| a. |
誘導抗力(induced drag):
揚力の項で説明したように,翼の上面側に負圧が,下面側に正圧が生ずることにより,翼端部では,翼上下面の圧力差によって下面から上面に向かって流れる渦(翼端渦という)が生じる。この渦は,翼まわりに飛行方向とは異なった気流を誘起し,翼に当たる気流の向きを下げる方向,すなわち翼の迎え角を減少させる方向に作用する。その結果,翼に作用する空気力の方向は,迎え角の減少分に相当する角度(誘導迎え角)だけ後方に傾くことになるが,このうち飛行方向に平行な成分は実際上は抗力として働くことになる。これが誘導抗力(あるいは誘導抵抗)である。
誘導抗力は,翼が揚力を発生している限り,その発生を避けることができない抗力であり,翼端があるために生じる抗力であるから,翼弦長に対して翼幅を大きくするなど,翼端の影響をできる限り小さくしてやれば誘導抗力を小さくすることができる。この誘導抗力を小さくすれば全体として抗力も減少し,その結果,揚抗比が増加するので必要推力または必要馬力が軽減でき,燃料消費量が減ることによって航続性能が向上する。そのため,航続性能を重視する民間輸送機などでは,細長い翼,すなわちアスペクト比の大きな翼を採用するのがふつうである。
図1-2-4 誘導抗力
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| b. |
有害抗力(parasite drag):
揚力を発生させるために,どうしても避けられない抗力,すなわち誘導抗力,および衝撃波による造波抗力を除いたすべての抗力を総称して有害抗力(あるいは有害抵抗)という。有害抗力はさらに,形状抗力と干渉抗力とに分けることができる。 |
| c. |
形状抗力(profile drag):
抗力のうち,物体の形状にのみ依存して変化する抗力を形状抗力(あるいは形状抵抗)という。形状抗力は,物体まわりの空気が剥れ,後方に渦を作り圧力が低下することによって物体を後方に引っ張ろうとする圧力抗力と,物体表面に付着して流れる空気の摩擦によって生じる摩擦抗力とに分けることができる。
なお,翼型の場合の形状抗力は,特に翼型抗力と呼ばれている。 |
| d. |
干渉抗力(interference drag):
ある物体まわりの空気の流れは,傍に別の物体を持ってくることによって影響を受け,流れの様子が変化するとともに,そこに作用する空気力も全く変わってしまう。この現象を干渉と呼び,干渉によって生じる抗力を干渉抗力(あるいは干渉抵抗)という。たとえば,胴体と主翼とを組み合わせて空気流中に置くと,これに作用する抗力は干渉により,胴体,主翼それぞれ単独の形状抗力を加えた抗力よりも大きくなる。しかし干渉抗力は,干渉によって生じる局部的で不規則な流れの発生を防止すれば減少させることができ,そのために胴体と主翼との結合部などには,流れをスムーズにするためのフィレット(fillet)が取り付けられていることが多い。 |
| e. |
造波抗力(wave drag):
遷音速や超音速の速度領域では,流体(ここでは空気)の粘性や流れの剥離によって抗力が生じる。これは衝撃波の発生によって,その後方の気流の流速の低下や運動量の損失を生じた結果であり,船が水面に波を立てて進む状態と似ているので,造波抗力または造波抵抗という。 |