航空事故・重大インシデントの概要とその対策
過去に発生した事例と、その後の対策をご説明します。
2012年度
航空事故
航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災などの事態が該当し、国土交通省が認定します。
日本航空877便の揺れによるお客さまの負傷
概要
2012年11月26日、JAL877便(成田国際空港発上海行き)は、巡航中気流の乱れによる揺れにより、1名のお客さまが右足甲を骨折されました。
原因究明など
国土交通省運輸安全委員会により調査が行なわれ、その結果が2014年5月30日付けで公表されました。報告書によると、本件は同機が大気の乱れに遭遇し、機体が揺れたことによると推定されております。また、この大気の乱れの発生を予測することは困難であったものと考えられる、と述べられています。
重大インシデント
航空事故には至らないものの、事故が発生するおそれがあったと認められるもので、滑走路からの逸脱、非常脱出、機内における火災・煙の発生および気圧の異常な低下、異常な気象状態との遭遇などの事態が該当し、国土交通省が認定します。
日本エアコミューター3635便への滑走路進入許可発出
概要
2012年7月8日、福岡空港において、小型飛行機(セスナ機)が着陸許可を受けて進入中、管制官が日本エアコミューター3635便(福岡空港発/宮崎空港行き)に対して滑走路に入って待機するよう指示し、当該便は滑走路に進入、直後に管制官は小型飛行機が滑走路に向けて飛行しているのに気付き、小型飛行機に着陸のやり直し(着陸復行)を指示するという事例が発生しました。本件は「他の航空機が使用中の滑走路への着陸の試み」に該当するとして、国土交通省より「重大インシデント」に認定されました。なお、お客さまおよび乗員に怪我はございませんでした。
原因究明など
国土交通省運輸安全委員会により調査が行なわれ、その結果が2013年4月26日付けで公表されました。報告書によると、管制官が小型機の存在を一時的に失念したことが原因と推定されております。
日本航空1471便のエンジン不具合
概要
2012年10月20日、日本航空1471便(東京国際空港発/松山空港行き)は、東京国際空港(羽田)を離陸上昇中、左右の軽い横揺れが発生し、続いて左側エンジンの排気温度計が急に上昇したため当該エンジンを停止し、管制機関に緊急事態を宣言のうえ、東京羽田空港に着陸しました。
到着後の点検の結果、当該エンジンの高圧タービン、低圧タービン、高圧圧縮機に損傷が認められました。この破損は、航空法施行規則に定める「発動機の破損(エンジンの内部において大規模な破損が生じた場合)」に相当するため、国土交通省により本件は重大インシデントと認定されました。なお、お客さまおよび乗員に怪我はございませんでした。
原因究明など
国土交通省運輸安全委員会により調査が行なわれ、その結果が2015年10月29日付けで公表されました。報告書によると、左エンジンの第5段高圧コンプレッサー(HPC)の全ブレード先端がHPCケースに接触したため、ブレードの根元に強い負荷が加わって亀裂が生じ、飛行サイクルに伴う繰り返し荷重により亀裂が進行し、連鎖的な全ブレード破断に至るブレードの破断が 発生したことで、エンジン内部の大規模な破損に至ったものと推定されます。
第5段HPCの全ブレード先端がHPCケースに接触したことについては、第5段HPC ケース最下部の空洞に水がたまった影響により第5段HPCブレード先端とケースの間隔が狭くなったことに加えて、本重大インシデント発生時に第5段HPCブレード先端とケースの間隔が何らかの原因で通常より狭い状態になっていた可能性が考えられます。
対策
国土交通省運輸安全委員会により調査が行なわれ、その結果が2015年10月29日付けで公表されました。報告書によると、左エンジンの第5段高圧コンプレッサー(HPC)の全ブレード先端がHPCケースに接触したため、ブレードの根元に強い負荷が加わって亀裂が生じ、飛行サイクルに伴う繰り返し荷重により亀裂が進行し、連鎖的な全ブレード破断に至るブレードの破断が 発生したことで、エンジン内部の大規模な破損に至ったものと推定されます。
第5段HPCの全ブレード先端がHPCケースに接触したことについては、第5段HPC ケース最下部の空洞に水がたまった影響により第5段HPCブレード先端とケースの間隔が狭くなったことに加えて、本重大インシデント発生時に第5段HPCブレード先端とケースの間隔が何らかの原因で通常より狭い状態になっていた可能性が考えられます。
本事象発生後、以下の対策を行っています。
エンジン製造者が実施した措置:
2014年2月28日、HPC第5段ブレードとHPCケースの感覚を広げる設計変更を行いました。
当社が実施した措置:
機体に装着されている当該型式全エンジンについて、HPCを含めたエンジン内部の内視鏡検査等により、当該不具合が発生しない状況であることを確認しています。

日本エアコミューター3745便着陸後、滑走路から離脱前にヘリコプターが離陸
概要
2012年10月31日、日本エアコミューター(JAC)3745便(鹿児島空港発/屋久島空港行)が屋久島空港に着陸した後、離陸に備えて滑走路に進入したヘリコプターが、JAC機の滑走路離脱前に離陸する事例が発生しました。本事例は、国土交通省により「他の航空機が使用中の滑走路からの離陸」に該当するとして、重大インシデントと認定されました。なお、お客さまおよび乗員に怪我はございませんでした。
原因究明など
国土交通省運輸安全委員会により調査が行なわれ、その結果が2013年12月20日付けで公表されました。報告書によると、ヘリコプターの機長が、滑走路上に航空機はいないと思い込んだため、周囲の安全確認を行わないまま滑走路に進入したこと、およびその結果、突然滑走路上でJAC機と対面したことにより冷静な判断ができなかったことが原因とされています。
日本航空2837便の滑走路逸脱
概要
2012年12月25日、日本航空2837便(新千歳空港発/花巻空港行き、ジェイエア運航)は、花巻空港に着陸した後、減速中に前輪が滑走路から逸脱して停止いたしました。本事例は、国土交通省により「滑走路からの逸脱(航空機が自ら地上走行できなくなった場合)」に該当するとして、重大インシデントと認定されました。なお、お客さまおよび乗員に怪我はございませんでした。
原因究明など
国土交通省運輸安全委員会により調査が行なわれ、その結果が2015年4月23日付けで公表されました。報告書によると、着陸した際、接地後の地上滑走において進行方向を維持することが出来なかったため、滑走路を左側に逸脱したことによるものと考えられます。同機が進行方向を維持することができなかったのは、氷点に近い気温における降雪により、雪氷調査時より滑りやすい状態であった滑走路において、機長がラダーペダルを急に踏み変えたことによるものと考えられます。
対策
本事象の発生後、ジェイエア(運航会社)では、以下の対策を行っています。
- 全運航乗務員に対して、"滑走路面の状態に関する最新の情報入手に努めること"、"機首の偏向に対応する場合は極力急激なラダー操作は避けること"、"ブレーキングアクションが低い滑走路状態においては、アイドルリバースを積極的に活用すること"について注意喚起を実施。
- 全運航乗務員に対して、より厳しい条件下での雪氷滑走路への着陸操作に関するシミュレーター訓練を実施。
- 全運航支援者に対して、"最新の雪氷滑走路状況の確認と運航乗務員への確実な情報伝達"、"飛行場管理者とのきめ細かな連絡、調整の徹底"に関する注意喚起を実施。