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飛行機の安定性 aircraft stability
1. 飛行機の軸 axis of airplane
前後軸 longitudinal axis
左右軸 lateral axis
上下軸 vertical axis
(1)ピッチング pitching
(2)ローリング rolling
(3)ヨーイング yawing
(4)飛行姿勢 flight attitude
2. 安定性 stability
(1)縦安定 longitudinal stability
(2)横安定 lateral stability
(3)方向安定 directional stability
(4)横滑り side-slip
(5)バンク角 bank angle
(6)トリム trim
3. 安定板 stabilizer
水平安定板 horizontal stabilizer
垂直安定板 vertical stabilizer
4. 安定増加装置 SAS:stability augmentation system
(1)ピッチ・トリム・コンペンセーター PTC:pitch trim compensator
(2)ヨー・ダンパー yaw damper
5. 関連用語
1.飛行機の軸(axis of airplane)
 飛行機は空中で,いわゆる三次元空間の中を運動する。これを大きく分ければ安定性・操縦性およびトリムの三つになるが,このような運動を考える場合,飛行機の前後,左右,上下の方向に軸を定め,飛行機に作用する空気力モーメントを各方向に分けて調べるのが便利である。そこで,重心点を通ってX軸,Y軸,Z軸を,図1-2-16のように定める。
 X軸は前後軸(longitudinal axis),Y軸は左右軸(lateral axis),Z軸は上下軸(vertical axis)といい,それぞれの軸に関係する運動をローリング,ピッチングおよびヨーイングと名づけている。またこの場合,横滑りの運動もあるが,三つの軸全体が滑ることになるので事情は異なってくる。
図1-2-16 飛行機の運動の軸
(1) ピッチング(pitching)
 機体の左右軸まわりの運動,すなわち機首を上下に振る運動で,縦揺れともいう。ピッチングに関する運動は,昇降舵によってコントロールされ,また安定性は水平尾翼によって得られる。
(2) ローリング(rolling)
 機体の前後軸まわりの運動,すなわち飛行機が右や左に傾く運動で,横揺れともいう。ロールしたときに,機体の左右軸と地面とがなす角をバンク角という。ローリングに関する運動は,補助翼によってコントロールされ,また安定性は主翼の上反角および後退角によって得られる。
(3) ヨーイング(yawing)
 機体の上下軸まわりの運動,すなわち機首を左右に振る運動で,偏揺(かたゆ)れともいう。ヨーしたときに,機軸と進行方向とがなす角を横滑り角という。ヨーイングに関する運動は,方向舵によってコントロールされ,また安定性は垂直尾翼によって得られる。
(4) 飛行姿勢(flight attitude)
 飛行中,機体が地面に対して前後,左右方向に,どのくらい傾いているかを示す度合いで,ピッチ角およびバンク角によって表示される。ピッチ角は飛行機の前後軸が地面となす角,すなわち機首の上下の度合いを示す角度であり,またバンク角は,飛行機の左右軸が地面となす角,すなわち機体の左右の傾きを示す角度である。
2.安定性(stability)
 飛行機がある状態で飛行しているときに,外部からの攪乱によって,その釣り合い姿勢を変化させられた場合,操縦によらず,自然に元の状態に戻ろうとする性質の度合いを安定性という。この安定性は,元の状態に戻るまでの時間的経過を考えるかどうかによって,静安定と動安定とに分けられ,状態が変化したとき,元の状態に戻ろうとする性質を持つ場合,静安定が正であるといい,また,状態の変動が時間的に減衰する性質を持つ場合,動安定が正であるという。
 すなわち,図1-2-17abでは,いずれも,状態が変化したのち,元の状態に戻ろうとする性質があるので,静安定は正であるが,図1-2-17dでは,変化した状態から元に戻らず,ますます離れていく性質があるので,静安定は負であることを示している。また図1-2-17abでは,状態が変化した後,ある時間後には元の姿勢に戻ろうとする性質があるので,動安定は正であり,図1-2-17cdでは逆に,動安定は負であることを示している。
 さらに飛行機が攪乱を受けても,元に戻ろうとする力が働かず,その状態に留まる場合,静安定が中立であり,状態の変化が時間経過とともに,減衰することなく同じ振幅で継続する場合,動安定が中立である。
 いずれにせよ,民間輸送機においては,静安定,動安定とも正になるように設計されていることはいうまでもないが,あまり安定性をよくしすぎると,操縦性が損なわれるので,飛行機を開発する場合,安定性および操縦性の二つの相反する条件をうまく妥協させながら設計を進めなければならない。
図1-2-17 飛行機の動安定
(1) 縦安定(longitudinal stability)
 機首の上下方向の動き,すなわちピッチングに関する安定性であり,飛行機がある迎え角で釣り合って飛行しているときに,何らかの原因によって釣り合いがくずされて,迎え角が変化した場合,元の姿勢に戻ろうとする性質である。この縦安定は一般的に,水平尾翼の働きによって得られている。縦安定は重心の位置に大きく影響され,重心が後方にあると安定性は悪化し,逆に前方にあると安定性は向上する。
図1-2-18 縦の静安定
図1-2-19 飛行機の縦安定
(2) 横安定(lateral stability)
 飛行機の左右の傾き,すなわちローリングに関する安定性のこと。機体がロールを起こしたとき,自然に元の釣り合い位置まで戻る性質である。飛行機には,直接傾きを戻す力は働かないが,傾くと結果として,横滑りを生じる。この際,主翼に上反角があると,滑った方の翼に大きな揚力が生じ,傾きに対する復元力が働く。これを上反角効果(dihedral effect)という((5)バンク角参照)。このような場合,横安定は正であるという。
図1-2-20 飛行機の横安定
(3) 方向安定(directional stability)
 機首の左右方向の動き,すなわちヨーイングに関する安定性のこと。飛行機が横滑りを起こしたとき,機首方向を変化させ,気流の方向と機首方向を一致させる性質で風見安定(weather-cock stability)とも呼ばれる。方向安定は一般に垂直尾翼の働きによって得られる。
 なお,図1-2-23ではNo.1エンジンが不作動となり,そのままでは機首を左へ向けようとするが,方向舵を右へきって垂直安定板に働くモーメントで釣り合わせている状態を示す。
図1-2-21 方向の静安定
図1-2-22 飛行機の方向安定
(4) 横滑り(side-slip)
 機軸と飛行方向とが一致しない場合,その現象を横滑りと呼び,このとき前後軸と飛行方向とがなす角を横滑り角という。横滑りは,旋回時に補助翼と方向舵とのバランスがとれていないときなどに発生するが,横風成分があるときの飛行時などでは,故意に横滑りを生じさせることによって飛行方向を調整するためにも利用されている。
 なお,横滑りを起こすと,図1-2-22のように飛行機に当たる気流と垂直尾翼との間には,ある迎え角が生じるので,垂直尾翼には機体の向きを気流の方向に向けようとする揚力が発生し,その結果,機体が気流に向くことによって横滑り角が減少するという効果が生じる。
図1-2-23 飛行機の方向安定
図1-2-24 飛行機の横滑り
(5) バンク角(bank angle)
 図1-2-24のように飛行機がロールし,機体の左右軸と地面との間に角度を生じた場合,これをバンクといい,水平面に対する角度をバンク角という。バンク角の大きさは,釣り合い旋回を行う場合に非常に重要なものであり,旋回時のバンク角が小さすぎると機体は旋回の外方向に横滑りを起こし,また大きすぎると内方向に横滑りを起こす。
 なお,機体がロールしバンク角を生じると,図1-2-24のように,揚力の分力によって横滑りが誘起され,この横滑りと主翼の上反角の効果によって,左右の各主翼の実質的な迎え角が変化し,左右各主翼の揚力に差を生じる。このため,機体は最初のロールとは逆方向にロールすることになり,最終的にはバンク角を減少させる効果が生じる。
 また,主翼に後退角がある場合も上反角と同じ効果があり,現代の高速ジェット機のように,主翼に大きい後退角を持った機体では,通常の上反角と後退角の相乗効果によって,横安定がよくなりすぎる場合がある。このような場合は主翼に負の上反角,すなわち下反角をつけて操縦性を確保することがある。
図1-2-25 ロールによる復元
(6) トリム(trim)
 飛行機がある高度,速度,フラップ角およびエンジン出力などの諸条件のもとで飛行している場合,操縦翼面に働く空気力を調整し,前後,左右,上下の3軸に関して重心まわりのモーメントをゼロにすると,パイロットは操縦桿やラダー・ペダルなどの操縦装置に力を加えることなく,そのままの状態で飛行を続けることができる。このように,飛行機に作用する空気力,エンジン出力などをすべて釣り合わせ,操縦力をゼロにすることを「トリムをとる」という。
 トリムをとるには,操縦翼面に取り付けられたトリム・タブという小翼を微調整する従来方式のほか,大型ジェット機のように,油圧や電気などの動力により操縦翼面自体の中立位置を調整することでトリムをとる方式もある。
3.安定板(stabilizer)
 水平安定板(horizontal stabilizer)と垂直安定板(vertical stabilizer)とを総称して安定板と呼んでいる。現代の民間ジェット輸送機のように,水平安定板の取り付け角を変えることができる機体では,離陸,上昇,巡航,降下,着陸などの各飛行段階で,そのときの状況に応じた水平安定板取り付け角の調整を行うなど,実際の運用上は水平安定板だけが操作の対象となるところから,水平安定板の方がよりクローズアップされることが多い。したがって現代の民間ジェット輸送機では,水平安定板のことを単に安定板と呼び,垂直安定板をフィン(fin)ということもある。
図1-2-26 垂直安定板
図1-2-27 水平安定板
4.安定増加装置(SAS:stability augmentation system)
 機体が自身で備えている安定性が不足している場合,あるいは安定性が負であるような場合に,人工的に正の安定性を持たせるための装置。これには高速飛行時に発生する機首下げの傾向,いわゆるタック・アンダーによる縦安定の不足を補うためのピッチ・トリム・コンペンセーター,あるいは,高高度,高速飛行時に方向安定と横安定のアンバランスによって発生する,いわゆるダッチ・ロールを防止するためのヨー・ダンパー,またはロール・ダンパーなどがある。
(1) ピッチ・トリム・コンペンセーター(PTC:pitch trim compensator)
 飛行機にタック・アンダー現象が起こると,縦安定が負になることを意味し,安定性上,きわめて具合が悪いことになる。したがって,DC-8機では,マッハ0.78以上の速度に達した後は,自動的に昇降舵の操舵力を補正し,タック・アンダーの影響を相殺することによって,安定性を人工的に正にするPTCを備えている。マック・トリム・システムと呼ばれることもある。MD-11ではLSAS(Longitudinal Stability Augmentation System)にこの機能が組み込まれている。
(2) ヨー・ダンパー(yaw damper)
 ダッチ・ロールを防止する目的で用いられる安定増加装置の一種。この装置は,ヨー方向の角加速度を検知し,電気的信号を作り出す部分,およびその信号を増幅し,方向舵を動かすアクチュエーターに指令を出す部分,および方向舵を動かすアクチュエーターなどから構成されており,この装置が自動的に方向舵を適正に操舵することにより,ダッチ・ロールの発生を防止することができるように作られている。
5.関連用語
タック・アンダー(tuck under)
 飛行機の速度が臨界マッハ数を超えると,衝撃失速(または造波失速)によって揚力が減少し,洗流角(downwash angle)も減り,尾翼の下向き揚力が減少して,機首下げのモーメントを生じる現象。ふつうなら,飛行機の速度が増すに従い揚力が増加し,パイロットは操縦桿を次第に前に押さなければ水平飛行が続けられないが,この現象が起こると操縦桿を押す力をゆるめるか,逆に引かなければならなくなる。降下中にこの現象が生じると,降下角が深くなり危険とされ,ジェット機が実用になったころはこの現象が恐れられていた。
図1-2-28 タック・アンダー
ダッチ・ロール(dutch roll)
 飛行機のローリングとヨーイングが合成された蛇行運動を,短い周期で繰り返す状態をいう。この運動は昔のオランダ人のスケートのスタイルに似ているためダッチ・ロールと呼ばれ,パイロットが補助翼と方向舵の操作を協調させて減衰させることは困難であるので,ジェット輸送機ではヨー・ダンパーを装備している。(→ダッチロール・モード

 
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