CSR 航空機による大気観測
東北大学と取り組む観測

日本航空は、航空機を利用した大気観測という取り組みで、東北大学の温室効果気体に関する研究にご協力しています。 東北大学大学院理学研究科・大気海洋変動観測センターでは、大気と海洋を1つのシステムとみなして幅広い研究を行っていらっしゃいます。その中で大気中における温室効果気体の地球規模での変動の実態を明らかにする研究では、1979年に日本航空グループの国内定期便(日本航空と統合前の株式会社日本エアシステム。当時の社名は東亜国内航空)を利用して上空で二酸化炭素(CO2)濃度の観測(月に一度)を開始し、その後、メタンや一酸化二窒素など観測気体を増やしながら、30年以上に渡って観測を継続してきました。現在この観測は、温室効果気体の観測としては日本最長のデータレコード、航空機を利用した温室効果気体の観測としては世界最長のデータレコードとなっています。(2011年 東日本大震災により、観測は一時的に中断し、2012年1月より再開いたしました。)

CO2大気採集装置(手動ポンプおよび大気採集用容器)

エンブラエルE190

これまでに、観測に関わった航空機は以下のとおりです。

1979年1月 仙台=福岡 マクダネルダグラスMD−81型機、同MD−90型機
2008年6月〜2011年2月 マクダネルダグラスMD−90型機、ボーイング737−400型機
2011年3月11日 東日本大震災により、一時中断
2012年1月12日〜2017年1月18日 仙台=新千歳 ボンバルディアCRJ200
2017年1月18日〜現在 エンブラエルE190

観測のために

飛行中の観測(大気の採取)は東北大学の研究者により操縦室にて行なわれます。ここで採取する大気は航空機のエンジンから吸入され、その後、エアコンシステムを介して機内に取り込まれたものです。これらは、機外の大気と全く同じ成分であることがあらかじめ確認されていますが、機内でのエアコンの吹き出し口からの大気採取には、機体に合わせた特別な形状のアダプターを製作し、機内にいる人間の呼気の混入などが全くないようにしなければなりません。夜間に格納庫で整備中の航空機に立ち入り、機体への装置の装着方法等の十分な確認を事前に行うなど、実際に飛行中の観測に臨むまでには、研究者の皆さま、JALグループ社員を含む関係者のさまざまな努力がありました。

コックピット内の外気採集口

実際に航空機内にて上空の大気を採集している様子

観測の成果

この観測によって、北半球上空における温室効果気体濃度の変動の様子が初めて明らかになりました。 例えば、CO2濃度はどの高度帯でも冬から春にかけて高くなり、夏に低くなるという周期的な季節変化を伴いながら経年的に増加しています(図1)。 そのようなCO2濃度の増加は、私たち人類がエネルギーや食料の生産・消費のために石炭や石油、天然ガスといった化石燃料を大量に消費し、また資源の確保や食糧生産などのために森林を破壊したことによって生じています。 最新の統計によると、2010年には化石燃料消費と森林破壊によって、367億トンものCO2が大気に放出されたと推定されています。 このように大気に放出されたCO2はすべてが大気に残留するわけではなく、一部は森林と海洋によって吸収されています。 しかし、どちらにどれだけのCO2が吸収されているのかは十分に理解されているわけではなく、地球温暖化に対応する上で大きな困難となっています。

1999年からは、大気中の酸素(O2)濃度の観測も開始しました。 O2は温室効果気体ではありませんが、その変動はCO2濃度の変動と密接に関係しており、両者を同時に観測して組み合わせて解析することにより、森林と海洋のCO2吸収量を分けて見積もることがきます。 研究では、この11年間に日本上空で観測したCO2濃度とO2濃度を解析することによって、人類が放出したCO2の内、海洋が28%、森林が22% を吸収していることが明らかになりました。これらの結果は国際的に高い評価を得ており、航空機による観測なしには得られない成果です。

図1. 日本上空の各高度における大気中二酸化炭素濃度の変動

これからも日本航空は、環境分野での社会への貢献として、空から見る地球がいつまでも美しくあるように、このような環境分野への取り組みに積極的に貢献してまいります。

東北大学にて さまざまな温室効果気体濃度を
測定している様子

東北大学にて酸素濃度を測定している様子

東北大学の大気観測についての詳細は下記サイトをご覧ください。

東北大学大学院理学研究科 大気海洋変動観測研究センター 物質循環学分野

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