがって燃えた面積の100倍の広さの森林がなければ、放出されたCO2は取り返せない計算になります。また、地面が燃えた後は、地上の木がなくなって、土壌呼吸によってCO2が数十年間にわたってどんどん出てきます。さらに数十年から数百年たつと凍土が溶け出して、そこからメタンガスが出てくる。それらをすべてカウントすると、実はシベリアタイガは火災の影響を受けると、吸収源どころか温暖化ガスの放出源になってしまうわけです。
それを食い止めるためには、まず森林火災を抑止することです。しかし、シベリアタイガ地域は、日本の面積の約20倍もあって人の力ではとても火災の起こった場所を探すことはできません。最も有効なのは人工衛星を使う方法です。現在は、NASAが打ち上げた衛星を使って火災を検知していますが、ときどき不具合が生じて誤認識が起こります。それを防ぐためには、地面の情報と衛星の情報を重ね合わせて調整しなければなりません。地上の情報収集は、地面を歩いて集める方法と航空機を使う方法があります。森林防火隊など地上部隊がカバーしきれないところを航空機を使うと広域的なデータがとれますから、航空機によるモニタリングというのは非常に役に立ってくれる。さらにJALの欧州便は、同じ航路を定期的に飛ぶというメリットがあります。長期間にわたって同じ場所の変動を見ることができるため、私たちの研究が非常に進むんですよ。

工藤英樹 機長

「環境のためにできることは何でもやってみよう」という発想

2006年の4月、運航本部に地球環境委員会が発足しました。これは、運航乗務員として環境のために何かできることはないか、という発想によるボランティア活動からスタートした組織です。私たち運航乗務員は、普段、燃料をたくさん使って飛行機を飛ばしています。燃料をどれだけ節約できるかということも一つの環境問題ですから、環境に優しい飛び方を研究したり啓発活動を展開したりしています。また、環境保全のためにそのほかにできることとして、シベリア森林火災の発見・通報にも取り組んでいます。これは、私たちの仕事と直接的な関係はないのですが、空からレポートできるのはわれわれだけですので、北海道大学の福田先生からお話をいただき、環境のためにできることは何でもやってみよう、という意思をもって参加しています。高度約1万メートルで飛ぶと、雲がなくて条件がよければ400キロ四方が見渡せます。煙を見つけたらその時点で報告するわけですが、そのとき自分たちが飛んでいる位置はわかるので、それを基準に見当をつけます。当初は運航乗務員が個々の形式によって報告していましたが、現在では統一された報告形式がつくられ、短時間で記入できるように工夫・改善しています。この「環境のためにできることは何でもやってみよう」という発想は現在、運航本部の「空のエコ・プロジェクト」に受け継がれています。

工藤英樹 機長

※この文は、地球環境委員会のメンバーであった4人の機長の談話を元にまとめ、加筆しました。

実施時期 通報件数
2005年5月〜8月 30件
2006年6月〜8月 138件
2007年6月〜9月 172件
2008年6月〜9月 263件
2009年6月〜10月 158件
2010年7月〜9月 51件

欧米線・東南アジア路線を含む。