健康経営
基本的な考え方
JALグループ企業理念である全社員の物心両面の幸福を追求し、お客さまに最高のサービスを提供するためには社員や家族の心身の健康づくりが不可欠との認識の下、JALグループ健康推進プロジェクト「JAL Wellness」がスタート。現在は「JAL Wellness 2025」として生活習慣病、がん、メンタルヘルス、たばこ対策、女性の健康の5大指標をベースに取り組んでいます。
JAL Wellness宣言
JALは企業理念にある「全社員の物心両面の幸福を追求」するため、心身の健康を維持するべく、社員・会社・健保が一体となって健康づくりに取り組みます。

健康経営責任者メッセージ

清水 新一郎
代表取締役副社長執行役員
健康で生き生きと働ける職場づくりを推進
「JAL健康経営委員会」の議長として、JALグループの健康経営を強力に推進していきます。
私は、社員一人一人が毎日明るく元気に働ける職場づくりが一番大切だと考えています。まずは社員の皆さんが、本人と家族の「心身の健康」を大切にし、そして仲間の健康も気遣いながら働きがいを感じて生き生きと働くことのできる職場を作っていくことが重要です。安全運航やお客さまへの最高のサービスの提供は社員の健康がなければ実現出来ません。また健康な身体作りをすることで、一人一人が豊かな人生を過ごすことができると思います。健康経営は会社のためだけでなく、社員一人一人のためでもあります。
「JAL Wellness」を職場で推進していくには社員一人一人の力が欠かせません。社員の皆さんが生き生きと働くことができるよう、渦の中心になって、各職場に応じた健康施策を推進してもらいたいと思います。そして、部門長や職場のリーダーは、ぜひ社員の自発的な取り組みを支援してください。みんなで「JAL Wellness」を推進していきましょう。
労働安全衛生方針
各事業場では事業内容や人員規模に応じ「安全衛生委員会」や「衛生委員会」を設置するとともに、統括安全衛生管理者、産業医、安全管理者、衛生管理者を選任し法令に則った労働安全衛生管理活動を実施しています。また、整備部門や客室乗務員が所属する部門については安全衛生を担当する部門や担当者を設け、リスクアセスメントの実施、ヒヤリハット事例の共有による労働災害の防止に努めています。
定期健康診断(がん検診、健保施策含)
定期健康診断、特定業務従事者、海外派遣員に対する健康診断などを法令に則り実施しています。職場ごとに社員が受診しやすい環境を整え、高い受診率を維持するよう努めています。また、特定健康診査をはじめとする各種健診補助については、35歳以上を対象とすることで早期から生活習慣病の対策を講じるとともに、法定外の検査項目の一部を社員自らが選択できるようにしています。
健康保健活動
特定健康診査、生活習慣病健診、婦人科健診などを健保と共同で行い、社員や家族および女性の健康管理のために、各種健診費用補助の実施、受診促進を行っています。特に、婦人科健診については全額補助(上限2万円)を行っています。
社員の健康管理
健康相談
健康診断の結果、精密検査や治療が必要な場合の相談をはじめ、就労に影響するような病気、怪我に対する相談や、海外勤務における健康管理上の相談に対し、産業医、保健師、看護師などの産業保健スタッフが対応しています。また、健康保険組合も外部の相談機関の紹介を行っています。
休業からの復帰支援
病気、手術、怪我などのため一定期間休業が必要となった社員が職場へ復帰する際は、所属部署と産業医や保健師などの産業保健スタッフが密に連携し、復帰する社員一人一人の状況に応じた復帰支援を実施しています。
長時間労働面談
月間70時間以上もしくは3か月連続で35時間以上の時間外労働に従事した社員を対象としており、法令を上回る基準を設定しています。産業医が面談し、面談結果にもとづき、本人および所属部署に対して助言・指導を実施しています。
メンタルサポート体制
社員が気軽に相談できるよう、専門の医師・カウンセラーによる相談・面談体制を社内に整えています。また社内で多くのメンタルセミナーを実施するとともに、社外の相談窓口を設け利用の情報も提供しています。
腰痛予防対策
トレーナーが、運航乗務員、整備、空港旅客、貨物、グランドハンドリングに携わる部門を中心に腰痛予防セミナーを実施しています。また客室乗務員に対しては、トレーナーが新入社員教育の段階から身体のコンディショニング作りの指導を行い、その後も乗務前後や宿泊地で自分でアプリにより受けられる運動指導を行うことで継続的に腰痛予防に取り組んでいます。腰痛などで休業していた社員に対しても、筋力アップやストレッチの方法など、個人に合った対応をアドバイスしています。
危機管理
個人情報保護
健康診断をはじめ健康管理に関する個人情報の管理については、法に則り厳格な運用に努めています。
感染症対策など
国と国、地域と地域を結ぶ航空輸送が、社会活動維持のために必要不可欠であるとの強い思いを胸に刻み、お客さまをはじめ、社員の安心・安全を確保するため、感染症に関する知識の充実を図るとともに、機内や空港などにおいてさまざまな対策を講じています。
新型コロナウイルス感染症や環境汚染など、健康に影響すると思われる情報を関連機関と共有し、産業医の知見を最大限に生かしつつ、BCP(事業継続計画)にもとづき、お客さまや社員、およびその家族の安全確保に今後も最大限努めていきます。
震災対策
人命を最優先に、震災による被害の防止・軽減に向け、各職場ではキャビネットなどの転倒を防ぐ措置を講ずるとともに、ヘルメットなどの防災用品の配備、一定数の食料・水の備蓄を行っています。各部門において、BCPプランを策定し、定期的な見直しを実施しています。また、定期的に避難訓練を実施し、避難経路などの確認や社員とその家族の迅速な状況確認などの対応を行っています。
JAL Wellnessの取り組み
Wellness推進体制
「JAL Wellness」を推進していくためには、経営の強いリーダーシップに加え、各職場における継続した健康推進活動が必要不可欠です。健康課題は職場によってさまざまです。Wellnessリーダーが渦の中心になって周囲を巻き込みながら、職場に応じた健康づくりに取り組んでいきます。経営層からのトップダウンに加え、職場のWellnessリーダーからのボトムアップ方式で双方の強みを生かした取り組みを継続していきます。

健康経営責任者(CWO)を議長とする「JALウエルネス推進委員会」を定期的に開催し、グループ社員の健康関連のデータ分析、健康経営の推進状況やWellness活動の報告などを役員間で議論をしています。さらに必要に応じて、取締役会に諮られます。

前回の中期経営計画と同時期に策定した「JAL Wellness 2020」における三大目標「生活習慣病」「がん」「メンタルヘルス」に加え、「タバコ対策」「女性の健康」を加えました。 JALグループは女性比率の高い会社が多くありますが、女性の職場における女性の健康課題、男性比率の高い会社でのタバコ対策が重要と認識しており、具体的施策を実施する重要性からも、この二つの項目を加えました。
5大項目への取り組み
JAL Wellnessでは「生活習慣病」「がん」「メンタルヘルス」「たばこ対策」「女性の健康」の5つの重点項目を掲げ、目標を定めて取り組んでいます。社員と家族の健康リテラシーが向上し、健康づくりが進むことで、企業の活力、生産性が向上し、「物心両面の幸福」という企業理念が達成され、医療費も削減されることが目的です。また、社員が健康であることが、企業としての存立基盤である「安全運航」につながると考えています。
①生活習慣病
適正体重維持率と(社員の家族および退職者の)特定健診受診率を目標としています。目標値には達していないものの、メタボ対象者は徐々に減少しています。「若年層の女性の痩せ」の傾向があることから、管理栄養士による講習やe-Learningによる教育などで改善を図っています。また、近年は特定保健指導の実施率向上に向けグループ全体で取り組みを強化しています。
②がん
従来のe-Learningによる教育、社外講師を招いてのセミナーや「がん展」の開催に加え、健康経営責任者からのダイレクトメールでがん検診の推奨、また産業医、がん罹患者や家族にがん患者がいる社員、所属の社員のしゃべり場として「ホッとピアステーション」を開設するなど新たな取り組みに努めています。
③メンタルヘルス
ストレスチェックの実施率は年々向上しており90%以上の社員が受検しています。結果は個人の1次予防を行うだけでなく、集団分析を実施し職場環境の改善に生かす取り組みをJALグループ全体で開始しています。また、ストレスチェックで高ストレスと判定された社員への更なるフォローの試みなども順次行なっています。引き続き3次予防から0次予防に至るまで、サポートの体制や施策を整備していきます。
④たばこ対策
2018年5月31日から、就業時間内禁煙を開始しました。しかしながら一部のグループ会社では喫煙率が高いところもあるため、健保と連携し、更なる禁煙プログラムの導入や毎月実施している22(たばこスワンスワンデー)の取り組みなど、地道に改善を図っていきます。また、受動喫煙も健康を阻害する大きな問題として、防止の取り組みや意識の啓発を行っています。
⑤女性の健康
女性の健康については、女性のライフサイクルに応じた健康上の知識の理解を深める取り組みとともにその予防・対策に努めています。2019年度から客室乗務員を中心に、定期健康診断に婦人科健診を組み込む(年間151回)と同時に、婦人科健診の重要性を訴える動画の視聴により、若年層からの理解向上を図っています。
現在では他部門においても受診率が向上し、女性だけでなく男性への「女性の健康」への理解と意識向上を図っています。
また、女性の健康課題に関しても積極的に取り組み、6,000名を超える社員へのアンケートを実施し、PMS、妊活、更年期障害に関するセミナーへの参加などを促しています。
女性の健康に関する実証実験について
「ルナルナオフィス」様提供の妊活プログラムに参加した結果、以下のような満足度結果が得られました


Wellness月間
5大重点項目の浸透を図り、社員の意識啓発のために2021年度より「Wellness月間」を設定しています。2021年度は、グループ社員のうち12,000以上が参加しました。中でも、保健師による「Wellness My Book2025」の説明動画は数多くの視聴があり、アンケート結果から以下のような意見を確認しています。

各種データの紹介






※FY21は、2022年9月末時点


※SPQの絶対的プレゼンティーズム損失度を用いた従業員調査による測定

健康経営会計

健康経営に取り組むことで、「企業理念の達成に向け、社員がイキイキと働き、生産性向上に寄与できている状態」という経営上の課題に向き合うことになると考えます。
2021年度分報告
各目標についての実績および分析は以下のとおりです。
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2016年度報告
[243 KB : PDF]PDF -
2017年度報告
[275 KB : PDF]PDF -
2018年度報告
[137 KB : PDF]PDF -
2019年度報告
[927 KB : PDF]PDF -
2020年度報告
[972 KB : PDF]PDF -
2021年度報告
[1.03 KB : PDF]PDF
課題
それぞれに目標を定めて取り組みPDCAを回した結果、徐々に改善が見られます。しかし、こうした取り組みを行う中で、たばこ対策のように全体としての目標は達成したものの、詳細に分析していくと、男性が多い会社ではまだまだ喫煙率が高いことが分かっているものもあります。このことから、目標を男性と女性に分けて細かく追い求めていくなど、より実態に沿った目標設定を行っています。また、従来は社員自身の健康意識向上に頼っていた部分がありましたが、特に女性の健康については、婦人科健診の機会を大幅に拡大することで、劇的な改善が図れているものもあります。くわえて、女性の健康課題に関しては、他社との共同取り組みとして、PMSや妊活、更年期障害などに関するセミナー、サポートプログラムに参画することで、働く女性のライフステージに合わせた課題解決を図っています。JALグループでは今後も社員の声を大切にし、データを活用してさらに効果的な取り組みを目指していきます。また、女性の健康に関する小冊子(Women's Health guide)を女性だけでなく、希望する男性にも配布し、女性の健康に関する情報提供と意識の啓発を行っています。これらの課題にひとつずつ向き合い、「JAL Wellness 2025指標」で掲げる目標値に向かって取り組みを継続していきます。
Wellness活動
全国のJALグループ各社・各部門に「Wellnessリーダー」と呼ばれる健康づくりの推進役を519名(2021年9月現在)配置し、Wellnessリーダーが渦の中心となって「健康に対する一人一人の意識改革と行動変容(=Wellness活動)」を展開しています。
また、Wellnessリーダーが連携し、取り組み事例の共有や地域全体での企画も行い、活動を通じて心身の健康の充実も楽しみながらWellness活動に取り組んでいます。

JALサンライトでのブラインドサッカー体験会(2022年)

ウォーク・ザ・world横浜ウォーク(2022年)

本気の!ラジオ体操 Wellnessリーダーミーティング(2020年度)
地域健康プロジェクト
地域や社員構成によりそれぞれの課題があることに着目し、その解決を目指す「地域健康プロジェクト」をスタートさせました。まずは、メタボが急増している沖縄地区全体で取り組む健康プロジェクトを開始。その成功事例をもとに他の地域に広めていくことにしました。この取り組みにはスタッフだけではなく経営層も参加し、地区全体での意識を高めるため、プロジェクト名も自分たちで考えています。沖縄地区では「身体をちんだみ!健康おきなわプロジェクト」です。「ちんだみ」は沖縄の言葉で「調弦(調律)」を意味します。

本気の!ラジオ体操
JALグループでは「本気の!ラジオ体操」を行い、健康増進に努めています。トレーナーの指示の下、ポイントを押さえて真剣に行うため、筋肉痛になる社員もいます。健康増進だけでなく社内コミュニケーション促進にもつながり、国内の各部署だけではなく、海外地区にも広がりを見せています。コロナ渦においても、オンラインイベントにより数多くの社員が参加することができました。社内だけでなく、協賛イベントや地方の小中学校でも実施しており、東京都の動画サイト別ウィンドウで開くにもアップしていますのでぜひご覧ください。
それ以外にも「階段のススメ」や「昼寝のススメ」など、日常生活の中で健康行動を無理なく採り入れることを大切にしています。

日本航空健康保険組合とのコラボヘルス、データヘルスの推進
会社の中期経営計画と連動した健康の中期計画「JAL Wellness」は、会社が保有しているデータと、健康保険組合が保有しているデータを調査、分析することにより、加入者(社員)の健康状態や生産性への影響(プレゼンティーズム)、その他の課題等を認識し、これらに対応した疾病予防・重症化予防の具体的な取り組みを策定、社員、会社と健康保険組合が一体となって実施してPDCAを回しています。
健康経営への取り組みによる効果
CWOからのWellness活動に関する発信により、全グループ社員からの注目度があがり、活動への関心度が高まっていきました。Wellness活動への参加者は年々増加し、コロナ禍においてもオンラインイベントやセミナーを多数開催することで、活動の輪は広がりました。
グループ企業や各事業所からの活動報告も増え、各社からは「ホワイト500を取得したことで、採用競争力のアップにつながった」「健康経営銘柄を獲得した会社を誇りに思うと社員から喜びの声があがった」「コミュニケーションの活性化につながった」などの嬉しいコメントがありました。
コロナウィルスという過去になかった感染症と向き合い、健康に関する関心度が高まっている今だからこそ、社員や家族の健康と、その先にあるWell-beingな状態を目指し、ますます健康経営の推進に取り組みたいと考えています。
外部評価
「JAL Wellness宣言」にもあるとおり、JALグループは、企業理念にある「全社員の物心両面の幸福」追求には「心身の健康づくり」が不可欠との認識の下、社員・健康保険組合・会社が一体となって取り組んでいます。健康管理の強化、疾病予防やメンタルヘルス対策の強化、安全衛生活動の強化など、社員の健康維持・増進や、ワーケーションやブリージャーの推奨などワークスタイル変革の促進など働き方改革にも取り組んでおり、今後も取り組みを加速していきます。
外部普及活動(講演、サービス)
JALグループの持続的な成長に向けた、健康経営の取り組みとその効果にくわえ、社内医療スタッフによる知見をあらゆる場所で広めるなど、ステークホルダーの皆さまに積極的に発信しています。
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