taitle


項目で探す方はこちら



用語で探す方はこちら


体験学習はこちら


書籍の情報はこちら

 

飛行機の操縦性 aircraft controllability
1. 操縦性 controllability
2. 縦の操縦性 longitudinal controllability
(1)縦の静安定 longitudinal static stability
(2)縦のマニューバリング安定 longitudinal maneuvering stability
(3)縦の短周期モードと長周期モード longitudinal short-period mode and phugoid mode
3. 横/方向の操縦性 lateral and directional controllability
(1)横操縦の能力 lateral control capability
(2)テームネス tameness
(3)ダッチロール・モード dutch roll mode
(4)ジー G
1.操縦性(controllability)
 飛行機が定常飛行中に突風などの攪乱を受けて動揺を起こしたとき,操縦者が復元のための操作を行わなくても,自力で元の定常状態に戻る性質が安定性である。一方,飛行機がパイロットの操縦により定常飛行を維持したり,ある飛行状態から他の飛行状態に移る場合(例:巡航から降下進入)のように,パイロットが自分で操縦することによって体感する操舵力や操縦のしやすさが飛行機の操縦性であり,特にジェット輸送機においては,離着陸時における良好な操縦性と安定性を設計上どのように協調させるかが重視されている。
2.縦の操縦性(longitudinal controllability)
(1) 縦の静安定(longitudinal static stability)
 着陸装置とフラップを下げの形態として,失速速度(Vs)の1.3倍プラス5ktの速度にトリムされた着陸進入中のDC-10の縦の静安定性を,機速と昇降舵の操縦力の関係で表したものが図1-2-29である。トリムされた速度150kt付近を境として,速度を下げるには操縦桿を引き,速度を増すには操縦桿を押さなければならず,縦の安定性が正であることを示している。また,その力もFAAの要求を満足する特性を示していることがわかる。また,重心位置(CG)が前方の場合より後方にある場合が,必要な操縦力が小さくなることもわかる。
図1-2-29 縦の静安定特性〈DC-10-30,重量400,000lb(181ton)〉
(2) 縦のマニューバリング安定(longitudinal maneuvering stability)
 上記と同じ着陸形態のDC-10がサークリング・アプローチのため,旋回のような加速度を伴う運動(マニューバリングという)を行う場合の縦安定性を,加速度を表す荷重倍数(n)と昇降舵の操縦力の関係で示したものが図1-2-30である。n=1.0がトリムされた水平定常飛行の場合で,民間ジェット機としてかなり急激といえる45度旋回(n=1.41)のとき,CGが前方および後方いずれの場合も,操縦力は米軍の飛行性規定(MIL-F-8785B)の要求を満足する操縦性を示している。上記のように,飛行機が加速度運動を行う場合の操縦性は,運動の大きさを表すn,すなわち重力加速度(g)と操縦力の対比により評価されるのが普通である。
図1-2-30 縦のマニューバリング安定特性〈DC-10-30,重量400,000lb(181ton)〉
(3) 縦の短周期モードと長周期モード(longitudinal short-period mode and phugoid mode)
 縦の動安定と昇降舵を操舵した時の応答性も操縦性を評価する指標とされている。この場合,ある昇降舵インプットにより誘起されたピッチングにおける短周期および長周期の減衰比をもって評価するのが普通であり,後者の場合を特にフゴイド・モードと呼ぶ。着陸形態のDC-10についての短周期モードを図1-2-31に,フゴイド・モードを図1-2-32にそれぞれ示す。フラップ限界速度から1.25Vsの接地速度(VTD)の間において,いずれの場合も良好な減衰比を示しており,前記の米軍飛行性規定による要求を満たしていることがわかる。なお,最近の広胴ジェット機の場合,このデータが示すように,短周期モードの方がフゴイドより減衰比は格段に大きい。
図1-2-31 縦の短周期モード〈DC-10-30,重量400,000lb(136ton)〉
図1-2-32 フゴイド・モード〈DC-10-30,重量400,000lb(181ton)〉
3.横/方向の操縦性(lateral and directional controllability)
 飛行機は空中で三次元の運動を行うため,補助翼/スポイラーの操作による横の操縦と方向舵の操作による方向の操縦は互いに密接な関係をもっており,それぞれを別個に操作する機会は少なく,多くの飛行状態で横/方向の操縦が同時に行われることが多い。旋回や横/方向の飛行経路を修正するため,補助翼/スポイラーの操作により,揚力の作用方向を傾けて機体をロールさせる。また,これらの操作は横滑りや乱気流中の飛行などの補正にも使用される。一方,多くの飛行状態では横滑りのないことが望ましいので,飛行中に横滑り角をゼロに保持するように方向舵を使用する。ただし逆の場合として,横滑りを利用し意図的に飛行方向を修正することもある。
(1) 横操縦の能力(lateral control capability)
 飛行中に,補助翼/スポイラーを操作すると,機体の前後軸を中心として左右いずれかの方向にローリング・モーメントを生じる。そのモーメントの大きさをローリング・モーメント係数(C1)と表し,C1と操縦輪の操作量(回転角−度)との関係を着陸形態のDC-10-30とDC-8-62について表したものが図1-2-33である。DC-8では着陸装置を下げとした以後はスポイラーも一緒に作動するので,その場合の特性が点線で示されている。この図が示す操縦輪の操作量に対するC1の大きさにより横の操縦の応答性が評価できるが,操縦輪の同じ変位量に対しC1がはるかに大きいことにより,DC-10ではDC-8よりも横の操縦性が優れていることがわかる。
図1-2-33 横操縦の能力
(2) テームネス(tameness)
 多発機が飛行中に臨界発動機が不作動となった状態で,方向舵を使用せず補助翼/スポイラーの操作のみで機を操縦できる能力を「テームネス」(注:操縦のしやすさの意)と呼び,大型機の横/方向の操縦性の指標とすることがある。この場合,機速が低くなるほど大きく操舵する必要があるが,そのときの操縦輪の変位量(最大操舵量に対する%で表す)と機速の関係で評価する。図1-2-34は,比較的軽い重量でフラップを離陸形態とした,747SPとDC-10-30のテームネスを対比したものである。これから,速度が小さくなるとより大きな操舵量が必要となることがわかる。また,DC-10は747SPに比べ,操縦輪の変位量が小さくてすむことがわかる。
図1-2-34 テームネス特性
(3) ダッチロール・モード(dutch roll mode)
 横および方向の動安定特性を知るためダッチロール・モードがあり,パイロットが故意にダッチロールを起こさせ,元の安定した飛行状態に戻るまでの減衰特性を調べる飛行試験がある。多くのジェット機はダッチロールを防止するヨー・ダンパーを装備しているが,この場合はヨー・ダンパーをオンおよびオフとした条件でテストする。巡航形態で失速速度の1.4倍の飛行速度にトリムされた大型輸送機(C-5A)で,ゆっくりと方向舵を動かしダッチロールを起こすと,結果的に生ずる機の振動,つまり横滑りとロールは時間経過とともに図1-2-35のように減衰する。この場合は,ヨー・ダンパーオフの条件で約10秒の周期で軽やかに減衰しながら,約5サイクルで完全に減衰している。一方,ヨー・ダンパーオンの場合は,方向舵が中立位置に戻ってからヨー・ダンパーが働き始め,その後は極めて良好に減衰しつつ1.5サイクル(10秒の周期)で横滑りが完全に減衰している。なお図1-2-35の上段は,ダッチロールを起こさせた時の方向舵による入力を示す。
図1-2-35 ダッチロール特性
(4) ジー(G)
 物体が静止しているときには,その物体には,重力による力が作用する。この力が重量である。一方,加速運動中の物体には,重力のほかに,遠心力などの力も作用するので,結果的には,これら両方の力を合わせた力が作用している。加速運動中の物体に働くこの力(合力)と,静止しているときに働く力(重量)との比をGと呼んでいる。
 たとえば,旅客機がスムーズに巡航しているときは,加速運動ではないので,1Gの飛行であり,そのときに乗客が感じる体重は,ふだんの体重そのものである。一方,ジェットコースターで下に凸の部分を通過する場合には,身体が下に押し付けられる感じがするが,これは,1Gより大きな加速度が作用しているからであり,体重が増えたかのように感じる。逆に,上に凸の部分を通過する場合には,体重が減って身体が浮き上がる感じがするが,これは,作用する加速度が1Gより小さくなっているからである。このように,ふだん感じている加速度を基準にして,感じる体重が増加する場合のGをプラスのG,感じる体重が減少する場合のGをマイナスのG,ということもある。
 なお,民間機の離着陸時の前後方向のGは,自重その他の条件によっても異なるが,およそ0.3〜0.5G程度の値となっている。また,接地時の垂直方向のGは1.2〜1.3G程度(通常に働いている重力に加え0.2〜0.3G)の値となっている。

 
JAL-航空券 トップ 目次