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航空事故・重大インシデントの概要とその対策

過去に発生した事例と、その後の対策をご説明します。

2019年度

航空事故

航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災などの事態が該当し、国土交通省が認定します。

日本エアコミューター3763便の揺れによる客室乗務員の負傷

概要

2019年10月12日、日本エアコミューター3763便(鹿児島空港発 種子島空港行)が降下中に突然の揺れに遭遇した際に客室乗務員が転倒し、右足首を負傷しました。15日の精密検査の結果、右足後果骨折が判明し、同日、国土交通省航空局より航空事故と認定されました。なお、お客さまにお怪我はございませんでした。

原因究明など

本件は、国土交通省運輸安全委員会による調査が行われ、2021年7月29日に事故調査報告書が公表されました。報告書には、「本事故は、同機が突然動揺したため、機内通路を移動していた客室乗務員が姿勢を崩して転倒し、負傷したものと推定される。同機が突然動揺したことについては、同機が局地的な風向風速の変化に遭遇した後、運航乗務員によるVMO*超過の回避のための機首上げ操作および速度の増加に伴う機首上げ効果により機体姿勢が大きく変化したことによるものと考えられる。」と述べられています。
*VMO:運用限界速度

対策

本事故発生後、日本エアコミューター社では以下の対策を実施しました。

  • VMOに接近あるいはVMOを超過した場合の操作に関して周知文書を発行。
  • 風や外気温の急変によりVMOに接近することが予想される場合には、早めにVMOに対して余裕のある速度の選定。
  • VMOに接近またはVMOを超過した場合には、自動操縦装置を使用して速度を修正。
  • 手動操縦による減速操作は急激なピッチ変化を引き起こす恐れがあるため、自動操縦装置が明らかに速度の修正をしていないと判断したときのみ実施
  • PFおよびPMが同時に手動操縦することの禁止(PF/PMは、VMOを回避するため、ほぼ同時に操縦桿を強く引いたと推定される。)
    ※PF(Pilot Flying):主に、操縦を実施
    ※PM(Pilot Monitoring):主に、飛行状態のモニター、操縦以外の業務を実施
  • 操縦交代の明確化(“I have”、”You have”のコールアウトによる確実な操縦交代)
  • 早めのテークオーバーの実施

重大インシデント

航空事故には至らないものの、事故が発生するおそれがあったと認められるもので、滑走路からの逸脱、非常脱出、機内における火災・煙の発生および気圧の異常な低下、異常な気象状態との遭遇などの事態が該当し、国土交通省が認定します。

日本トランスオーシャン航空212便着陸滑走路への他機の進入

概要

2019年7月21日、日本トランスオーシャン航空212便(久米島空港発 那覇空港行)が管制官からの着陸許可を得て滑走路に進入中に、同滑走路の手前で待機するよう指示されていた他機が進入する事例が発生いたしました。同機は、管制官からの指示に従って着陸復行し、その後再度管制官より着陸許可を得て着陸しました。お客さまにお怪我はございませんでした。また、乗員にも怪我はございませんでした。
本事例は、「航空法施行規則第166条の4(重大インシデント)に掲げる事態」に該当するとして、国土交通省航空局により、重大インシデントと認定されました。

原因究明など

本件は、国土交通省運輸安全委員会による調査が行われ、2021年1月21日、航空重大インシデント調査報告書が公表されました。報告書では、「他社機が滑走路手前での待機を指示されたにもかかわらず滑走路に入ったため、既に管制から着陸を許可されていた日本トランスオーシャン航空機が同じ滑走路に着陸を試みる状況になったことにより発生したものと推定される。 他社機が滑走路に入ったことについては、他社機の機長が管制指示受領の際、滑走路手前における待機指示を滑走路に入り待機せよとの指示を受けたものと思い違いし、その思い違いが修正されなかったことによるものと考えられる。 他社機の機長の思い違いが修正されなかったことについては、他社機の機長および副操縦士が規定に定められている管制指示の相互確認を行わなかったことによるものと考えられる。 」と述べられています。

日本航空2163便着陸滑走路への他機の進入

概要

2019年10月3日、日本航空2163便(大阪国際空港発 三沢空港行、ジェイ・エアが運航)が管制からの着陸許可を得て滑走路へ進入中に、他機が同滑走路手前の停止位置を越えて滑走路に進入する事例が発生いたしました。同機は、管制からの指示に従って着陸復行し、その後再度管制より着陸許可を得て着陸しました。お客さまにお怪我はございませんでした。また、乗員にも怪我はございませんでした。
本事例は、「航空法施行規則第166条の4(重大インシデント)に掲げる事態」に該当するとして、国土交通省航空局により、重大インシデントと認定されました。

原因究明など

本件は、国土交通省運輸安全委員会による調査が行われ、2021年1月21日、航空重大インシデント調査報告書が公表されました。報告書では、「滑走路手前の誘導路で待機中であった自衛隊機の機長が、管制からの出発遅延情報に関する通報を離陸許可と誤認したこと、誤った内容の復唱に続けて間を置かずに別の通信を行い、管制からの復唱訂正を受信できなかったこと、および最終進入経路の目視確認を行わなかったことにより、自衛隊機は、ジェイ・エア機が着陸許可を得て最終進入中の滑走路に誤進入したものと考えられる。」と述べられています。

日本エアコミューター3830便滑走路からの逸脱

概要

2020年1月8日、日本エアコミューター3830便(喜界空港発 奄美空港行)において、奄美空港に着陸した後、減速中に滑走路から逸脱して草地に入り、停止する事例が発生いたしました。
本事例は、「滑走路からの逸脱(航空機が自ら地上走行できなくなった場合)」に該当するとして、国土交通省航空局により、重大インシデントと認定されました。

原因究明など

本件は、国土交通省運輸安全委員会による調査が行われ、2022年3月24日に航空重大インシデント調査報告書が公表されました。報告書には、「本重大インシデントは、同機が左からの横風を受けて着陸した際、接地直後からの左への偏向の修正が遅れたため、滑走路を逸脱して草地で停止し、自走不能となったと推定される。」と述べられています。

対策

本重大インシデント発生後、日本エアコミューター社および設計・製造者は再発防止のため、次の対策を講じました。

(1)日本エアコミューター社

  • 規程類の改定
    • OM(Operations Manual)Supplementに突風が報じられている場合の着陸に関して、平均風速の横風成分がAOM(Airplane Operating Manual)に定める最大横風値の規定を満たすことに加え、突風の横風成分が最大横風値の1.5倍を目安として進入を継続するか、または進入を中止して着陸復行を行うかを判断するように規定しました。
    • 設計/製造者がFCOM(Flight Crew Operating Manual)の着陸滑走中の通常操作を改定したことを受け、AOMを改定しました。
    • AOMに「OPERATION IN WIND CONDITIONS」を新設し、FCOMの内容を反映しました。
    • FTG(Flight Technical Guide)の横風時の離着陸に関する記載内容を改定しました。
  • 運航乗務員に対する訓練
    • 設計/製造者の推奨する横風着陸操作の知識および技量の定着を図るため、座学およびシミュレーターを使用した訓練を実施しました。
    • Stabilized Approachの適切な運用について座学を実施しました。

(2) 設計・製造者

着陸滑走中の通常操作の手順を見直し、FCOMを改定しました。

  • 接地後の減速は、ブレーキ操作が主体であることを明確化しました。
  • 接地後、前輪が接地した後にパワー・レバーをグラウンド・アイドルとし、必要に応じてリバースを使用するように明確化しました。
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