JALグループでは、航空会社ならではの環境社会活動にも力を入れています。そのひとつが、「森林火災の発見通報」です。
シベリアやアラスカの北方針葉樹林、インドネシアの熱帯林などの豊かな森林は、人間の出す二酸化炭素(CO2)を吸収して酸素を生みだし、地球の大気環境を保つ役割を果たしています。しかし、その森林で火災が発生すると、樹木、下草や落ち葉だけでなく、土壌の有機物が燃え、長年蓄積した炭素を大量に放出します。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書」によると、1年間に排出されるCO2量は、人間活動によるものが260億トンであるのに対し、森林火災では62 〜 150億トンに上ると推定されています。森林火災の影響がいかに大きいかがわかります。
森林火災の原因は、落雷などによる自然発火のほか、人為的な失火などさまざまです。北方森林は広大で、火災を見つけることすら簡単ではありません。たった1回の落雷がきっかけで東京都と同じ広さの森が燃えることもあり、地域によっては小型飛行機でパトロールをしています。また、消火活動も通常とは異なり、ときにはパラシュートで、またときには道を切り拓きながら、火災現場へと向かいます。
森林火災の影響を最小限に留めるには、小さいうちに火を見つけ、延焼を予測し、効率的に消火することが必要です。そのため、人工衛星による森林火災検知システムを、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とアラスカ大学国際北極圏研究センター(IARC)が行っています。ただ、700 km上空の衛星からすべての火災を正確に見つけるのは容易ではないため、JALはこの研究チームの要請に応じ、火災が多発する夏の間、シベリアやアラスカなどの上空を運航中のパイロットが火災を発見した場合に、情報提供をする活動を2003年より始めました。パイロットから報告された情報を、研究チームは衛星による赤外線画像と照合し、システムの精度向上を図っています。2009年度までの7年間で、合計918件の情報提供を行ってきました。
JALの発見通報は直接的な消火活動につながるものではありませんが、この火災検知システムが高精度になれば、効率的な消火活動ができ、火災を最小限に留める効果が期待されています。今年も7月より観測を開始し、今日もJALのパイロットが空の上から地球環境を見守っています。
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「JALと環境」ホームページでは、さまざまな取り組みを紹介しています。
「空から見守る地球の自然」コーナーで、森林火災通報についても詳しく説明していますので、どうぞご覧ください。