日本を代表するアーティストの一人、MISIAさん。
近年は音楽活動に加え、アフリカを支援するプロジェクトChild Africa、COP10(国連生物多様性条約第10回締約国会議)名誉大使、持続可能な地球規模の活動をめざす一般財団法人mudefなど、社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。
そのエネルギーの源や思いはどのようなところにあるのか、最新アルバム「MISIAの森 -Forest Covers-」のリリースを前にMISIAさんにお尋ねしました(聞き手は、日本航空 総務部CSR環境担当の大高由恵)。
JAL
JALも、昨年から生物多様性の啓発活動を実施してきました。何で航空会社が生物多様性?と思われる方も多分沢山いらっしゃるだろうと思います。当初私たちもどういう風に関わっていけばいいのだろうと考えて、試行錯誤しながら進めてきたのですが、いろいろな方々のお話を伺ったり、知識を深める中で、少しずつつながりが分かってきたんですね。
世界各地の自然は本当に様々で、文化はその土地の自然に根付いたものですよね。旅行に行かれる方々は、皆さん全世界が同じ自然で、同じ文化だったら多分行かない訳で、違うものを見に行く、違う文化に身を置きに行かれるんだと思うのですね。そういう意味で、文化の多様性のもとである自然の多様性とか、生物多様性っていうのは、実は航空会社にとっても、事業の上で大事なものではないか、と。それが分かってきて、ますます生物多様性というものを大切にしなければいけない。航空会社としてできることは少ないんですが、お客様にお伝えしていけたらいいなと考えて、今行動しているところです。
MISIAさんは昨年からCOP10名誉大使を務めていらして、生物多様性に関するさまざまな活動をされていますけれども、世界の、或いは日本の生物多様性の現状について、どんな風にお考えですか?
MISIA
そうですね、世界中で推定で年間4万種といういきものが絶滅しているという現実があり、また日本でも生物多様性が失われつつある、または失われてしまったという現実はあると思います。けれども昨年、石川県羽咋市神子原地区の棚田で、減農薬でお米を育てている地域に視察に行かせて頂いたとき、そうやって農薬を減らしていくことによって、一時は姿を消していた生きものが戻ってきているというお話を聞いて。確かに生物多様性が失われてしまったり、失われつつある現実はあるけれども、まだ間に合うことがあるんだなあっていうことを、その時強く思いました。もう遅いのではなくて、今から取り組んでいくっていうことが、大事だと思います。
JAL
そうですね。そういう意味では、まだ生物多様性のことについてあまりご存じない方も沢山いらして、例えばMISIAさんが活動の中で色々なことを知らせることで、「ああ、減農薬にすることで、種がまた戻ってくることもあるんだ」って知って頂くことだけでも、価値がありますよね。伝えていくということは、本当に大事なことですね。
MISIA
そうですね。でも、その食べ物がとってもおいしかったり、自分の身体で実感してみて、環境にいいことは自分の体にもいいことなんだって実感できると、またより身近な問題として捉えていくことができるのではないかなと思います。
JAL
単純に自然のことを自然(動植物や地球環境)のためだけとして捉えるのではなくて、それが人間にとっても非常に気持ちが良かったり、おいしかったり、幸せな気持ちになったりっていうことを感じることなんでしょうね、きっと。
MISIA
少しずつそういう活動を通して、自分もその自然の一部であるっていうことを思い出せるのかなっていう気がします。
JAL
昨年のCOP10は非常に難しいのではないかと言われている中、実際に難航しながらも、結果的には大変大きな成功を収めましたね。私たちもわずかではありますが、認知向上に努めてきたこともあって、その成功をとても嬉しく思ったのですが、名誉大使としてCOP10の成功についてどう感じられましたか。また、COP10での成果物が、今後どのように生物多様性保全に役立っていくことを期待されますか。
MISIA
そうですね、まず本当にCOP10が成功して、名古屋議定書が採択されて、とても嬉しかったです。ただこれで終わりではなくて、これから、法律や政策を定めて、それを実施していくということがとても大事だと思います。それにはみんなで、国もそうですが、企業や個人でできることを見つけて、損失を止めるということを皆でやっていく必要があるなと。そのためには、まだ日本でも生物多様性の認知が高いとは言えない状況ですので、名誉大使として、これからもその重要性を伝えていきたいと思っています。
JAL
そこから伝えて、それを知って…COP10をきっかけにして、2020年に向けて、そこから本当に活動が始まるっていう感じですよね。
MISIA
はい、これから。今年からですね。生物多様性の10年が始まります。
JAL
そうですね。