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航空事故・重大インシデントの概要とその対策

過去に発生した事例と、その後の対策をご説明します。

2015年度

航空事故

航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災などの事態が該当し、国土交通省が認定します。

日本航空3512便の右エンジン不具合に伴う緊急脱出

概要

2016年2月23日、日本航空3512便(新千歳空港発/福岡空港着)が新千歳空港の誘導路を地上走行中、右エンジンに不具合が発生しました。煙が機内に入ってきたため、緊急脱出を実施、その際に3名の女性のお客さまが負傷されました。診察の結果、うち1名の骨折が判明しました。

原因究明など

本件は、国土交通省運輸安全委員会による調査が行われ、2017年12月21日に航空事故調査報告書が公表されました。
報告書によると、「激しい降雪に伴う地上走行待機中に、機内において異臭及び煙が発生し、その後、第2エンジン後部の炎が継続したことから、同機が緊急脱出を行った際、脱出スライドで降下した乗客が腰から着地し、重傷を負ったことによるものと考えられる。機内において異臭及び煙が発生したこと及び第2エンジン後部の炎が継続したことについては、急激な天候悪化により強い降雪(Heavy Snow)となり、ファンブレード及び低圧圧縮機に着氷したため、エンジン内部にエンジンオイルが漏れ(*1)、そのオイルが霧状となって機内に流入した(*2)こと、及び漏れ出たエンジンオイルがテールパイプに溜まり、発火したことによるものと考えられる。」と述べられています。

加えて、今後必要とされる再発防止策として、緊急脱出時の安全情報について、「その設定理由とともに周知し、より確実な理解と認識を促す方法を検討することが望ましい」と述べられています。

*1 当該着氷により空気の流路が一部塞がれ、エンジン内へ流れる空気量が不足しエンジン内部軸受け部周辺の圧力が減少、この結果エンジンオイルが当該軸受け部から外側に漏れ出たと考えられる。

*2 機内の空調装置はエンジンに取り込まれた空気の一部を使用していることから、漏れたオイルが混入し霧状となって機内に流入したことにより、機内で異臭が発生し煙のように見えたと考えられる。

対策

本事故発生後、当社では以下の対策を講じています。

  • エンジンへの着氷及び異臭への対策
    • 運航乗務員に対し、事例周知を行った。また、再発防止のため、同型機において基準の明確化や手順の変更を実施しました。
    • 地上運航管理者に対し、予期しない強い降雪など気象状況の急変を察知した場合には、積極的に運航乗務員へ通知するように周知を行いました。
  • 緊急脱出への対策
    • 機内安全ビデオについて、緊急脱出時に手荷物は持たないことと、脱出スライド下での脱出援助の協力の内容について、さらにご理解頂けるような内容に改訂しました。今後も、緊急脱出時の安全情報へのご理解を一層深めて頂けるよう、取り組んでまいります。
    • 客室乗務員に対する訓練において、手荷物を持ったお客さまが殺到した場合の対応等に関わる訓練を強化しました。
    • JALグループ全社員に対して、緊急脱出時の客室乗務員への協力についての教育を実施しました。また、緊急脱出時に、適切にお客さまの援助が出来るよう、「JALグループ緊急脱出研修」を実施することとしました。

重大インシデント

航空事故には至らないものの、事故が発生するおそれがあったと認められるもので、滑走路からの逸脱、緊急脱出、機内における火災・煙の発生および気圧の異常な低下、異常な気象状態との遭遇などの事態が該当し、国土交通省が認定します。

日本航空455便の着陸復行

概要

2015年4月5日、日本航空455便(羽田空港発/徳島空港行き)が、管制塔からの許可を得て着陸しようとしたところ、前方の滑走路上に車両がいることに気づき、安全のため回避操作を行い、着陸をやり直しました。本事例は、国土交通省により、事故につながる恐れのある重大インシデントと認定されました。なお、お客さまおよび乗員に怪我はございませんでした。

原因究明など

本件は国土交通省運輸安全委員会による調査が行なわれ、2016年8月25日、航空重大インシデント調査報告書が公表されました。報告書によると、徳島飛行場管制所の飛行場管制席が、作業車両の存在する滑走路への着陸を日本航空機に許可したため、同機が着陸を試みたことによるものと推定されます。徳島飛行場管制所の飛行場管制席が同機に着陸を許可したことについては、飛行場管制席及び地上管制席の業務を兼務していた航空管制員が、作業車両の存在を失念したことによるものと考えられます。

他社機の離陸中断後の日本トランスオーシャン航空610便の滑走路への着陸

概要

2015年6月3日那覇空港において、全日本空輸1694 便が離陸滑走中、管制官の許可を受けずに離陸した航空自衛隊機が前方を横切ったため、離陸を中止しました。その際、同滑走路へ進入中の日本トランスオーシャン航空610 便に対し、管制官が着陸のやり直しを指示しましたが、全日本空輸1694便が同滑走路を離脱する前に、日本トランスオーシャン航空610 便が同滑走路に着陸しました。お客さまおよび乗員に怪我はございませんでした。本事例は、「他の航空機が使用中の滑走路への着陸」事例として国土交通省により重大インシデントと認定されました。

原因究明など

本件は国土交通省運輸安全委員会による調査が行われ、2017年4月27日、航空重大インシデント調査報告書が公表されました。報告書には、「全日本空輸機が同滑走路から離脱する前に日本トランスオーシャン航空機が着陸したことについては、日本トランスオーシャン航空機がフレアー(引き起こし)を開始した際に機長は、全日本空輸機が同滑走路に存在することを認識したが、タワーから着陸を許可されていた中で、全日本空輸機の動向が確認できなかったものの、機長の経験及び同機の着陸性能から、安全に着陸できると機長が判断したためと考えられる。さらに、その判断には、機長が同滑走路上空を横断した自衛隊機の動向を予測できなかったことも関与した可能性が考えられる。また、タワーが復行を指示したものの、日本トランスオーシャン航空機が同滑走路に着陸したことについては、日本トランスオーシャン航空機が同指示を受けた時点で既に同滑走路に接地し、エンジンの逆推力操作が行なわれていたためと考えられる。」と述べられています。

対策

本事故発生後、日本トランスオーシャン航空は、以下の対策を講じています。

  • 当該運航乗務員に対する教育、訓練および審査の実施
  • 全運航乗務員に対する再発防止策
    - 離着陸時のATCを含む監視の重要性に関わる注意喚起
    - 2015年度夏期安全キャンペーン期間中の管理職乗務職による注意喚起、ミーティングにおける事例の振り返り
    - 2016年度定期訓練における接地直前または接地後の着陸復航についてのシミュレーター訓練

日本トランスオーシャン航空002 便 機内与圧の低下

概要

2015年6月30日、日本トランスオーシャン航空002 便が種子島近傍を巡航中、客室与圧が低下したため、管制上の優先権を要求し高度約3,000mまで降下する事例が発生しました。その後、同機は目的地の関西国際空港に着陸しました。お客さまおよび乗員に怪我はございませんでした。本事例は、「航空機内の気圧の異常な低下」事例として国土交通省により重大インシデントと認定されました。

原因究明など

本件は国土交通省運輸安全委員会による調査が行われ、2017年10月26日、航空事故調査報告書が公表されました。報告書には、「左エンジンの抽気空気(*1)の温度を下げる冷却空気制御バルブの不具合(*2)により、抽気空気の温度が上昇したと推定される。しかし、温度上昇を感知する装置(450°Fサーモスタット)が故障(*3)していたため、抽気空気の流量が制御されずに温度が更に上昇し続け、異常な高温を感知して抽気を遮断する装置(490°Fスイッチ)が作動し、左側の抽気空気の供給が停止したと推定される。左エンジンの抽気空気の供給が停止したため、右エンジン抽気系統の負荷が増えたと考えられる。その後、左エンジンと同様に、冷却空気制御バルブの不具合により抽気空気の温度が上昇し、温度上昇を感知する装置(450°Fサーモスタット)が故障していたため温度が上昇し続けた結果、右側の抽気空気の供給も停止したと推定される。」と述べられています。

*1 エンジンのコンプレッサーより圧縮された空気の一部を取り出したもの。機内の与圧に使用される。
*2 バルブの劣化により、温度センサーからの入力に対して冷却用空気の流量が不足する不具合が確認された。
*3 当事象の発生前に故障が生じていたと考えられるが、抽気が正常に冷却されている状態では本装置は機能しないため、通常の定期点検で故障は発見されなかった。

対策

本事故発生後、日本トランスオーシャン航空は、以下の対策を講じています。

  • 冷却空気制御バルブの健全性を確認する緊急点検を実施し、さらに4,000飛行時間ごとの繰り返し検査を新たに設定
  • 抽気空気の温度感知装置(450°F サーモスタット)を改良型へ改修し、さらに16,000飛行時間ごとの定期交換と検査を新たに設定

※日本航空が保有する737-800型機においても、同種の不具合に対する予防策を講じています。

日本航空38便 誘導路上での離陸操作開始

概要

2015年7月12日(日)、シンガポール国際空港において、日本航空38便が誘導路上で離陸操作を開始した事例が発生しました。滑走路誤認に気付いた機長により離陸操作が中断され、ほぼ同時に管制から停止の指示も出され、誘導路上に停止しました。お客さまや乗員に怪我などはございませんでした。本件は7月31日シンガポール当局および国土交通省より重大インシデントに認定されました。

原因究明など

本件は、シンガポール事故調査委員会(Air Accident Investigation Bureau:AAIB)により調査が行われ、2016年8月、調査報告書が公表されました。報告書における考察は以下のとおりです。
当該機は、地上走行に際し、管制から"誘導路中心線灯(グリーンライト)上を走行せよ"と指示された。しかし、副操縦士は駐機場から滑走路までの経路を独自に想定し、外部の標識、マーキング等を確認することにより自機の位置を把握することを行わなかった。このため管制が地上走行経路を言葉でも伝えることは有益である可能性がある。
また、管制から「通過時間帯を指定されたポイントを通過するためには、何時までに離陸すれば間に合うのか」を確認された運航乗務員は、「何時以降に離陸すれば許可された時間帯で通過できるか」と確認されたと誤認し、違和感を覚えたもののそのことについて管制に確認しなかった。管制も、運航乗務員が返答した時刻から乗務員が質問を誤解したことに気づくことができた可能性はあった。
誘導路の交差路の先に、誤って進入させないために停止線灯(レッドライト)が点灯されていたが、当該機の進入を防げなかった。管制官は、誘導路を走行中に滑走路へのラインアップ許可と離陸許可を同時に発出していた。航空機が正しい出発滑走路に向かっていることが確認できるまで離陸許可が発出されていなければ、誘導路を出発滑走路と誤認することは避けられたかもしれない。

対策

本事故発生後、管制機関および当社では、以下の対策を行っています。

【当社が実施した対策】

  • 運航乗務員に対して、「報告の重要性」、「疑問の解消・確認の重要性」、「規定類遵守の重要性」等の周知を実施。
  • 新たな「タクシー・プロシージャー(地上走行の手順)」の導入。
  • 規定の重要性、規定から逸脱した場合のリスクに関する教材を作成し、安全討議を実施。
  • ノン・テクニカル・スキル(※1)、特にMCC(マルチ・クルー・コオペレーション(※2)に関する知識レビューのe-learningを実施。

※1:航空機の操縦やシステムの操作、プロシージャーなどと直接には関わらないものの、航空機のオペレーションに必要な認知、判断、対人に関わるスキル
※2:運航乗務員が協力し、機長のもとでチームとして機能すること

【管制機関が実施した対策】

  • この事例から学んだ「運航乗務員が平行誘導路を滑走路と間違えている可能性、特に滑走路まで旋回を繰り返して地上走行する必要がある場合には注意」、「ラインアップの許可と離陸許可とは、同時に発出しないことの推奨」、等の教訓を共有。
  • 事象が発生したエリアを"要注意エリア"に分類し、空港チャートに明示。

日本航空651便の着陸復行実施について

概要

2015年10月10日(土)鹿児島空港において、日本航空651便が着陸許可を受けて滑走路に向け進入降下中、他社小型機が進入コースの前方に入ってきたことを認めたため、乗員が着陸復行を実施する事例が発生しました。本事例は、機長より、航空法第76条の2の規定に基づき「機長報告(異常接近報告)」が提出され、国土交通省により重大インシデントと認定されました。

原因究明など

本件は国土交通省運輸安全委員会による調査が行われ、2016年12月15日、航空重大インシデント調査報告書が公表されました。報告書によると、小型機の機長が日本航空機の前を飛行していた他社のDHC-8型機を関連先行機と取り違えたため、小型機がDHC-8型機に続いて最終進入経路に進入し、後続する日本航空機と接近したことによるものと考えられます。

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