責任ある調達活動の推進
調達方針
JALグループは、航空運送をはじめ各種事業を行う上で、ステークホルダーや社会からの信頼を築き、持続可能な社会の実現に向けて貢献していくため、公正・公明に調達を行います。品質・価格・納期といった観点のみならず、お取引先さまとの共存共栄の関係を目指し、地球環境保全、人権尊重、適正な労働慣行といった持続可能性に配慮した責任ある調達活動を進めていきます。
JALグループサプライヤー行動規範
持続可能性に配慮した責任ある調達活動を進めるために、お取引先さまにご理解と遵守をお願いする項目として「JALグループサプライヤー行動規範」を策定しています。
2016年にJALグループサプライヤー行動規範を定め、2019年に大幅に改訂しました。本規範の策定にあたっては、国連グローバル・コンパクトの人権、労働、環境、腐敗防止の4分野・10原則や、持続可能性に関わる各分野の国際的な合意や規範などに細心の注意を払い、以下の内容を織り込んだ行動規範としています。この行動規範のご理解と遵守を通じて、お取引先さまと共に持続可能性に配慮した健全なサプライチェーンの構築を目指します。
JALグループサプライヤー行動規範の項目
- 1.品質確保
- 2.人権・労働
- 3.職場環境における安全衛生
- 4.環境
- 5.ビジネスマネジメント
- 6.サプライヤーへの展開
- 7.地域や社会への貢献
- 8.社内の取り組み体制の構築
お取引先さまとのパートナーシップ
当社は内閣府や中小企業庁が主導するサプライチェーン全体の付加価値向上や企業の共存共栄を目的とした「パートナーシップ構築宣言」に賛同し宣言を出しています。お取引先さまとの良好なパートナーシップを築くため、定期的な対面、メール、オンライン会議などを通じて意見交換や課題確認を行っています。
サプライチェーンESGプログラム
航空運送をはじめとするJALグループの事業は、多種多様なお取引先さまのサプライチェーンによって支えられています。このサプライチェーン全体において、持続可能性に配慮した責任ある調達活動を進め、ESGの観点で重大なリスクと影響を特定し対処するため、サプライチェーンESGプログラムを運用しています。
プログラムのポイント
プログラムの内容
(1) 取締役会での目標設定と進捗状況の確認およびリスク管理
取締役会や社長を議長とするサステナビリティ推進会議やリスクマネジメント会議において目標を設定し、進捗状況の確認およびリスク管理を通じてプログラムを推進しています。 推進体制については以下をご参照ください。
(2) JALグループサプライヤー行動規範の遵守状況に応じた購買活動
サプライヤーアセスメント
お取引先さまに対しては、以下の主な取り組みに示すサプライヤーアセスメントに記載のとおり、毎年のデスク調査や実地確認などを通じて「JALグループサプライヤー行動規範」への遵守状況を確認し、それに応じた購買活動を実施しています。
当社の購買活動においては、「JALグループサプライヤー行動規範」をご理解の上、遵守していただけるよう助言やサポートを行いますが、定められた期限までにお取引先さまが最低限の基準を満たさず、かつ改善が見られなかった場合には取引(契約)の停止を含め見直しを行います。
認証品の採用
ESGの適合が確認された認証品を取り扱っているお取引先さまを優先的に選定しています。例として、森林資源に配慮された国際的な認証を受けた木材や紙製品、MSC認証*1やASC認証*2の認証品の採用を開始しており、引き続き認証品採用の拡大に向けた調達を進めています。
*1 水産資源や海洋環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業に対する、海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)による国際的な認証制度
*2 環境に負担をかけず地域社会に配慮して操業している養殖業に対する、水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)による国際的な認証制度
(3) サプライチェーンESGプログラムの社内調達担当への教育や周知
JALグループ内の調達担当者(約200名)に対し、責任ある調達活動の取り組みの意義、サプライチェーンESGプログラム、気候変動や生物多様性に対する取り組みの重要性、パートナーシップ構築宣言やビジネスと人権に関する指導原則といったサステナビリティに関する周知活動を定期的に実施しており、JALグループ一丸となって、健全なサプライチェーンの構築を目指しています。
主な取り組み
サプライチェーンESGプログラムでは、お取引先さまや扱う商材のESGリスクなどの大小に応じてお取引先さまへのアセスメントと支援の取り組みを行っています。
サプライヤーアセスメント
(1) 全てのお取引先さまに対して
「JALグループサプライヤー行動規範」を提示し、ご理解と遵守の依頼を行っています。その他に、外部指標などを適宜用いながらサプライヤーのアセスメントを実施しています。
(2) 重要なお取引先さまに対して
2019年度から取引規模や商材の重要性、代替不可能性といった観点から主要サプライヤーを461社選定し、JALグループサプライヤー行動規範の遵守状況の確認を完了しました。
この確認結果および昨今のサプライチェーン上における人権尊重の高まりを踏まえ、2023年度からは、サプライチェーン上におけるESG(環境、人権、労働、腐敗防止など)リスクの大きさや、JALグループへの依存度の大きさに重きを置いた重要なサプライヤー60社を選定し、より社会課題の解決に貢献できる活動を前進させており、2025年度までに以下のデスク調査、実地確認や支援を行います。
ESGリスクは、製品が最終的に生産される工場の所在国における児童労働の懸念といった国特有のリスク、技能実習生や移住労働者、長時間労働の懸念があるといった業界特有のリスクや、衣料品に関わる強制労働といった商材特有のリスクを考慮しています。
重要なお取引先さまに対しては、以下のアセスメントを行い遵守状況を確認しています。
デスク調査の実施
「JALグループサプライヤー行動規範」の遵守状況の確認は、2015年に加盟したSedex Information Exchange Limited(以下Sedex*3)が提供するCSR情報プラットフォームを利用し、お取引先さまに対してSedexの自己評価アンケートの回答をお願いしています。これに加え、当社独自の自己評価アンケート(以下、JAL調査票)を送付し、重要なサプライヤーの分類に応じたJAL調査票への回答を通じた遵守状況の確認を進めています。加えて、2023年度からは、重要なサプライヤー60社と連携し、重要な2次サプライヤーへのJAL調査票を通じた健全性の確認を行っています。
また、2021年度から新たに導入したSAP Aribaを通じても、オンライン上でJALグループサプライヤー行動規範の周知と確認を継続的に進めています。今後も継続的に、当社が求める基準(ESG要件)に反していないか、アンケートを通じてJALグループサプライヤー行動規範の遵守状況を確認していきます。
*3 サプライチェーンにおける責任あるビジネス慣行の実現を目指し、企業の倫理情報を管理、共有するプラットフォームを提供する2004年に英国で設立された非営利団体(Supplier Ethical Data Exchange)
実地確認の実施
デスク調査に加え、特に人権リスクに特化した実地確認も行うべく、外部有識者によるワークショップを実施し、そこで得た知見を通じ実地確認の手法を定め、2024年度から運用を開始しています。JAL調査票の結果にもとづき、優先的に訪問する重要なサプライヤーを選定し、当社の調達担当者がお取引先さまを現地訪問し、現場確認・文書確認・労働者インタビューなどを通じて、懸念される所見があるかどうかを確認していきます。
第三者による監査
JALグループでは、アセスメントフローの一つとして、外部機関による監査を実施しています。商材が生産される工場の所在地(所在国)におけるリスク、商品そのものの生産に潜むリスクや業界自体のリスクといった観点で、リスクの可能性が高いと考えられる場合、SMETA監査*4を実施しています。当社のサプライチェーンでは制服を扱うお取引先さまが該当します。
2020年度の制服刷新に備え、2019年度から第三者機関へ委託し、制服を提供していただくお取引先さまに対してSMETA監査を実施しました。2023年度は5社に対しSMETA監査を実施し、1社にて指摘事項があったため改善要望を行い、すみやかに是正いただいたことを現地訪問し確認しています。
*4 SMETA監査(Sedex Members Ethical Trade Audit)とは、グローバルサプライチェーンにおける企業倫理の向上を目的として策定された監査スキームで、国際標準として広く受け入れられています。この監査を受けることにより、国際標準に照らし合わせて企業の強み・弱み(不適合)を識別し、企業のさらなる改善に向けた必要なアクションを明確にすることが可能です。詳細はSedex公式ウェブサイトをご覧ください。
お取引先さまへの支援
健全なサプライチェーンを構築するためには、JALグループサプライヤー行動規範の理解を深めていただくだけでなく、お取引先さま自身の成長も欠かせないと考えています。そのため、全てのお取引先さまを対象に以下のような取り組みを行っています。
サプライチェーンESGプログラムの周知
全てのお取引先さまへ、本取り組みを当社Webサイト上でお知らせをしています。また、お取引先さまとの情報共有・意見交換の場として連絡会を定期的に開催しています。2019年度には外部講師をお招きし、ESG/SDGsに関する啓発活動を実施しました。2020年度以降はオンライン説明会を開催し、JALグループサプライヤー行動規範のご理解と遵守のお願い、CO2削減に向けたSAFの調達などのJALグループ全体で進めている取り組みなどを周知しました。2023年度は、JAL調査票を依頼する際に、重要なサプライヤー(60社)に対して、現地訪問もしくはオンラインミーティングを実施しました。サプライチェーンESGプログラムの普及や人権に関するガイドラインなどの周知を通じて、お取引先さまのESG/SDGsに関する理解のさらなる向上に努めています。
お取引先さまへの周知の内容
- サプライチェーンESGプログラム
- JALサプライヤーホットライン(苦情処理窓口)
- 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」
- 経済産業省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
- 人権侵害の事例など
お取引先さまへのベンチマークの提供
お取引先さまがよりよいESGパフォーマンスを発揮するためには、同業他社の取り組み状況を把握することも重要と考えており、JAL調査票の結果を評価し、同業他社との比較を含めたフィードバックを実施しています。2022年度は、機内食をご提供いただくお取引先さまに対してベンチマークの提供を行い、他社での取り組み事例の紹介などを行いました。今後は実地確認を通じて実施された改善事例などの共有なども含めて、お取引先さまがベンチマークにアクセスできるような環境を整えていきます。
〔ベンチマークの事例〕
お取引先さまへのテクニカルサポート
お取引先さまにご回答いただいたJAL調査票やSedexの自己評価アンケートの結果を評価し、評価が当社の求める基準に満たない(ESG上リスクがあると考えられる)お取引先さまについては、当社からコミュニケーションを行い、日々の面談、電話、メール、訪問などを通じて、「JALグループサプライヤー行動規範」の基準を満たしていただくよう連携して改善策を検討しています。また、2024年度から開始している実地確認においては、所見があるお取引先さまに対しては「是正措置計画書」の提出をお願いしており、改善実施に向けて、問題となる理由や改善に向けて求められる対応といった情報提供などのサポートを実施します。
また、2023年度から重要なお取引先さまと連携し、2次サプライヤーの自己評価アンケートなどを通じた健全性の確認を行っており、2次サプライヤーの健全性確認に必要なJAL調査票の提供やESGの取り組みに関する情報開示などを通じて、お取引先さまのスキル向上のサポートも実施しています。
JALサプライヤーホットライン
JALグループは、お取引先さまとともに法令遵守や地球環境保全、人権尊重、適正な労働慣行、公正な事業慣行など、持続的なサプライチェーンの構築に努めています。サプライヤーアセスメントだけではなく、お取引先さまおよびその従業員の方からの相談・通報を受け付ける「JALサプライヤーホットライン」を設置し、お取引先さまの従業員が相談や通報を直接JALグループに届けられる仕組みを整備しています。ホットラインは日本語、英語での受け付けに対応しています。
2023年度は、2件の通報を受け付けし対応しています。詳細については、以下の「JALサプライヤーホットライン」をご参照ください。
実績
■サプライヤースクリーニングのKPI
■サプライチェーンESGプログラムの範囲と進捗状況
■サプライヤーの是正措置計画の範囲と進捗状況
■支援を行ったサプライヤーとその進捗状況
※取り組みの実績における開示項目については、GRIスタンダード414-2「サプライチェーンにおけるマイナスの社会的インパクトと実施した措置」を参考に開示しています。