2005年3月、JALグループは国土交通大臣より事業改善命令を受け、その後も安全上のトラブルが連続したことから、2005年8月に安全アドバイザリーグループを設置しました。
メンバーは、発足後約5ヶ月間に、安全上のトラブルの当事者、関係者からのヒアリング、主要現場の視察、御巣鷹慰霊登山、国土交通省・東京国際空港(羽田)の管制保安部見学など、計30回におよぶ委員会や現場調査、130時間を越えるヒアリングを行いました。そして、2005年12月に、JALグループがより高い安全水準をもった企業として再生し、社会からの信頼を回復するために最初の提言を行いました。その後も、年2回、経営とのフォローアップ会議を開催し、JALグループの安全への取り組みの進捗を確認するとともに、その都度助言などを行っています。
2009年にはJALグループの職場訪問ならびに直接対話を計25ヶ所にて実施し、2005年以降の4年間における取り組みを評価するとともに、その取り組みをさらに深化させるため、2009年12月新たな提言を行いました。
その後も、継続的に職場訪問ならびに社員との直接対話を実施しています。
安全アドバイザリーグループは、ノンフィクション作家で評論家の柳田邦男先生を座長とし、ヒューマンファクター、失敗・欠陥分析、組織運営・文化、安全等に幅広い知識、経験を有する5名の社外有識者によって構成されています。
- 柳田邦男先生
- 1936年生まれ。作家、評論家。NHK社会部記者を経て1974年に作家に転身。1972年『マッハの恐怖』で大宅壮一ノンフィクション賞、1979年『ガン回廊の朝』で講談社ノンフィクション賞、その他、受賞多数。2002年に航空安全思想の普及に対して、民間航空開発50周年記念国土交通大臣表彰を受ける。2005年より日本航空安全アドバイザリーグループ座長。主な著書「事故調査」「航空事故」など。
- 畑村洋太郎先生
- 1941年生まれ。工学院大学教授、東京大学名誉教授。専門分野はナノ・マイクロ加工学、生産加工学、医学支援工学、失敗学、危険学、創造的設計論。2001年より畑村創造工学研究所を主宰し、また文部科学省の「失敗知識活用研究会」実行委員会の統括も務める。2002年には特定非営利活動法人「失敗学会」の初代会長に就任し、失敗学の普及を行っている。主な著書「失敗学のすすめ」「技術の創造と設計」など。
- 鎌田伸一先生
- 1947年生まれ。防衛大学校人文社会科学群公共政策学科教授。専門分野は組織論と経営学。組織学会、日本経営学会、経営情報学会、経営学史学会などの学会に所属。主な著書「失敗の本質−日本軍の組織論研究」「戦略の本質」など。
- 芳賀繁先生
- 1953年生まれ。立教大学現代心理学部心理学科教授。専門分野は交通心理学、産業心理学、人間工学。鉄道労働科学研究所、JR鉄道総合技術研究所で鉄道の安全に関わる心理学や人間工学を研究。その後、JR東日本の安全研究所に出向するなど鉄道を中心とする交通機関の安全研究に携わる。2006年から現職。主な著書「失敗の心理学:ミスをしない人間はいない」「失敗のメカニズム:忘れ物から巨大事故まで」など。
- 小松原明哲先生
- 1957年生まれ。早稲田大学理工学術院教授。専門分野は人間生活工学。中でも“人間の自然な行動”を主題に、「利用状況の調査」を重視した製品の使いやすさ向上や、誤使用防止、ヒューマンエラー防止などの製品開発やヒューマンファクターに関する調査・設計技術の研究、教育、企業指導を行っている。主な著書「ヒューマンエラー」「エンジニアのための人間工学」など。