「これまでのジェット燃料と変わらないパワーを発揮してくれました。早くお客さまをお乗せして飛びたいですね」
2009年1月30日に実施されたバイオジェット燃料を用いたデモンストレーションフライト「JALバイオ・フライト」で、操縦桿を握った小林啓二機長は、こう感想を語りました。
これは、JALが航空機メーカーのボーイング社、エンジンメーカーのプラット&ホイットニー社などと共同で、植物を原料として環境に配慮した代替燃料の開発促進を目的に実施したものです。旅客機がバイオジェット燃料で飛行したのは、今回が世界で4例目、アジアでは初めてのことでした。
当日、羽田空港から飛び立ったボーイング747-300型機は、仙台市沖上空を飛行して約1時間半で羽田へ戻り、「JALバイオ・フライト」は成功をおさめました。このフライトに使用したバイオ燃料は、いずれも非食用植物のアブラナ科のカメリナ(84%)・落葉低木ジャトロファ(15%)・藻(1%)が原料で、従来のジェット燃料ケロシンと1対1の割合で混ぜた「混合バイオジェット燃料」です。特にカメリナを主原料としたフライトは世界初、フライトでは4基あるエンジンのうち、第3エンジンに使用されました。
自動車は電気で走るものが開発されていますが、航空機はまだ電気で飛ぶことはできないため、バイオ燃料に大きな期待が寄せられています。ただ、さとうきびなどの食料から作られる第一世代バイオ燃料は、食糧危機や生態系破壊の可能性が危惧されています。一方、今回使用したような、非食用で地球環境に大きな負荷を与えずに生産可能なものを第二世代バイオ燃料といいます。バイオ燃料は、機体やエンジンに特別な改造を加える必要がない、将来に至るまで持続的に供給可能、生育の過程でCO2を吸収しフライト時の排出分を相殺するため環境負荷が小さい、といった優れた特性があります。
JALでは、この成功の後も、日本国内におけるバイオジェット燃料ワークショップ(作業部会)を開催するなど、実用化に向けて、社会の理解を得るためのさまざまな啓発活動を行っています。こうした活動を通じてバイオジェット燃料の実用化を促進することにより、地球温暖化防止に貢献するとともに、航空業界の持続可能性を追求しています。何年か後には、きっと航空機はいまよりずっとエコでクリーンな乗り物になっているはずです。どうぞご期待ください。
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JALグループは、地球と共生し、次世代に豊かな環境を残すため、さまざまな地球環境プロジェクトを実施しています。「JALと環境」ホームページでは、その活動を紹介しています。ぜひご覧ください。