2017年2月:北海道・鶴居村にある、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ(運営:公益財団法人 日本野鳥の会)のスタッフが見つめる写真には、はっきりと、雪面に刻まれた複数のタンチョウの足跡がありました。 この写真が撮影された場所は、さる10月17日にJALグループのボランティア社員が、人工的な給餌に頼らない、タンチョウの自立した採食行動を目指して、ヘルメットを着用しノコギリなどを手に整備作業を行った、まさにその現場です。
【写真:足跡】JALグループ社員が作業を行った斜面にこの冬に見つかった、タンチョウの足跡
撮影:(公財)日本野鳥の会
10月17日(月)の釧路行きJAL541便で、東京・大阪から参加の10名を含む、社員有志13名が向かったのは、北海道・鶴居村(阿寒郡)。目的は、タンチョウの冬の採食地の環境整備です。 JALグループは「JALグループ生物多様性方針」を定め、生物多様性の啓発・保全活動に取り組んできました。これまでにも絶滅危惧種を機体に描いた「JALエコジェット・ネイチャー」の運航や、これまでに3回を数えたJALタンチョウフォトコンテストを通じた啓発活動により、生物多様性について保全の大切さをみなさまと共有してきました。
【写真:作業出発前】鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリを出発前に、
山田秀明 鶴居村副村長(写真:左)より、今回の取り組みに対する期待のお言葉を頂きました。
今回は、JALのシンボルである鶴丸のモチーフであるツルを守る、新たな環境保護活動として、タンチョウの冬場の採食地の環境整備活動に取り組んできました。
現在、タンチョウは北海道内でも1800羽を越えるといわれていますが、一方で主に釧路・根室地域に集中して分布しており、過密化した給餌場では伝染病が蔓延するリスクが高まるなど、好ましい生息状況ではありません。さらに、タンチョウは国の特別天然記念物であるため、人間から危害を加えられることなく生息してきました。近年では人間とタンチョウの生活圏が重なることで、農業被害やタンチョウと自動車との接触事故などが発生しています。
このような状況を受け、2016年7月に環境省は、これまで継続してきた鶴居村・釧路市内の3大給餌場での給餌を将来的に終了する方針を示しました。今後は、タンチョウが給餌に頼らず、自力でエサを摂ることが出来る場所や機会を増やすことがより一層重要になっています。
【写真:作業風景】ボランティア社員が、カマで笹を刈り、ノコギリで立木を間引いて、
タンチョウのための移動スペースを確保しました。
今回の活動では、公益財団法人日本野鳥の会が運営する、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリのレンジャーの方々のご協力を頂き、広大な牧草地と、林の中の小川を結ぶ動線上で、笹の刈り取りや、倒木の除去などを行いました。タンチョウは体が大きく翼を広げると2mを越える大きな鳥。このため、空から立ち木が密集した林などに降り立つことはできず、牧草地などの開けた場所に舞い降りてから、エサを周辺で徒歩で探します。
【写真:餌場に訪れたタンチョウ】作業を行った場所を流れる沢の辺りにタンチョウが確認されました
(2017年2月17日午前8時58分の記録画像)センサーカメラによる撮影:(公財)日本野鳥の会
今回の活動は、タンチョウが地上でスムーズに移動できるよう、程よい空間・通路を確保することが目的です。
参加した社員は、ヘルメットと長靴を身に着けて林に分け入り、自然保護活動に精通したレンジャーの指示を受けながら、作業を行いました。予め指定された立ち木をノコギリで切り倒したり、水路を覆う倒木を除去し、また、カマで生い茂った笹を刈り取るなどの作業に汗を流しました。この作業現場では、産卵のために遡上したサケや倒木に生えたキノコなども見られ、参加者はレンジャーからの説明で、生態系の中で命をつないでゆく役割がそれぞれの生きものにあり、生命の営みが繋がっていることを学びました。
【写真:自然観察】作業の合間には自然観察の時間も設けられ、レンジャーの方々に
現場で見られたサケやキノコなどを例に、生命の繋がりについて解説頂きました。
「このボランティア活動に参加して、タンチョウや自然保護に関心が膨らんだ。」
「今後、タンチョウが自らの力で暮らしていけるように、中長期的な視点でこの活動を継続すべきと思う。」
「自然保護活動は一過性のものではなく、地道な活動としてでも継続をすることが絶対大事であると感じました。」
などの声が多数聞かれました。
【写真】(公財)日本野鳥の会 レンジャーのみなさんと一緒に。
タンチョウを守る活動が社員自身の心にも大切な気づきを残し、環境保全に加えて啓発活動としても大きな役割を果たしました。
JALグループは、今後も生物多様性の保全に向けた啓発・保護活動に積極的に取り組んでまいります。
【写真:タンチョウのモビール】作業を終えたJALグループ社員がそれぞれの思いをつづったカードを、
モビールとして同サンクチュアリのネイチャーセンター館内に展示していただきました。