生物多様性の保全
基本的な考え方
JALグループは、豊かな地球を次世代へ引き継ぐ責任を果たすため、生物多様性の保全に貢献します。
提供するサービスが違法野生生物の予期せぬ輸送に用いられることのないよう、航空運送事業に携わるものとしての責任を果たします。
また、事業活動による環境負荷を抑制し、生態系への影響を最小化します。
そのために、JALの強みである人財を活かし、違法野生生物の取引防止などの施策を行うとともに、保全活動の輪を広げます。
私たちの暮らしや経済活動は、自然の恵み(生態系サービス)によって成り立っています。自然の恵みは自然資本というストックに支えられており、自然資本の持続可能性を考慮したビジネスモデルは、企業を含む社会全体の持続可能性を支えます。
JALグループは2010年に航空事業と生物多様性のかかわりを整理し、以下6つの基本的な考えの下、人類や地球環境が生物多様性から受ける恩恵を正しく認識し、積極的に、生物多様性の保全とその恵みの持続可能な利用に努めます。
- 外来種生物などの移送が生態系の脅威となる危険性を常に考え、予期せぬ輸送の防止に努めます。
- 希少種保護などを目的として公的機関などが希少生物を移送する場合に、航空輸送の特性をふまえて、輸送サービスの提供に努めます。
- 事業活動を行う地域における生態系破壊の回避を前提に、環境負荷を抑制し、生態系に与える影響を最小とするよう努めます。影響を与えることが避けられない場合には回復や相殺を実行し、生態系の維持に努めます。
- 事業活動のために入手したり引渡したりする物資について、その採取、製造、輸送、処分、廃棄など社外での過程における取り扱い状況を十分把握し、森林破壊など生態系に悪影響を及ぼさないよう努めます。
- 社会活動として、生態系保護を推進します。
- お客さまや広く社会の皆さまに生物多様性の大切さを伝え、保全活動の輪を広げます。
具体的な取り組み
JALグループは、2020年6月、2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指すネット・ゼロエミッションを宣言しました。CO2排出量の削減は気候変動を緩和させるだけでなく、生態系の保全にもつながり、生物多様性の損失を抑えます。JALグループは、ネット・ゼロエミッションの実現を目指すとともに、サステナビリティに関する4つの領域/22の課題を特定し、食品廃棄量や資源(プラスチック・紙)使用量の削減目標も設定しています。紙資源の使用量削減やリサイクルは、森林破壊を抑制します。また、森林資源に配慮された国際的な認証紙を使用することで、森林が保全され、そこに生息する生態系を守ることになります。森林がCO2を吸収し、気候変動の原因であるCO2の削減につながるのです。このように、生物多様性と気候変動は密接な関係にあることから、両方に対応することを重要課題として取り組んでいます。
例えば、外来種を防ぐための植物防疫や違法野生生物の取引防止、世界自然遺産の保全など、さまざまな活動を行っています。
また、JALは2020年1月にWWFジャパンの法人会員として、WWFの環境保全活動を応援し、事業活動を通じて生物多様性保全活動を推進しています。
上記の取り組みをより加速させるために、JALグループは2023年3月に「The TNFD Forum*」に加盟しました。今後も推進していくとともに、情報開示を拡充していきます。
※ 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の検討をサポートするステークホルダー組織であり、現在までに全世界で900を超える企業・団体が参画しています。
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野生生物の違法取引防止
2018月6月、JALグループは、国際航空運送協会(IATA)が推進する野生生物の違法取引を減らすことを目的とした「野生動物保護連盟特別輸送委員会、バッキンガム宮殿宣言」に調印しました。
野生生物の違法取引は、薬物や人身売買に次ぐ、数兆円の取引額になる世界規模の犯罪の一つです。JALグループでは、石垣空港のスタッフが絶滅危惧種であるヤシガニが航空機によって持ち出されるところを発見し未然に防いだケースや、奄美空港のスタッフが希少なカエルやヘビが持ち出されるのに気付いた事例がありました。
このように、輸送の段階で防ぐことが非常に重要であることから、2021年3月、2020年に続き公益財団法人・世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の方を招き、野生生物の違法取引の現状や輸送の過程で生きた動物を発見した場合の対応方法などについての勉強会を開催しました。
2021年12月には、WWFジャパンとTRAFFICが主催する、野生生物の違法取引防止に向けた課題認識向上と取り組み促進をテーマとしたシンポジウムに参加しました。当シンポジウムにはJALグループスタッフが登壇し、沖縄地域、奄美群島地域における「希少な野生動植物の密猟・密輸対策連絡会議」や、空港における密猟・密輸対策研修会への参加など、省庁・地域と連携したJALグループの積極的な取り組みを紹介しました。
JALグループでは今後も社内で普及啓発を増やすとともに、社外関係者と連携し、情報共有ならびに野生生物の違法取引撲滅に向けた取り組みを強化していきます。
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植物防疫への取り組み
2020年は、植物病害虫のまん延防止の重要性に対する世界的な認識を高めることを目的に、国連により「国際植物防疫年2020」と定められました。JALグループは、農林水産省認定の「国際植物防疫年2020オフィシャルサポーター」として、植物防疫の重要性の社内外への周知に努めています。
世界の食料の80%は植物由来であり、このうち20~40%が植物病害虫により損失しています。一度病害虫が侵入すると、根絶するために莫大なコストがかかります。例えば、農作物に重大な被害を与えるウリミバエの根絶には、日本で約20年、204億円もの費用がかかっています。
日本でも海外旅行者の増加などにより、植物防疫の重要性がさらに高まっています。海外への持ち出しや国内への持ち込み時に注意が必要なだけでなく、国内においても植物の移動規制があります。例えば、南西諸島(沖縄県・鹿児島県の奄美群島)や小笠原諸島からは、サツマイモなどの持ち出しが規制されています。
2020年2月に農林水産省の方を招いて開催した社内の講演会では、植物病害虫による被害、植物防疫、ならびに航空業界との関係について話していただきました。参加者からは「人の検疫、肉の検疫だけでなく、植物の検疫も非常に重要だと分かった。今後社内に周知を図りたい」と声がありました。病害虫の駆除には莫大なコストがかかるため、病害虫の侵入・まん延防止が非常に重要です。JALグループは今後も関係者と連携し、植物防疫の重要性の周知を図っていきます。
植物防疫に関する詳しい内容は、農林水産省のホームページ別ウィンドウで開くをご覧ください。

世界自然遺産登録への挑戦
数百万年前に大陸から離れ、アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコといった希少種たちの宝庫である奄美大島・徳之島・沖縄島北部および西表島において、その生物多様性と豊かな自然を世界自然遺産として登録・保全しようという動きが活発化しています。2021年の夏に奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島が世界自然遺産に登録されましたが、登録にあたってはJALグループも大きく関わってきました。
鹿児島地区の日本エアコミューター(JAC)とJAL鹿児島支店、沖縄を本拠地とする日本トランスオーシャン航空(JTA)や琉球エアーコミューター(RAC)では、密猟・密輸対策連絡会議への参画、希少種のロードキルを防ぐ道路標識の設置、奄美群島を巡る「奄美トレイル」の整備やPR、海岸のゴミ拾いを行うビーチクリーン活動など、地域と一体となって自然環境の保護や啓発に努めています。
2019年には、地元企業や団体をつなぎ世界遺産登録を推進する「世界自然遺産推進共同企業体」(沖縄)、「世界自然遺産推進共同体」(鹿児島)を発足。参加企業・団体の強みを生かし、自然環境保護や自然を生かした地域振興に取り組んでいます。
タンチョウの保全活動
の天然記念物であるタンチョウの保全活動として、2016年から年に1回、北海道鶴居村で、JALグループ社員有志によるタンチョウの採食地の環境整備を実施しています。

JALタンチョウフォトコンテスト
皆さまの思いを国の特別天然記念物であり「日本の美」の象徴ともいえるタンチョウの写真と温かいメッセージにこめてご応募いただく、JALタンチョウフォトコンテストを開催しています。
過去の結果については以下をご確認ください。
有性生殖・サンゴ再生プロジェクト
沖縄の魅力の一つに、青い海、たくさんの生命に溢れたサンゴ礁があります。
サンゴ礁は、観光資源という目で楽しむ景観機能の他にも、多種多様な生物の共存・生産の場であり、消波効果による国土保全・防災機能などさまざまな役割があります。しかし、近年は海水温上昇による白化現象やオニヒトデの大量発生など、沖縄県沿岸におけるサンゴ礁の減少が問題となっています。
2020年4月、日本トランスオーシャン航空(JTA)は一般社団法人水産土木建設技術センターとともに「有性生殖・サンゴ再生支援協議会」を設立しました。当協議会は有性生殖法によるサンゴ再生活動を支援する団体であり、JTAは資金面の支援に加えて、支援企業の募集や取りまとめ、広報誌の作成支援に関わっています。現在、沖縄県石垣市にある八重山漁業協同組合を6年にわたり支援する計画の下、八重山でのサンゴ再生活動が自走するような仕組みを検討しており、2025年度までに10,000群体を育成するのが当面の目標です。
無機物のように見えるサンゴですが、クラゲやイソギンチャクの仲間の生物であり、年に一度産卵します。有性生殖法とはサンゴの卵から育成する方法であり、2018年までに水産庁の技術開発により、海域で自然に近い形で効率よく受精させ、大量の種苗が生産できるようになりました。八重山漁業協同組合は、この高い技術力を要するサンゴ増殖に当協議会の技術指導を受けながら取り組んでいます。
サンゴ礁の再生は、ダイビング、マリンレジャーを楽しむ観光業に加え、さまざまな魚類の繁殖・生息の場となるため、沖縄県の基幹産業である水産業にも持続的な効果があるのです。
当協議会の活動に賛同いただいた沖縄県内企業6社とともに、沖縄の豊かな海を次世代に引き継ぐため、これからも取り組んでいきます。
JTAの活動は、ホームページ別ウィンドウで開くをご覧ください。
人と動物、生態系の健康はひとつ~ワンヘルス共同宣言
人が健康であるためには、感染症の発生原因となる自然破壊を止めて生態系を健全に保ち、感染症を拡大する動物の健康も、同時に守らなければなりません。
JALグループは、人類や地球環境が生物多様性から受ける恩恵を正しく認識し、積極的に、生物多様性の保全とその恵みの持続可能な利用に努めてきました。今般、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)が呼びかける「人と動物、生態系の健康はひとつ~ワンヘルス共同宣言」に賛同しました。
ワンヘルスとは、「人」「動物」「生態系」の健康をひとつと捉え、それぞれがバランスよく健全にあるべきとする「ワンヘルス(One Health)」の考え方です。
この宣言にご賛同いただける方はぜひ以下のバナーをクリックしてください。
(宣言への1クリック賛同キャンペーン期間:2021年1月22日~2021年2月16日(予定))