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操縦系統 flight control system
1. 主操縦翼面 primary control surface
(1)昇降舵,エレベーター elevator
(2)補助翼,エルロン aileron,フラッペロン flaperon
(3)方向,ラダー rudder
(4)エレボン elevon
(5)水平安定板,安定板 horizontal stabilizer, stabilizer
2. 二次操縦翼面 secondary control surface
(1)スポイラー spoiler
(2)フラップ flap
  高揚力装置 high-lift device
a.後縁フラップ ,トレーリング・エッジ・フラップ trailing-edge flap
●単純フラップ plain flap
●スプリット・フラップ split flap
●スロッテッド・フラップ slotted flap
●ファウラー・フラップ fowler flap
●ダブル・スロッテッド・フラップ double-slotted flap
●トリプル・スロッテッド・フラップ triple-slotted flap
●吹き出しフラップ blown flap
b.前縁フラップ,リーディング・エッジ・フラップ leading-edge flap
c.スラット slat
●動力高揚力装置 PHLS:powered higt-lift system
(3)タブ tab
●トリムタブ trim tab
●コントロール・タブ control tab
●バランス・タブ balance tab
●アンチ・バランス・タブ anti-balance tab
3. 制御系統 control system
●手動操縦装置 manual flight-control system
●動力操縦装置 powered flight-control system
●人工感覚装置 artificial feeling device system

 各種の操縦翼面と,これらを制御する系統全体を操縦系統といい,パイロットは操縦系統を介して各操縦翼面を適時に操舵するとともに,必要によりエンジン出力を調整し,飛行経路を制御することができる。操縦系統は,基本的には主操縦翼面と二次操縦翼面およびそれらを制御する系統から成っている。

1.主操縦翼面(primary control surface)
 機首の上げ下げ(ピッチ・コントロール)を行う昇降舵(elevator),機首を左右に向ける(ヨー・コントロール)ための方向舵(rudder),飛行機を左右に傾ける(ロール・コントロール)ための補助翼(aileron)が,飛行機の姿勢を3軸方向に変化させる基本的な操縦翼面(control surface)である。
 これらの操縦系統は,操縦室に設けられた複式のコントロール・コラム(操縦桿),ラダー・ペダルおよびコントロール・ホイール(操縦輪)などの操縦装置,これらの装置と各操縦翼面を動かす油圧作動装置とを結ぶコントロール・ケーブル(操縦索)および各操縦翼面から構成される。パイロットが操縦装置を操作すると,操舵力に伴う動きが操縦索を介して油圧作動装置の制御弁に伝わり,通常は油圧によりこれらの操縦翼面が動かされる。
 777のように,主操縦装置にフライ・バイ・ワイヤ(fly-by-wire)方式を取り入れた場合は,操縦装置とコンピューターおよび油圧作動装置の間をワイヤー,つまり電線で接続し,コンピューターが最も効率のよい舵面操作を計算し,操縦翼面を作動させる。図1-4-3にフライ・バイ・ワイヤ方式を採用した777の主操縦翼面の作動経路の概要を示す。
図1-4-3 777の主操縦翼面の作動経路の概要
(1) 昇降舵,エレベーター(elevator)
 機首の上下方向,つまりピッチ方向の姿勢を制御するため,図1-4-1のように水平尾翼の後縁に取り付けられている操縦翼面。
昇降舵はコントロール・コラムを前後に動かすことによって操舵され,コントロール・コラムを手前に引くと昇降舵面は上がり,機首上げのモーメントが生ずることによって迎え角が大きくなる。
図1-4-1 747の操縦翼面
図1-4-2 747の昇降舵操縦系統
(2) 補助翼,エルロン(aileron)
 機体の左右の傾き,つまりロール方向の姿勢を制御するため,図1-4-1のように左右各主翼の後縁に対称的に取り付けられている操縦翼面。
 通常エルロンは,コントロール・コラムの上部に取り付けられているコントロール・ホイールを,左右に回転させることによって操舵される。たとえば,コントロール・ホイールを右に回すと,左翼側のエルロンは下がり,翼のキャンバー(反り)を増加させ,右翼側のエルロンは上がり,翼のキャンバーを減少させる。その結果,左翼の揚力は増加し,逆に右翼の揚力は減少し機体は右に傾く。これと逆の操作を行えば機体は左に傾く。
 なお,現代の大型ジェット輸送機や高速機では,高速飛行時にエルロンの効きが逆になる,いわゆるエルロン・リバーサルの発生を防止するため,左右各エルロンを,内側エルロンと外側エルロンに分け,高速時には内側エルロンとフライト・スポイラーを併用する方式のものが多い。また,777では内側エルロンはフラッペロンとも呼ばれる。フラッペロンは,ラテラル・コントロールとしてエルロンとスポイラーとともに作動し,また高揚力装置としてフラップとともに作動する。
(3) 方向舵,ラダー(rudder)
 機首の左右方向,すなわち方向の姿勢を制御するため,図1-4-1のように垂直尾翼の後縁に取り付けられている操縦翼面。
 通常,方向舵は,操縦席の左右どちらかのラダー・ペダルを踏むことによって操舵される。たとえば,左のラダー・ペダルを踏むと,方向舵は左に動き垂直尾翼にキャンバーを生じることによって,右向きの揚力を発生させ,その結果,重心まわりに機首を左に向けるモーメントができ,機首は左を向く。これと逆の操作を行えば機首は右を向く。
 なお,747,DC-10およびMD-11のように,昇降舵を内側/外側に,また方向舵を上部/下部にそれぞれ区分し,独立した油圧作動装置を設けているのは,システムの冗長性を重視した設計によるものである。
(4) エレボン(elevon)
 無尾翼機の後縁に取り付けられた昇降舵と補助翼の二つの役割をもつ操縦翼面。左右を別々に動かすと,補助翼として働き,機体を左右に傾け,左右を同時に動かすと,昇降舵として働き機体に前後の傾きをもたせる方式で,コンコルドなどの水平尾翼のないデルタ翼機にみられる。エレボンとは昇降舵(エレベーター)と補助翼(エルロン)とを合成した言葉。
(5) 水平安定板,安定板(horizontal stabilizer, stabilizer)
 厳密には主操縦翼面に含まれないが,重要な機能をもつ操縦翼面として挙げられる。ジェット輸送機では,縦方向のトリムをとるには水平安定板の取り付け角を調整して行うが,そのため操縦輪の片側に設けられたスイッチをパイロットが指で操作すると,油圧モーターにより駆動するスクリュー・ジャッキが動いて,安定板の取り付け角を機首上げ,または機首下げの方向に迅速にセットする。もし油圧が不作動の場合は電気モーターにより作動できる。777では,上記スイッチを操作すると,地上においては電気信号がACE(actuator control electronics)を経て,STCM(stabilizer trim control module)内の信号がPFC(primary flight computer)に入り,まずエレベーターが作動する。さらにエレベーターが作動を続けると,PFCは必要なトリム量だけスタビライザーを微動させてエレベーターとフェアになるようにする。
図1-4-4 777のスタビライザーの作動概要
2.二次操縦翼面(secondary control surface)
 操縦翼面の働きを補助し,またはトリムをとるために用いられる水平安定板,スポイラー,フラップなどを二次的な操縦翼面という。
(1) スポイラー(spoiler)
 主翼によって発生する揚力を減殺(スポイル)する目的を持つ操縦翼面であり,ふだんは翼面とピッタリ同一面になり,作動状態では翼面上方に開くように作られている。スポイラーを開くと,それまで翼表面に沿って流れていた気流が乱され,翼表面から剥れることによって,揚力が減殺されるとともに抗力が増加する。
 スポイラーの使用目的としては,
〈1〉 緊急降下時などで,できる限り早く降下したいとき,機首を下げて降下したのでは機速が増加しすぎ,許容された最大運用速度を超えてしまうので,これを避けるため揚力そのものを減殺し同時に抗力も増大させて,機体をそのままの姿勢で沈めてしまう感じで降下させる。この場合はスピード・ブレーキ・レバーを操作し,左右のスポイラーを対称にかつ希望の角度に立ち上がらせる
〈2〉 高速飛行時に,内側エルロンと併用される場合は,上にあがったエルロンの主翼側のスポイラーを開くことによって,その翼の揚力を減殺し機体を傾ける補助をする。この場合は通常のエルロン操作により行われる
〈3〉 接地後,速やかに揚力を減殺し,その結果,機体重量をできる限り大きく各車輪にかけてやり,ブレーキの効きを良くすることによって着陸距離を縮める働き
などがある。
 また,スポイラーは通常,主に飛行中の操縦に使用されるものと,離着陸時の滑走状態でのみ作動するものに分けられ,前者をフライト・スポイラー,後者をグランド・スポイラーと呼ぶことがある。ただし,上記の目的のうち,〈3〉については,できる限り揚力を減少させ,抗力を増大させることが望ましいので,接地後,直ちに両翼の全スポイラーが自動的に開くように設計されているのがふつうである。なお,飛行中にはグランド・スポイラーを作動させないのは,飛行中,両翼の全スポイラーを同時に開くことは不要であり,操縦にはフライト・スポイラーだけで十分であることが理由である。
 上記以外の特殊なスポイラーの使用例として,ダイレクト・リフト・コントロール(DLC:direct lift control)が挙げられる。DLCはロッキードL-1011に装備されており,進入着陸に際して飛行経路を維持するピッチ・コントロールの応答性を改善している。すなわち,着陸形態のL-1011がグライド・スロープの電波に乗って進入中,ピッチ・コントロールによりフライト・スポイラーの一部を対称に展開(わずかの角度)させ,揚力を直接コントロールしながら所定の進入経路を維持する方式である。なお,接地後は直ちにDLCが自動的に解除され,グランド・スポイラーの機能に切り替えられる。
図1-4-5 スポイラーと気流
(2) フラップ(flap)
 飛行機の高速化と離着陸性能の向上は,互いに相反する要求条件であるが,両者を妥協させる手段としてフラップが考案された。すなわち,高速性能を重視するジェット機では,抗力係数の小さい翼型が採用されるが,このような翼型は低速時に揚力係数も低下するため,結果的に離着陸性能が悪くなる。しかし,滑走路の長さには限度があるため,短い離着陸距離で運用するには,後縁フラップや前縁フラップなどにより,本来の翼型が発生し得る揚力係数よりも一時的に著しく大きな揚力係数を得る必要がある。これらのフラップを総称して高揚力装置(high-lift device)という。
 高揚力装置には,下記のように多くの種類があり,その飛行機の特性,あるいは設計目的に最適の形式のものが選ばれる。
a. 後縁フラップ,トレーリング・エッジ・フラップ(trailing-edge flap)
単純フラップ(plain flap)
 単にフラップとも呼ばれる初期の形式で,翼の後縁の一部を後ろ下方に折り曲げることにより,翼のキャンバーを増加させ,翼型の圧力分布を変えることにより揚力係数を増大させる。
スプリット・フラップ(split flap)
 前項と同じ原理に基づくフラップであるが,後縁の下面のみを折り曲げる形式である。DC-3型に用いられていた。
図1-4-6 各種のフラップ(1)
スロッテッド・フラップ(slotted flap)
 図1-4-7のように,フラップを下方に折り曲げキャンバーを増加させるとともに,フラップを少し後方に移動させて主翼本体との間にスロット(slot:隙間)をつくり,このスロットから主翼下面の圧力の高い空気をフラップ上面に導き,翼上面に沿って流れてきて勢いを失った空気にエネルギーを供給し,後縁近くの主翼上面での気流の剥れを防ぐことによって揚力係数を増加させるもので,機構が単純なわりに大きな揚力係数が得られるフラップである。
図1-4-7 各種のフラップ(2)
ファウラー・フラップ(fowler flap)
 図1-4-7のように,フラップをまず,ほぼ後方に滑らせ翼面積を増加させた後,ある程度後方に移動した時点からは,比較的急速に後ろ下方に折り曲がるように作られたフラップである。離陸時などで上昇性能を向上させるため,できる限り小さい抗力で大きな揚力の発生を要求されるときは,フラップはほぼ後方に移動しただけであり,キャンバーはそれほど増加しないが,翼面積の増加によって揚力を増大させる浅いフラップ角が用いられる。また,着陸時などで,着陸進入時の適当な降下角を得るため,さらに大きな揚力を得るとともに抗力をも大きくすることが要求されるときは,フラップは後方に移動したのち大きく後ろ下方に折り曲げ,揚力,抗力の双方を増大させる深いフラップ角が用いられる。なお,ファウラー・フラップは,その効果をより高めるため,後方に移動したときスロッテッド・フラップと同じように主翼本体との間にスロットができるよう設計されているのがふつうである。
727のファウラー・フラップが2度展張の状態
ダブル・スロッテッド・フラップ(double-slotted flap)
 スロッテッド・フラップの効果をより高めるため,図1-4-8のように,主翼とフラップの間にベーンと呼ばれるキャンバーの大きな小翼を設け,スロットが2カ所にできるように作られたフラップであり,ほとんどの場合,フラップ本体は,ファウラー・フラップの形式を取り入れ,より大きな揚力が得られるように考慮されている。
トリプル・スロッテッド・フラップ(triple-slotted flap)
ダブル・スロッテッド・フラップの効果をさらに高めたもので,フラップを三つの部分に分けることによって,スロットが3カ所にできるように作られたフラップである。この場合も,より大きな揚力が得られるように,ファウラー・フラップの形式を併用しているものが多い。
図1-4-8 各種のフラップ(3)
吹き出しフラップ(blown flap)
 民間機で実用された例はないが,スロッテッド・フラップをさらに強化したものと考えてよい。特別に用意された系統から圧縮空気を翼後縁の上面に吹き出して,空気流のよどみや渦をなくし,揚力係数を高めるとともに,失速迎え角を遅らせることができる。
図1-4-10 各種のフラップ(4)
b. 前縁フラップ,リーディング・エッジ・フラップ(leading-edge flap)
 翼の前縁の一部を,図1-4-9のように,下方に折り曲げる,あるいは前下方に反転させるもので,これにより翼のキャンバーを増し揚力係数を増加させる。これらのうち,前縁の一部を前下方に反転させる形式のものは,フラップを作動させたときに前縁フラップ自体にはキャンバーの変化をもたせないクルーガー・フラップ(Kreger flap)と呼ばれるものと,前縁フラップ自体にもキャンバーの変化をもたせ翼型全体としてのキャンバーをよりスムーズに変化させるバリアブル・キャンバー・フラップ(variable-camber flap)と呼ばれるものがある。
 また,翼の迎え角が大きくなるに従って,通常,前縁部にできるよどみ点は翼下面後方に移動し,そのため,翼下面側に流れる空気は小さい半径を持った前縁部を迂回しなければならないことになり,この空気は翼上面の途中で勢いを失い,翼の表面から剥れ,翼の失速の原因となるが,図1-4-9のように,前縁フラップを作動させることで,よどみ点が前縁フラップの先端近くに移動し,上面の流れをスムーズにすることによって失速の発生する時期を遅らせることができる。
図1-4-9 前縁フラップの作動と気流
c. スラット(slat)
 翼の前縁の一部を前方に押し出すことにより主翼本体との間にスロット(隙間)を作り,このスロットからの圧力の高い空気を翼上面に導くことによって,翼上面に沿って流れる気流の剥れを防ぎ,失速迎え角を増加させるとともに,得られる最大揚力係数を増大させるものである。
図1-4-11 スラット
動力高揚力装置(PHLS:powered high-lift system)
 主翼の前部にエンジンを装備して,その排気を翼の上面または下面に流し,揚力を得ようとするものである。通常の高揚力装置と異なり,低速時でも十分な揚力が得られ失速しにくい。主翼の上面に流す方式をUSB:upper-surface blowing方式といい,下面の場合をEBF:externally blown flap方式といっている。
 最近の飛行機では,ほとんどの場合,後縁フラップとともに前縁フラップ,スラットを組み合わせて装備しており,本来の翼型が発生し得る揚力係数よりも著しく大きな揚力係数が得られるように設計されている。このように前縁および後縁にそれぞれ高揚力装置を備えている機体では,前縁側の高揚力装置は後縁フラップに連動し,後縁フラップの開度に応じて前縁のそれぞれの高揚力装置が作動するように作られている。これは,どのフラップ角に対しても翼が最適な性能を発揮できるように設計されているためである。また,前に述べたように離陸時のように,揚力を大きくし抗力を小さくする必要のある場合は,浅いフラップ角を使用でき,また,着陸時のように揚力とともに,抗力をも大きくしたい場合は,深いフラップ角を使用できるように作られている。さらに,離陸時のフラップ角は2種類以上の選択をできるのがふつうであり,滑走路が短い場合は,離陸速度が小さく,したがって,離陸距離が短くてすむやや深いフラップ角を,また,滑走路が長い場合は,離陸距離は長くても,抗力が小さくなることによって離陸後の上昇性能を向上させる,より浅いフラップ角を使用できるように考慮されている。
表1-4-1 装備されているフラップの種類
(3) タブ(tab)
 昇降舵,補助翼および方向舵の後縁に取り付けられた小さな動翼で,各操縦翼面の操舵力を小さくしたり,あるいはトリムをとることにより,飛行中,パイロットの負担を軽くする。タブには下記のほか,舵面の“くせ”を修正するための固定タブもある。
トリム・タブ(trim tab)
 飛行機の飛行状態が変わっても,トリムをとることによって保舵力をゼロにするために用いるタブ。たとえば飛行速度を変えた場合は,舵の釣り合いも変化するので,当然パイロットは操舵して昇降舵を新しい位置に保持しようとするが,この保舵力を長く維持するには大きな負担がかかる。たとえば,タブを方向舵と逆方向に動かすと,方向舵のヒンジ回りに働くモーメントを相殺してパイロットは操縦力を加えることなく方向舵を釣り合い位置に保持できる。なお,トリム・タブは,コントロール・ホイールやラダー・ペダルなどとは別個の操縦装置(ノブなど)により操舵される。
コントロール・タブ(control tab)
 人力操縦装置で,大きい操縦翼面を小さな操舵力で動かすために用いるタブ。大型ジェット機の操縦翼面にはたらく空気力は大きく,通常は油圧で操縦翼面を動かしているが,万一の故障に備えて人力操縦方式でバックアップするため,コントロール・タブを有する機種がある。たとえば,パイロットがラダー・ペダルを操作すると,方向舵と反対方向にタブが動き,このタブに作用する空気力によって生じた,方向舵のヒンジ回りモーメントで方向舵を希望の位置に動かす。つまり操縦翼面は,パイロットが小さな操舵力で動かすタブを介して,間接的に操舵される。サーボ・タブと呼ぶこともある。
バランス・タブ(balance tab)
 作動の形態は異なるが,その目的はコントロール・タブによく似ており,大型ジェット機の人力操縦方式の場合に,操舵力を軽減するためのタブ。たとえば,パイロットがラダー・ペダルを操作し方向舵が動くと,方向舵の動きと逆方向にタブが動き,方向舵のヒンジ回りのモーメントを小さくして操舵力を軽減させる。つまり,操縦翼面に作用する空気力によって生じるヒンジ回りのモーメントを,タブに働く空気力によって,ほぼバランスさせてやるためのタブである。
アンチ・バランス・タブ(anti-balance tab)
 操縦翼面の効きを増し,操縦性をより強化させるために用いるタブ。コントロール・タブやバランス・タブは操縦翼面の操舵力を軽減できるが,これらは操縦翼面の動きと逆方向に動くので,タブを含む操縦翼面全体として効きが劣ることは避けられない。一方,操舵力を軽くすることは,人力操縦装置に頼る限り非常に重要であるが,動力操縦装置による場合,操縦翼面は常に油圧による動力操舵であるので操舵力は大きくなっても何ら支障はない。したがって動力操縦による場合で操縦翼面の効きを増強したいときは,タブを操縦翼面の動きと同方向に動くようにしたアンチ・バランス・タブ(anti-balance tab)が用いられている。
 第1世代から第2世代のジェット輸送機では,上記のタブがいずれかの主操縦翼面に用いられてきた。意外の感を持たれるかもしれないが,DC-8の昇降舵は最初から油圧操縦を用いず,コントロール・タブとバランス・タブによる手動操縦の方式をとっており,727および777の方向舵にはアンチ・バランス・タブが用いられている。しかし,動力操縦の設計進歩と油圧系統の冗長性の増加により,第3世代以降のジェット輸送機ではタブによる手動操縦のバックアップは不要とされ,またトリムについても各主操縦翼面の中立位置をシフトさせて行う方式となり,最近の大型ジェット機では特殊な場合を除き,タブは次第に姿を消しつつある。
3.制御系統(control system)
手動操縦装置(manual flight-control system)
 操縦装置に加えられた操舵力を用いて直接,各操縦翼面を操舵する形式の操縦系統。操舵力が比較的小さくてすむ小型機などで多く用いられている。
動力操縦装置(powered flight-control system)
 機体が大きく速度の速い現代の大型民間ジェット機では,人力では操縦がむずかしくなるので,油圧,圧縮空気,電気などを使用して各操縦翼面を動かしている。
人工感覚装置(artificial feeling device system)
 手動操縦装置では,各操縦翼面に作用している空気力がコントロール・ケーブルを介し操舵する操縦装置にフィードバックされることによって,パイロットは操舵の感覚を知ることができるが,動力操縦装置では単に油圧のコントロール・バルブ(制御弁)を開閉する信号を与えるだけにすぎず,操縦翼面に作用する空気力はフィードバックされないので,パイロットは,操舵感覚を得ることができなくなり,飛行機を操縦するうえで非常に具合が悪い。そこで,動力操縦装置を用いる場合は,人工的に操舵感覚を作り出す,いわゆる人工感覚装置が,系統の中に組み入れられるのがふつうである。
 この人工感覚装置は機体に作用する動圧の大小(速度の大小と考えてもよい),およびフラップ角の大小などにより,同じ操舵量に対しても異なった操舵力を与えるようにプログラムされており,たとえば各操縦翼面に作用する空気力が大きくなる高速飛行時に,方向舵を大きく操舵して機体尾部構造を破損させたり,逆に各操縦翼面に作用する空気力が十分に得られない低速飛行時に方向舵が十分に操舵されず,必要な操縦性が得られないといったことを防止している。
 なお,現代の民間ジェット輸送機ではこれら操縦系統は各操縦翼面に対して多重装備されているのがふつうであり,たとえば方向舵に対する第1の系統が故障した場合は第2の系統がバックアップし,さらに第2の系統も故障した場合は第3の系統がバックアップするように設計されており,運航の安全性を著しく高めている。
 図1-4-1213は操縦系統を模式的に示したもので,きわめて簡略化して描いてある。
図1-4-12 手動操縦装置の模式図
図1-4-13 動力操縦装置の模式図

 
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